「自民党失敗の本質」 石破茂 村上誠一郎 内田樹 白井聡他 宝島社
2021年と2023年に行われたインタビュー集。興味深いメンバーです。
まず、政治学者の白井聡氏が、戦後の日本政治、自民党の歴史、そしてアメリカとの関係を概観しています。
アメリカは、朝鮮戦争勃発時に、日本に対して、「民主化よりも反共の防波堤としての役割を求める(p.15)」姿勢を明確にしました。
しかし、白井氏は、「究極的にはアメリカは優しい庇護者なんかではない。(p.21)」と言います。
その傾向は、日本の経済成長が進み、ジャパン アズ No.1と言われるようになる頃明確になりました。
アメリカの対日政策は、「庇護すべき対象から収穫すべき対象へと明確に変わりました(白井聡 p.28)」という方向になり、
近年は、特に安倍政権以降、 「対米従属を通じた対米自立」の後半部分が完全に失われ、「対米従属を続けるための対米従属(白井聡 p.31)」になってしまったと白井氏は言います。
この本に登場する人たちは、かつては気骨ある政治家が多かったと言います。
例えば、
石橋湛山は、「戦前から、「日本の植民地経営は割に合わない、植民地を全部捨てるべき」といった論を掲げていた言論人でした(白井聡 p.13)」とのことですが、彼は、残念ながら病気で2ヶ月で退任することになりましたが。
大平正芳さんなどは当時、望み得る最高のブレーンを集めて、今の視点で見ても立派な理念を掲げていました。(井上寿一 p.80)
たとえば、中曽根さんは自分が総理総裁になった時、全く意見の異なる後藤田正晴さんを官房長官にあえて起用しました。(村上誠一郎 p.163)
などの例が、ありました。
また、思い切ったことを言う政治家もいました。
与謝野馨は、前川喜平さんに「自民党は、実は社会主義政党なんだ」と語ったとのことです。それは、「みんなが不満を持たないように、あらゆる人に目配りしながら、誰もがしんどい思いをしないようにしていく。これが政治なんだ」という趣旨の発言(前川喜平 p.180)と前川氏は解釈しています。
もし、今だったら、自民党の重鎮が「自民党は、実は社会主義政党なんだ」なんて発言したら、大バッシングになるでしょう。
自民党は変わってしまったのでしょうか?
この本に登場している人たちも、それぞれ、以前の自民党と現在の自民党の違いを指摘しています。
以前は、「一年生議員であろうと10回当選の議員であろうと、闊達な議論がなされていた。(村上誠一郎 p.155)」のだそうです。
自由闊達な議論がなくなった理由は、すべて官邸主導になってしまった(村上誠一郎 p.156)ことと、小選挙区制になってしまったこと(村上誠一郎 p.158)が大きいと言う点を、この本の中に出てくるほとんどの人が挙げています。
僕は、それと共に、日本全体の空気が関連しているのではないかと思います。日本は、バブルの崩壊後、経済の停滞が続き、見方によっては凋落していると言っていいかと思います。
そのあたり状況と人々の心理を内田樹氏は、次のように語っています。
「もう「パイ」が大きくならないのだから、自分の取り分を増やすためには他人の取り分を減らすしかない。どうすれば「他人の取り分を減らす」ことができるか。その理屈を考えるのにみんな夢中になった。「外国人」や「反日」や「あんな人たち」は公的支援を受ける資格がないという話を人々がするようになったのは、資源分配で「他人の取り分」が気になるようになったからで、要するに日本人が「貧乏になった」からです。(内田樹 p.115)」
協調的だった人々は、バブル崩壊後、足の引っ張り合いで他人を押し除けて自分だけ勝ち組になろうとするようになってしまいました。
政治家は、有権者に選挙で選ばれる訳ですから、投票してくれる人たちと同様の世界観を持つようになるのではないかと思います。
かつて自民党は、リベラルと保守を振り子のように方向性を変えてきたわけで、それがバランスをとってきたのですが、今やほとんど保守になりそれが過激化していっているように見えます。
石破茂氏は、「今はすっかり変わってしまいました。「こんな人たち」とか「悪夢のような民主党政権」といったようなことを与野党幹部が平気で口にする。(石破茂 p.141)」
そして、「われわれが初当選した当時、先輩方に「野党に賛成してもらうのは無理でも、納得をしてもらえ」と教わりました。(石破茂 p.141)」
と語っています。
もはや、今の自民党は、過激なことを言う幹部と、それに追従するイエスマンばかりになってしまっているのではないかと感じてしまいます。
石破氏のポリシーは、「政治家に必要なのは、たとえ自分の損になっても、公のために正しいことが言えるかということに尽きるのではないかと思っています。(石破茂 p.148)」なのでしょう。
今、自民党は少数与党になってしまいました。本来であれば、今こそ違う意見にも耳を傾けるべき時期でしょう。さて、これからどうなりますか?

