「無人島のふたり」 山本文緒 著 新潮文庫
僕が初めて読んだ山本文緒さんの本は「自転しながら公転する」でした。
その小説の中の「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ(p.504)」と言う言葉が印象に残りました。主人公の都に対する温かい視線が感じられました。
しかし、この本を僕が読んだ時、著者の山本さんは、すでにこの世にいませんでした。
2021年10月13日に、山本文緒さんは闘病生活後、自宅で亡くなりました。
2021年4月、山本さんは突然膵臓がんと診断され、そのとき既にステージは4bでした。余命は4ヶ月と告げられました。
この「無人島のふたり」は、山本さんが末期がんを宣告され亡くなる直前までの日記です。「ふたり」とは、山本さんと旦那さんのことです。
いいご夫婦だったんだなと思います。本の中に、おふたりが写っている写真が載せられています。とてもいい写真です。
気負いもなく、悲壮感もなく、亡くなるまでの日々に感じたことが、時にユーモアを交えながら書かれています。
最後の日記は、10月4日。最期まで山本さんは作家だったのだなと、静かに感動させてくれる文章で筆を置いています。
合掌。
素晴らしい本でした。

