見出し画像

「蛇にピアス」 金原ひとみ 著 集英社文庫

人は、どうやら上を目指すものらしいです。上を目指すのが正しいことで、その理由は、上に行けば上に行くほど明るく幸せな世界が待っていると思い込んでいるからです。

自分は必ず上に行けると信じる。「努力すれば報われる」「信じれば叶う」という確証バイアスに縋りつきながら・・・。

でも、上があれば必ず下がある。光があれば闇がある。

下は、目に映らない。無いものとして扱われる。

「蛇にピアス」は、光の世界の住人からは、無いものとして扱われる、あるいは目を逸らされるアンダーグラウンドの世界の住人たちの話です。

主人公のルイと、ルイと同居しているスプリットタンを持つアマは、10代です。スプリットタンとは舌ピアスを入れ穴を拡大することにより、最後には、蛇のようにスプリットした舌になった状態です。ルイもスプリットタンになろうとします。

家族連れが多い商店街、うるさい人々の声に、ルイは吐き気を感じるのです。そして、「こんな世界にいたくない」「とことん、暗い世界で身を燃やしたい」と強く思います。
ルイは、「陽の光の届かない」、「子供の笑い声や愛のセレナーデが届かない」アンダーグラウンドの世界を探し求めているのです。

光の世界との訣別は、背中に入れるあえて瞳を描かない龍と麒麟の刺青とスプリットタンによって完成するのでしょう。

ルイは19歳には見えません。「見えません」と言っても、小説なのでヴィジュアルな情報があるわけでは無いのですが、僕の想像の中ではもっと年上のアラサーぐらいに思えます。実際のルイは、あらゆる希望が失い、絶望のどん底を知った10代の女性なのです。

でも、あることがあって(ネタバレになるので「あること」については書きません)、ルイは泣きじゃくります。泣き止まない。

そして、物語は、竜と麒麟に瞳をいれ、舌の穴が大きくなって水を飲むと穴を通って水が川のように流れるようになったところ、もう少しでスプリットタンが完成するところで終わっています。

これからどうなるかわからない。

僕は、ルイの手を引っ張りたいと思いました。余計なお世話で、恨まれるかもしれないけれど。




いいなと思ったら応援しよう!