「むらさきのスカートの女」 今村夏子 著 朝日文庫
『うちの近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。いつもむらさき色のスカートを穿いているのでそう呼ばれているのだ。(p.5)』という何気ない情景描写から始まる小説。
最初のうちは、これが芥川賞受賞?と思いながら読み進めました。
登場人物のセリフもありきたりで予定調和的。一般の人の会話なんてそんなもの。これが現実だよなと思いながら、なぜか読むのがやめられない。
その背後に、何か不穏なものが流れているような気配があるのです。
そのうち、あっ、これはやばいかもという場面が出てきます。小さな亀裂のような出来事が、やがて大きくなり、隠れていた不穏なものが、黒い津波のように正体を表します。
それがおさまったと思ったら・・・。
アメリカの作家ケリー・リンクは、この小説を「読みやすくユーモアもあるのになぜか背筋も凍る(p.148)」と評しています。
まさにそんな小説です。
人生は、想定外です。予定調和では終わらない。

