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F12 ヨッシャマンVSゼンラーマン


もしかしたら気付いていない方もいるかもしれないのでお知らせしておこうと思う。

夏が来ましたよ。


夏。それは全裸の季節。
家にいる時にはほぼ全裸かフンイチ(褌一枚)だ。
快適で良いのだが、来客時がめんどくさい。
近所の人や宅配の方が来るとわざわざ服を着て玄関に出なくてはならない。
今日も恐怖のインターフォンが鳴った。
カメラを確認すると、ネクタイ姿の男性。セールスと見て間違いない。いつもインターフォン越しでお断りをするが、大体一往復では終わらない。
「ご挨拶だけでも」とか「パンフレットだけでもお渡しさせてください」とか、なんとか私を玄関先に引きずり出すつもりでいるのだ。
私は正直に言ってみることにした。

「すみません、今全裸なので」


なんと、これが効果テキメンだった。
虚をつかれた営業マンは、
「あ、その、いや、すみません、失礼しました」
狼狽してすぐに帰った。
これは使える。
悪い癖だと思うが、女性の反応が見たくなる。宗教の勧誘の人は大体女性なので、次に来たら試してみようと思う。

今これを書いているのが6月20日。休日。
明日は夏至なので、今日もほぼ夏至みたいなものだ。一年で最も太陽のエネルギーが強いと言われている。
こんな日はあれに限る。
私は2階のベランダに大判のタオルを敷き、枕を置いた。
注意深くしゃがんだ状態で私は変身した。

ゼンラーマンに。


お気に入りのラジオをかけ、私は大の字に寝そべった。
深いため息のような呼気がもれる。
なんという解放感。
何をしているかと言えば、全裸浴をしているだけである。
それなのに、私の魂は解き放たれ、清められ、満たされ、まるで宗教的な儀式でも行っているみたいだ。
たった一枚。
下半身の布があるかないかで、こうまで違うものか。
私は夏になると毎年このような甲羅干しをするのだが、その度にそう感じ入るのだ。
一年に一度は、「陰」部に太「陽」の光をあてる。これも一つの陰陽術なのではないかと私は思う。
猫がやってきて、
「バカじゃないの?」みたいな顔をしながらも、私の足元で丸くなる。
夏の日差しと爽やかな風。
静かな午後。
人の居ぬ間に洗濯をする小鳥たちの声。
まるで、社会からたった一人切り離されたかのような心地よい孤立感。
もう少し時間がたつと、近所の子供たちが学校から帰宅し、奥様たちの声もする。
そのザワメキもまたトキメキである。目と鼻の先でまさかおっさんが全裸で横たわっているとは夢にも思うまいと思うと、可笑しくもあり、背徳感とわずかばかりの興奮がある。

せっかく寝ているのだから、パックをしてみようと私は思った。
痩せてしわしわになってしまった顔に栄養を与えよう。顔にかけられるアイロンがあればいいのに。
立ち上がるとまずいので、私はスパイダーマンのように低空姿勢でベランダを出た。
戻ってきた私の手にあるのは、もはや万能と思われる「米ぬか&おからパウダー」の水割りとキッチンペーパーである。
再び寝転んで、まるで死体のようにペーパーを顔にのせ、溶液をどばどばと贅沢にふりかける。
呼吸ができなくて、本当に死体になりかけた。
そうか。そう言えばパックというのは目と鼻と口の部分が開いていたな。
1時間ほど漬け込むと、なんかつるつるになったような気もする。
初パック体験であった。


とかく全裸の力はすごいと思うのだ。
我々は、その秘めたる力をほんのわずかしか使いこなせていない。
しかし、その一端だけでも人を笑わせることくらいは容易にできるのだと私は知った。
2ヶ月ほど前だろうか。
ママ友(でよいかは分からないが、適当な言葉が見つからない)が家にやって来た。
YouTubeを始めたいので教えて欲しいと言うのだ。
完全に聞く人間を間違えている。
が、彼女は私が以前やっていた地元ローカルチャンネルをいたく気に入ってくれていたのだ。
鳴かず飛ばずのチャンネルの作り方ならレクチャーしてあげられるけれど……。
その時に、これまでで一番視聴回数が多かったのは何?という話になり、私はあまり気が進まなかったのだけど、それを彼女に観せた。

私の裸エプロン動画だった。


ママ友は文字通り笑い転げた。
「ここまでやらないとダメなのね」と彼女は泣き笑いの顔で言った。
私には無理だわ、とママ友は言い残して帰っていった。
私は、自分が大きな間違いを犯してしまったのではないだろうかと思った。
私のくだらない動画が、1人の可能性を消してしまったのではないか。
その思いが、さんまの小骨みたいに私の喉に引っ掛かったままだ。

よそう。
夏の太陽は人をハッピーにさせるためにあるのだ。
全裸と同じように。



※追記です。

異常性癖の疑いのある全力教室の古川さんのリクエストでお蔵入りの動画を三日間限定で載せておきます。
ご視聴には十分ご注意ください。
人気のない所がよいでしょう。
著者に石を投げるのもご遠慮ください。
https://youtu.be/fq5QVOpc92k?si=kKR2hDcksIriExow


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