見出し画像

第2回スペースは「ある」のではなく、なぜ「生まれる」のかーーサッカーという構造|新章

昨日の最終節で、こんな場面があったはずだ。

スペースがあった。
しかし一瞬後には、もう消えていた。

あの速さで消えるなら、スペースとは本当に「最初からそこにあった」のだろうか。

そうではない。

スペースは、生まれた。
そして、消えた。

最初から固定された空白として存在していたわけではない。


スペースは「ある」のではない

スペースを「ある」ものとして見るか、
「生まれる」ものとして見るか。

この違いは小さくない。

「ある」と考えれば、スペースは固定された場所になる。

あそこにスペースがある。
だからそこへ走れ。
そこへパスを出せ。

しかし実際のピッチは、そんなに静止していない。

選手は動く。
ボールは動く。
陣形は崩れ、戻り、変形する。

その中で、スペースも動いている。

いや、もっと正確に言えば、

スペースは、生まれている。

今、生まれる。
今、使える。
そして今、消える。

実際のサッカーで起きているのは、この現象だ。

スペースは、

生まれる → 存在する → 消える

この三段階を、信じられない速さで繰り返している。


なぜスペースは生まれるのか

ショートカウンターを思い浮かべてほしい。

攻撃していたチームがボールを失う。
その瞬間、主体が入れ替わる。

それまで守備だったチームに、突然「攻撃する時間」が与えられる。

広島対名古屋戦がそうだった。

優勝がかかった一戦。
広島は中盤でCMFからボールを奪った。

その瞬間だった。

広島の選手には、突然あらゆる選択肢が生まれた。

前へ運べる。
走れる。
パスを出せる。
シュートを打てる。

0だった時間が、一瞬で100になった。

なぜか。

名古屋がまだ攻撃の陣形にいたからだ。

SBは高い位置にいた。
中盤は前向きだった。
守備への切り替えは、まだ始まっていなかった。

つまり、名古屋はまだ「攻撃の時間」にいた。

しかしその間に、広島はすでに「攻撃する側」に変わっていた。

ここに、時間のズレが生まれる。

そのズレの間だけ、スペースが生まれる。

広島は、その数秒を使った。

守備が整う前に前進し、
守備が戻る前にシュートを打った。

そして試合を動かす先制点を決めた。


スペースはなぜ消えるのか

では、スペースはなぜ消えるのか。

相手が戻るからだ。

あるいは、別の選手が埋めるからだ。

スペースが生まれた瞬間、相手もそれに気づく。

危険だ。
埋めなければならない。

そう判断した瞬間、相手は動き始める。

CBがスライドする。
SBが戻る。
ボランチが下がる。

その動きによって、スペースは閉じる。

つまり、スペースには寿命がある。

永遠には存在しない。

生まれてから、消えるまで。

その短い時間の間だけ、スペースは存在する。

だから、使わなければならない。

一瞬遅れれば、もう消えている。


スペースは「一瞬」だ

優れた選手は、何が違うのか。

足が速いだけではない。
技術が高いだけでもない。

スペースが生まれる瞬間を、早く感じ取っている。

普通の選手は、スペースが生まれてから動く。

しかし優れた選手は違う。

スペースが生まれる前に、もう動き始めている。

だから、生まれた瞬間に到達できる。

周りから見ると、

「なぜそこにいるのか」

に見える。

しかし本人は、空間を見ているわけではない。

時間を読んでいる。

スペースとは場所ではない。

一瞬だ。

その一瞬に間に合うかどうか。

そこに、サッカーの本質の一つがある。


次回予告

スペースが生まれるとき、選手は何を感じているのか。

「スペースがある」と感じるとき、
選手は本当は何を感じているのか。

次回は、その感覚の正体に入る。

答えは意外に単純だ。

しかし、その単純さが、戦術の見方を変える。

連載計画

第1回

関連記事

参考動画


いいなと思ったら応援しよう!