決算書は「数字の表」ではなく「会社の歴史」。選ばれる企業をつくる“財務ブランディング”の視点|株式会社スタジオM 代表取締役 鈴木みささん対談
世界を優しくする会社、なにゆえの山本洋輔です。
「なにゆえ、あなたはそれをやっているのか?」
私たちは、そんな“理由”を掘り起こす対話を通じて、企業や個人の物語を可視化する仕事をしています。
今回お話を伺ったのは、株式会社スタジオMの代表取締役・鈴木みささん。
30年近くにわたり、中小企業の社長に伴走し、数多くの企業の栄枯盛衰を見つめてきました。
そんな鈴木さんが現在力を入れているのが、「財務ブランディング」という独自のアプローチです。単なる経理の代行ではなく、決算書という「数字の羅列」を言語化し、企業の価値を高めていく。
その根底には、孤独に戦う中小企業の社長たちへの、深く温かいエールがありました。
株式会社スタジオM
代表取締役 鈴木みさ
中小企業に向けて「財務のブランディング」を提供。数字を言語化し、社長の視座を高めることで「選ばれる会社づくり」を伴走支援する。
本記事では、鈴木さんが見つめてきた決算書の真実と、数字を通して組織を変えていく「財務ブランディング」の“なにゆえ”を掘り下げていきます。
決算書は単なる数字の表ではない。会社の「歴史」を語るもの
「税理士から決算書が返ってきても、いくら納税すればいいかを確認して終わってしまう。そんな社長様が、すごく多くいらっしゃいます」
鈴木さんは、中小企業の社長が直面する現状を、そう語ります。現場の最前線に立ち、何から何まで一人でこなさなければならない。そんな社長にとって、数字とじっくり向き合う時間は、なかなか取れないのが現実です。
しかし、銀行や取引先といった外部の人間は、その数字から多くの情報を拾い上げ、会社を評価しています。鈴木さんは、決算書の見方を次のように表現します。
鈴木さん「損益計算書は、社長にとって今年の『通信簿』です。今年これだけの業績を上げたという結果であり、次の期には、またゼロからスタートします。対して貸借対照表には、会社の『歴史』が刻まれています」
1年ごとの成績と、ごまかしのきかない積み重ねの歴史。
決算書をただの「数字の表」として見るのではなく、自社の歩んできたストーリーとして捉え直す。
それが、自社の魅力を外部に伝える「ハンサムな決算書」をつくる、第一歩なのだと気付かされました。
「無駄な節税」が会社の価値を下げてしまう真実
鈴木さんが社長たちに伝えている重要なメッセージの一つに、「納税を怖がらない」というものがあります。
「税金を払うのが嫌だ」という気持ちは、誰にでもあります。しかし、納税額を低く抑えるために、無理に利益を減らす。それは結果として、外部からの「会社の評価」を下げてしまうことになります。
鈴木さん「無駄な節税をして、外から見られる「会社の評価」を下げる。これは本当に良くないことです。逆に、少しずつ納税が上がっていくくらいのつもりで、『納税を味方につける』。そうすると、視座も大きく変わってくると思います」
無駄な経費を使わず、価値あることに、さっとお金を出せる体制をつくる。
このマインドチェンジが起こると、来年、再来年を「どういう会社にしていくか」を描けるようになる。そして、「社長」という立場から「経営者」という、ワンランク上のステージへと視座が上がっていくと言います。
社長の「視座」が変われば、社員も組織も変わる
財務を理解し、経営者としての視座が上がる。すると、「社長の行動」や、「選択するもの」が目に見えて変わってきます。
何でもかんでも「これ、経費で落として」と、領収書を持ってきていた社長の態度が変わる。すると、それは社内の従業員にも、はっきりと伝わるそうです。
社長が数字に興味を持つことで、片腕である経理担当者のやりがいも増し、会社全体のモチベーションアップにも繋がっていきます。
さらに、「事業承継」という場面でも、数字の言語化は大きな力を発揮します。
鈴木さん「二代目に数字が理解できるようになると、『親父もこうやって、頑張って20年やってきたんだな』と、お父さんの苦労がわかるんです。そうすると継ぐ側の気持ちも変わり、うまく事業承継のスイッチができるようになります」
数字を通して、「親の背中」と「歴史」を知る。
財務の知識が、単なる経営スキルを超えて、「世代間のコミュニケーションツール」や、「組織の絆を深める役割」を果たしている。とても印象的なエピソードでした。
孤独な経営者が迷わず「SOS」を出せる存在へ
現在、鈴木さんは「社長の寺子屋」というプログラムを展開しています。
1対1で、社長自身に「自社の決算書」を教科書として学んでもらう、という内容です。
自社の数字を、その場で置き換えて考えることで、明日からの具体的なアクションが湧いてくる。そんな実践的な取り組みです。
鈴木さん「中小企業の社長は、本当に大変です。決断して、覚悟して、日々頑張っていらっしゃる。そんな社長が、何かあった時にSOSが出せる存在でありたいです」
今回の対話を通じて強く感じたのは、鈴木さんが持つ「数字への厳格さ」と、経営者に対する「深い愛情」です。
会社のブランドをつくるのは、華やかなロゴや、キャッチコピーだけではありません。経営者が、自社の数字という「事実」に向き合い、そこからどのような未来の価値を紡ぎ出すのか。
「なにゆえ、あなたはそれをやっているのか?」
その問いへの答えが、「決算書」という、嘘のつけない歴史の上に語られるとき。企業は真の意味で、「選ばれるブランド」になっていくのだと確信しました。
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山本洋輔|なにゆえ株式会社 代表取締役
日本ブランド経営学会理事|株式会社マルタントン取締役
アビスパ福岡 AVISPA DAOブランドコーディネーター
1986年生まれ 岐阜県出身。映像制作会社に勤務したのち独立し、のべ500社・1万件以上の様々な媒体・形式のクリエイティブを手掛ける。2014年にドイツ発の解説動画制作会社 simpleshowの日本法人立ち上げ期に参画、上場企業80社以上の解説動画を制作。現在は中小企業のWHYの語りを起点としたブランディング支援事業を展開。2児の父。
