あいつの半径2メートル以内には近づかないほうがいい。|古賀コン8応募作
あー、そうきちゃったか。ふーん………そうですか。ですか。
……え、なに?俺?俺に話しかけてる?なに読んでるのかって?
あぁそう先月号。間隔あけて二回読むんだよ。初見とまた違う見方ができるからさ。一回目は作品に没入する。俺が作者の一部になる。味方…ってとこかな。で、二回目は俯瞰的視点から作品と対話するんだ。そうだな…小説の神視点みたいな感じかな。これは俺独自のメソッドなんだけど。
そうだ、あの銀賞とったやつお前読んだ?そう、牛乳配達員のやつ。面白かった?…ふーん。なんか途中から流し見って感じになっちゃったんだけどさぁ…、ま、絵は上手いよ。絵はね。それは俺も認める。でも絵だけで全部のファクトを伝えられるかっていうとそれは荒技というか、プロではないよね。プロってやっぱりストーリーで読者を引き込まなきゃだめなんだよ。だってさ、人に好きなマンガ教えるときになんて言う?「これ絵が上手いからいいよ」って紹介しないでしょう?「めっちゃ話が面白いから読んでみて」って言うわけでしょう?そこなんだよ。まぁ絵がキレイだと女子ウケするんじゃね?でも連載やってたら嫌でも上手くなるもんなんだけどねぇ。そういう成長過程を見るのも読者の楽しみのひとつでもあるわけじゃん?え?……いやいやだからってあえて最初から下手に描く必要もないけどね。これは俺独自のメソッドに反するからちゃんと言っとくわ。
………なんだっけ。そうそう。とにかくあれはねー、俺の原稿見てくれてる担当の人も苦笑いだったよ。先輩が担当してるからなんも言えないんだろうけど。え?担当ってなにって?持ち込みだよ持ち込み。出版社って誰でも原稿持ち込めるんだよ知らない?意外と知らないのか……そうか……やはりそれが近道………ふっ、灯台下暗しだな………いや、なんでも。とにかく誰でも持ち込みできるから。キミもなんか描けたら持ち込んでみるといいよ。……そーんな謙遜すんなって!絵が苦手ならシナリオだけ書くのもアリだし。あ、シナリオって原作ね。原作と作画が分かれてる漫画家っているでしょ。イマドキっぽくていいと思うけど、やっぱり俺は自分の作品の世界観に全責任を持ちたいから。トーンの明暗から髪の毛の一本一本まで責任持ちたいから。……え、応募しないのかって?俺はね、俺はね?やっぱり商業誌に載るからには完璧なものをお披露目したいし。自分の名前が出るからには責任を持たないといけないよね。これは
「「俺独自のメソッド」」
っそう!!ハモってくんなよ~!お前俺のこと理解してこようとすんなよ〜!担当は賞でも出してみたらって言うんだけどさ俺は自分のこと冷静に見てるから。まだ発展途上ってやつ。上しか見れねぇ。やっぱやってるヤツしか上までたどり着けないからさ。原稿?いや、半分くらいまで進んでるのはあるんだけどさ、ちょっと新しいアイデアが生まれてきちゃったんだよね。ゾーンに入っちゃって。毎日二時間くらいはゾーンに入ってる。作品の世界観と全然方向性が違うアイデアだから蛇足になっちゃうしねーどうしょっかなーって考えてるとこ。でも上手くコミットできたらメディアミックスもできるんじゃないかなって。少年の夢も大人にはビジネスだしね。描きたいもの描いてヒットするのが一番いいのは分かってるけど、理想と現実ってやつ?それでも追い求めるやつが”一握りのヤツ”になれるんだって自分に言い聞かせてる。これが俺独自の、
「おい予鈴鳴ったぞ!視聴覚室遠いんだから早く行こうぜ」
「あいつ今日も語ってんなー…」
「だからあいつ友達いないんだよ」【完】
#古賀コン8 「孤高の天才未満」応募作
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