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noouchi
読書録:小川洋子『妊娠カレンダー』
本屋大賞が発表されましたが、
こちらは芥川賞受賞作(1990年)について。
小川洋子さんの小説って、
うまく言えないのだけど、研ぎ澄まされた表現がとつとつと吐き出される感じが好きで。
淡々と乾いているように見えて、どこか不気味でふしぎで、気づいたらうっすら心が冷える感じがたまらないです。
そんで読みおわると、
もう自分でも認識してなかった自分が掘りかえされてる気がする。
大学生の「わたし」と、姉と、その夫。
姉の妊娠が分かってからの「わたし」目線の日常が、断片的に日記形式で記される。
"妊娠"とか"出産"とか、
話題はよろこばしいこと。の、はずなのに。
ぜんっぜん、おめでたい空気がしない。
何だこの乾いた空気。
誰もぜんぜん喜んでない。ハッピーそうじゃない。
“妊娠”が分かっても、
「わたし」も姉も、どこか淡々と他人事のよう。
お腹の赤ちゃんのことを「染色体」とか「腫瘍」とか呼んだり、なんというか、“物体”“異物”感がすごい。
初めは、何だこの気持ち悪い感じ…
と思うんだけど、途中ではっと気づく。
私だって、そうじゃない?
妊娠も出産も、そんなにイイものだと思ってなくない?
もちろん、ヒトの妊娠の報告はおめでたいなあとは思うし、
赤ちゃんも可愛いなあとは思う。
でもそれって、
自分ごととは思ってない薄い気持ちというか。
じぶんの中の、
無関心と悪意のはざまの感情に気づかされた。
物語のなかの「わたし」も、ちょっと衝撃なことをするのだけど、それだってきっと無関心ゆえ。
“こうしてみたらどうなるのかな。”
自分ごとじゃないからこそ、
たとえば“このボタン押したらどうなるんだろう”くらいの純粋な感情がのぞく。
好奇心、と呼ぶには、ちょっと暗くて、つめたい感情。
読んでる私の奥底にもねむっている感情な気がして、かすかに背中が粟立った。
