東洋医学・養生指圧・臨床心理 ①
東洋医学陣営における鍼灸から指圧へ

鍼灸理療専門学校入学から開業まで
今、私は女性専用の鍼灸指圧院を運営しています。
運営という言葉を使うのは、私一人でしているわけではなく、他に3人の女性鍼灸師がいて、それぞれ曜日担当としてそれぞれの個性にあった患者さんを診てもらう体制にしているからです。
私の出勤は水、金曜日だけ。
朝10時から夜8時まで最大7名様の枠しかないし、基本は50分ですが、90分や100分のコースも多くなり、ひと月に何度もお越し下さる方も多いので、ひと月に50名様ぐらいしかお出会いできません。
でも、有難いことに新規受け入れを半年以上停止していますが、途切れることなくいつもご予約は満枠です。
開業したのは2018年の冬ですから、まる5年が経ち6年目、開業した時とは違う景色が色々見えてきました。
そもそも、鍼灸指圧院を開業するに必要な鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師という国家資格のための専門学校に入学したのは、10年前の2013年、43歳の時でした。入学に至るまでの経緯はまたぼちぼち書いていきたいと思いますが、全く畑違いの業界からの入学でした。
そして46歳で卒業、2年弱整形外科付属の東洋医学付属センターでパート勤務しながら48歳で創業という流れです。
初めは自宅サロンでの開業のつもりで、当時再婚したばかりの夫が自宅併設の鍼灸院を建築プランに入れてくれていました。自宅の計画じたい、背伸びしたというか、一切の妥協のない、理想のうえに理想を詰め込んだものだったせいもあり、建築家というより芸術家と呼びたい建築家の先生は、依頼から着工するまでに2年以上かかるという超スローペースで計画を進めてくれたおかげで、ぽかっと時空が割れた空白のようなような時期があり・・・その時にネットで今の古民家物件が降って湧いてきたのです。
初めて内見に行った時、100年以上経っているその古民家は、1階には飲食店が2軒入っているものの、2階はスケルトンの区画もまだ確定していないような、壁も大正時代の新聞が塗り込んであるものがぴらぴらしているような状態でした。
でも天井板をはがして剥き出しになった大黒柱のその太さと、天井の高さに一目惚れして、一瞬にして女性が深い呼吸を取り戻せるような、駆け込み寺のような場を創りたいとイメージが駆け巡ったのでした。
自宅計画の遅れを盾に、その建築家さんに自宅サロンと同じテイストの内装プランを依頼して、資金計画の部分はエイヤと目をつぶって当時の自分としてはだいぶ無茶な投資をして、3か月後には、夢見た空間が目の前にありました。
ここで私は多くの悩める女性、かつての自分のようなこころともからだとも境界がわからない悩みをもつ女性に東洋医学的な心療内科と言えるような施術をするんだ、そんな女性のお役に立つんだと奮い立つような想いで、開院の準備をしていたことを昨日のように思います。
女性臨床鍼灸ならまち月燈

「女性臨床鍼灸ならまち月燈」という名ではじめたその場は、名前が示す通り鍼灸院としてはじめています。全くキャラクターは違うけれど、からだ観に共鳴するものがある同期の女性鍼灸師に土曜だけ業務委託という形で来てもらい、当初は月曜定休の週6日オープンしていました。
軌道にのるまでの半年ぐらいは、新患さん来ない~と悩みながらも、2月に開院して、その年の暮れにはもう結構予約枠がいっぱいになっていましたから、順調な方だったと思います。
その頃の私の治療は、鍼とお灸と指圧とマッサージのバランスが1:1:1:1みたいな、患者さんにカスタマイズして・・というと聞こえはいいけど、自分自身、何が効くのかわかっていない、ただただ患者さんの悩みに耳を傾け、からだの声を聴き、脈診と腹診と頭の中の古典の知識で証をたて、一応経絡治療と自分が思っている本治と標治で置鍼をして、鍼をしにくい、冷えているところにはお灸をして、そして指圧マッサージで全体のバランスを整えるような、盛りだくさんのものでした。
心理療法でも、必ずしもベテランが常にいいわけではなく、初心者の一生懸命さが功を奏するのか、ビギナーズラックなのか、初学者のカウンセリングでクライアントが楽になられることはよく見聞きしますが、そのような幸運もあったのでしょう。最初から患者さんにはとても喜んでいただけていたという印象があります。
今考えると、当時既に50歳前であった私は、鍼灸師として未熟で駆け出しだったにも関わらず、きっと経験豊かな海千山千の施術師にみえていたに違いなく、女性専門で、美容目的ではないという個性も相まって、まわりにあまりそういう場がなかったこともあり、分不相応なくらいの支持を得ていたような気がします。
そして1年、2年経つ頃には、既に予約枠が常にいっぱいになり、継続してお通いいただいている患者さんを優先するため、新規の方はお断りしなければいけないようになってきました。
その頃には、自宅サロンもできていましたので、身体がいくつあっても足りない、そろそろ次のステップを考えなければいけないなぁ・・と思った3年目にコロナ禍が始まりました。これは相当な打撃になるだろうと覚悟したのですが、案に反して、患者さんは減らなかった。むしろ他に行くところもないからなのか、来院頻度は増えていました。
院のあるならまちは観光の街ですから、周りは人が全く歩いていない。
その中にあって、黙々と院を目指して歩いて来て下さる方を思うと、有難くて手を合わせたくなりました。
もっとこの方たちに喜んでいただける場にしなければならない。
私一人では、どんなにフル稼働しても上限がある。
そんな思いでいるところに、同じフロアのお向かいのお部屋が退去されました。そして、ちょうど同級生に声をかけて知り合いの女性鍼灸師さんを紹介して頂いていた。
そんなタイミングが合致して、一部屋増設し、お二人の女性鍼灸師に来てもらえることになり、4人の女性鍼灸師が曜日担当でそれぞれの患者さんを担当していただくという今の形になりました。
有難いことに、後から合流していただいた先生方にもすぐに熱烈なファンといえるような患者さんが来て下さるようになり、どの先生の予約枠も今では一か月先までいっぱいです。
私個人の魅力で予約がいっぱいだったわけではないんだ…ということが証明されて、自分の初めの気負いを思うと笑えてきますが、こんな有難いことはないわけで、他の先生方にも、他の先生方を指名してきて下さる患者さんにも有難くて有難くて、いつも手を合わせています。
指圧中心の施術へ

鍼灸院、鍼灸師といってもその鍼や灸の施術の拠って立つ理論、手法はさまざまです。
当院の先生方も、てい鍼(ささない鍼)、中医学、活元、経筋をキーワードとする方法など、三者三様です。そして、患者さんによってはそれぞれのいいところ取りをされるのか、色々な先生の施術を受けられる方もいらっしゃいますが、圧倒的に専任の先生を決めて通われる方が多いです。
手法というより、相性、氣が合うというのが一番の理由となると思います。
これは、患者さんにとっても施術者にとっても、当院の最大のメリットだと思うのですが、氣の合う人としか出会わない楽さは何物にも代えがたいものです。
たとえば、私ははじめ鍼灸院という氣で発信していたので、当然のことながら、世間の鍼灸院に抱く色んなイメージで、ご来院がありました。
鍼灸接骨院でガツンと効く鍼、電気を流す鍼でよくなった経験をお持ちの方は当然、同じようなことを女性専門で女性鍼灸師がしてくれる・・・という期待をもっていらっしゃるわけです。
私は困ったな…と思いながら、そういう鍼はしないこと、西洋医学的な考え方、経絡治療的な鍼との違い・・などを説明しながら、治療するわけですが、そんなことは50分で納得いただけるまで説明できるわけがないし、そもそもそんな説明を聞きにいらしたわけではありません。
結果、二度といらっしゃらないか、治療の根拠はよくわからないけど、まぁこれはこれでいいかと思って続けてきてくださるかの二択となります。
でも今なら、それぞれの先生の得意なことをホームページに明示してあるので、大抵はそれをよく読んでご来院くださり、あらかじめミスマッチが少なくなります。
それによって、自分がその患者さんに本当にして差し上げたい、お楽になって下さるに違いないと思っていることだけにシンプルに集中できるようになりました。
初期の自分の施術は、自信がないためのあれもこれもであったと思います。
患者さんが、もっと刺激を欲しているようだと、鍼数や灸数は増やしていましたし、時間もオーバーすることが多かったと思います。
そしてもっと勉強して、ベテランになれば、鍼もお灸も上手になっていくと素朴に信じていた。
でも、そうではありませんでした。
私自身が体調不良の時の第一選択は指圧です。私が思うような指圧院はとても少ないので、リラクゼーションや整体院に行きます。
鍼灸院になぜ行かないのか?
もうこれだけで、一章書けそうですが、ただ単にに鍼を刺されるのが好きではないに尽きると思います。
誤解のないように申し上げますが、鍼が効く経験は何度もしています。学会で高名な先生の5分ほどの鍼で、痛かった膝の痛みが魔法のようになくなっている…というような経験は何度もしていて、鍼の効果は疑ったことがありませんし、もちろん、私もそうなることを目指して鍼灸師になったし、鍼灸院を開いたのですから。
でも、しんどくなると指圧を受けたくなる。
家族も私の鍼は受けたいといわないけれど、常に指圧しようか?という言葉は期待して待ち構えている。
院内での施術も、指圧が一番喜ばれている実感があり、鍼灸ではなく、指圧のキーワードで検索して辿り着いてきてくださる方が多くなってきました。
それに伴って、施術時間における鍼灸の割合はどんどん減っていって、今は9:1ぐらいの感じでしょうか。
全く鍼もお灸も使わないことも増えてきました。
そう、やっと結論めいたことがみえてきました。
今私は鍼灸ではなく、指圧で誰かお役に立ちたいという地点に立っています。
そのためになにが必要で、これからどうしていきたいのか、考えながら立ち止まりながら、そして臨床を重ねながら、ここに綴っていきたいと思います。
今日は同じ東洋医学陣営ではありますが、なぜ鍼灸から指圧へと軸足を移そうとしているかについて考えてみました。
次回は、養生としての指圧、あん摩マッサージ指圧師という資格について今思うことを書いてみたいと思います。
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