『もうあかんわ日記』を読んで
家族3人で、遊園地のジェットコースターに乗ったのは、もう何年前になるのだろう。この本を読みながら、ふと、そんなことを思った。私たち家族は3人だから、妻と娘を前に乗せ、私は1人後ろの席で、キャーキャー言ってる2人を、叫ばず見守ってる。そんな絵柄を思い出した。
でも、作者の岸田家では、少し様子が違う。
少し認知の入ったおばあちゃん、心臓の病を抱えたお母さん、ダウン症の弟さんと、トイプーの犬2匹、そして作者の奈美さんが、例えばUSJのジェットコースターに乗り込んで、前後左右に揺さぶられながら、みんなでキャーキャー叫びつつ、ゴールに突き進んで行く。
その中で家族の誰をも差し置いて一番キャーキャー言ってるのが、最後尾に犬2匹を抱えながら乗り込んでいる作者の奈美さん。
そんな感じの岸田家の37日間を綴ったのが、この日記だ。
でも、ほんとうはUSJに行きましたみたいな特別な日の日記ではなくて、ごくごく普通の日常が描かれている。
家具を処分した話、新しい洗濯機が来た話、鳩の巣の話、電車に乗り遅れた話など、ほんとうに身近な話題だ。はあちゅうさんは、「半径5mの景色」といったけど、まさにその範囲の日常なのだ。
なのに、37日間、一日としてありふれた日常といえる日がない。
37日間がハプニングの連続だ。
それは、この日記の登場人物に、少しずつチグハグなところがあるためだ。
当の本人は、少しもチグハグだとは思っていないが、傍から見るとチグハグで、それが、ハプニングの、原因なっている。
でも、奈美さんは、このハプニングを、毎日なんとか乗り越えてみせる。その過程で、奈美さんは、一旦、本人の目線に立って考えてみるということを忘れない。この姿勢を忘れていたら、岸田家の誰かが、とっくにジェットコースターから振り落とされていたのかも知らないと思う。
この日記の奈美さんを見ていると、失礼ながら、「じゃりン子チエ」のチエちゃんを思い浮かべる。
チエちゃんは、小学5年生ながら、お父さんよりしっかり者で、ご近所をはじめ地域社会に関わっている。
この日記でも、岸田家内部の話だけでなく、奈美さんが誰かに助けを求めに行く姿も描かれている。
お母さんの手術の話、弟さんのスイミングスクールの話、役所での手続きの話、「もうあかんわ」と言いながら、頼りにできると思うところに助けを求めに行っている。
また、奈美さん自身が頼りにされて、執筆や講演の依頼などを受けている。
岸田家の中でも、おばあちゃんを含め、誰かが誰かを頼り、また、頼られ、社会に対しても、頼り、頼られる関係。ほんとうの自立って、単に一人立ちすることではなくて、こんな風に、頼り頼られる関係になることなのかなと、この日記で気付かされた。
ラストで、弟さんは、大活躍を見せる。
そんな岸田家を乗せたジェットコースターには、素敵なゴールが用意されてる。それは、この日記を読んでのお楽しみ。
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