5年ルールのないPayPay銀行でペアローン8500万円を組んでいたと育休計画中に気づいた話
この記事は実際の相談をもとにしています。個人が特定されないよう、年齢・職業・金額などの一部を編集しています。
この記事を読めばわかること
① 変動金利の「5年ルール」がない銀行でペアローンを組むと何が起きるか② 育休中に金利が上昇したとき、家計とNISA投資にどんな影響が出るか③ ペアローン×育休×金利上昇が重なるときに確認すべき3つの数字
「計算上は大丈夫」の外側にあるもの
毎月のローン返済は問題なく払えている。世帯年収は1,500万円。毎月12万円をNISAでオルカン中心に積み立てている。
それでも「本当に大丈夫か、一度確かめたかった」と話してくれたのが、Kさん(44歳・大企業管理職・年収980万円)でした。
昨年購入したマンション。頭金を入れた後、夫婦でペアローンを組みました。PayPay銀行の変動金利で、夫が5,230万円・38年、妻が3,270万円・43年、合計8,500万円の借入です。借入当初の適用金利は0.38%。月々の返済額は夫123,000円・妻69,000円、合計192,000円でした。
「ネット銀行で金利が安かったし、二人で借りれば一人当たりの負担も軽い。よく考えた判断だと思っていました」
なぜ今、FP相談に来たのか。
「来年あたりから子どもをと、妻と話し始めて。育休に入ると妻の収入が減る。そのタイミングで、ローンのことをちゃんと把握しておきたいと思いました」
5年ルールという仕組みを知らなかった
相談に入って最初に、ローンの契約内容を確認しました。
借入先はPayPay銀行。変動金利。そこで一つ確認させてほしいことがありました。
「PayPay銀行の変動金利には、5年ルールと125%ルールが適用されない商品なんですが、ご存知でしたか?」
「5年ルール……何ですか、それ」
多くのメガバンクや住信SBIネット銀行などには、変動金利が上がっても返済額を5年間変えない「5年ルール」と、5年後の見直しでも改定前の125%を上限とする「125%ルール」があります。金利が急上昇しても、家計への影響を段階的にしか受けないための緩衝材です。
ただし、PayPay銀行・ソニー銀行・SBI新生銀行などの一部のネット銀行には、この仕組みがありません。金利が動けば、次の返済からすぐに返済額が変わります。
「じゃあ今の引き落とし額は、借りた当初より増えていますよね」
「あ……そういえば、最近少し変わっていました。誤差かなと」
スマートフォンの引き落とし履歴を一緒に見ると、借入から1年足らずで、夫・妻それぞれの口座からの引き落とし額がすでに上がっていました。
あなたには、何が気になりますか
少し立ち止まって考えてみてください。
世帯年収1,500万円。ペアローン残高8,500万円。変動金利で、5年ルールのない銀行。毎月12万円のNISA積立を継続中。来年、育休を控えている。
この家計の、どこが問題に見えますか?
収入が高いから問題ない、と感じる方もいると思います。私も最初はそう見えました。ただ、ある数字を並べてKさんに見せたとき、少し表情が変わりました。
私が最初に見せた数字
① ペアローン合計で金利別の返済額を並べた
8,500万円・変動金利、金利別の月返済額合計(夫+妻)を並べました。
・0.38%(借入当初):夫123,000円 + 妻69,000円 = 192,000円
・0.98%(2026年現在):夫141,000円 + 妻79,000円 = 220,000円
・1.5%:夫153,000円 + 妻87,000円 = 240,000円
・2.0%:夫167,000円 + 妻96,000円 = 263,000円
・3.0%:夫195,000円 + 妻114,000円 = 309,000円
現在すでに月28,000円・年間336,000円の増加が起きています。2%台に届くと、借入当初比で月71,000円・年間852,000円の差になります。
5年ルールのある銀行であれば、この増加は5年ごとに段階的にしか反映されません。Kさん夫婦のローンは、金利が動くたびにすぐ返済額が変わります。
「借りてまだ1年なのに、もう変わっていたんですね」
Kさんはそう言いました。
② 育休中の家計を数字にした
妻が育休に入った場合の家計を一緒に整理しました。
育児休業給付金は、育休開始から180日間は月収の67%、以降は50%が支給されます。妻の年収520万円をもとにすると、最初の6か月は月約29万円、以降は月約22万円の給付が目安です。
育休後半(給付金50%)の月収入:
・夫の手取り:約54万円(年収980万円)
・妻の育休給付金:約22万円
・合計:約76万円
この76万円から月の支出を整理すると:
・住宅ローン返済(現在の金利):220,000円
・生活費(食費・光熱費・通信費等):180,000円
・育児費用(おむつ・ミルク・保育用品等):50,000円
・保険・その他固定費:30,000円
・NISA積立:120,000円
・合計:約60万円
手元に残るのは月16万円ほど。今の金利のままであれば、NISA積立を継続しながら育休を乗り切る家計は、数字の上では成立します。
「続けられると分かって、少し安心しました」とKさんは言いました。ただ、私にはもう一つ確認してほしいことがありました。
③ 金利が上がりながら育休が続いた場合
Kさん夫婦は「子どもは2人いたら」と話していました。
1人目の育休が明けた後、2人目の妊娠・育休が続いた場合、妻の収入が抑えられる期間は3〜4年になる可能性があります。その間に金利がさらに上昇すると、返済額が増えながら収入が戻らない期間が重なります。
金利が2%になると月返済額は263,000円。現在より月43,000円増えます。育休中の家計で月43,000円の増加をどこで吸収するか。NISA積立を120,000円から77,000円に減らせば帳尻は合いますが、積立額を下げることへの心理的な負担は別にあります。
さらに、5年ルールがない銀行ならではの問題があります。5年ルールのある銀行であれば、育休中に金利が上がっても、その間は返済額が変わりません。緩衝材として機能します。PayPay銀行では、育休中であっても金利が動けばすぐに返済額が変わります。
教師をしていたころ、算数でつまずいている子どもを見ると、どこで止まっているかを先に探しました。Kさんの家計も、問題は今ではなく「複数のことが同時に重なったとき」にありました。
私が確認してほしかったのは「金利が何%になるか」の予測ではありません。「月返済額がいくらになったら、NISA積立を止めずに育休を乗り切れなくなるか」という自分たちの上限値でした。
Kさんが出した答えは「月263,000円(金利2%相当)までは、積立を減らしながらでも対応できる。それ以上になったら一時的に積立額を見直すか、繰り上げ返済を検討する」というものでした。その判断はKさん自身が数字を見て出したものです。
「知って選んだ」と「知らずに選んだ」は違う
相談の終わりに、Kさんが言いました。
「5年ルールがないことを知っていたとしても、PayPay銀行を選んでいたと思います。でも、知らずに選んでいたのは嫌でした」
この一言が、私には一番残りました。
5年ルールがある銀行は、返済額の急増を防げる反面、金利上昇分が後回しになり未払い利息が積み上がるリスクがあります。5年ルールがない銀行は、金利の影響がすぐ返済額に出る分、元本の減りが早くなる側面もあります。どちらが優れているわけではなく、それぞれの特性を理解した上で、自分の収入・家族計画・リスク許容度と合わせて選ぶものです。
Kさんはその後、育休期間のバッファとして、ローン返済2年分に相当する約530万円を流動資産として確保する目標を立てました。その判断はKさん自身が下したものです。
「金利が上がったとき、どう動けばいいかの地図ができました。それだけで気持ちが全然違います」
一番コストがかかるのは、知らないまま何年も過ごすことです。
読んでいるあなたへ
今、変動金利でペアローンを組んでいる方に、一つだけ確認してほしいことがあります。
あなたの借入先に、5年ルールと125%ルールはありますか?
契約書の「金利変動時の返済額見直し条件」欄か、銀行への問い合わせで確認できます。もし5年ルールがない銀行であれば、金利が動くたびに夫婦それぞれの返済額がすぐに変わります。育休・転職・定年など収入が変わるタイミングと重なったとき、どう動くかを先に考えておいてください。
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