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あの世のはざまの「ぼくきみ物語」〜地獄の沙汰もチャンネル次第〜【第9章 #10】


第9章 こころと身体の話
(こころ編)


ぼくは、ゆう。

ある日、ぼくは彼女と「こころと身体」についての話をしたんだ。
今回は、まず、「こころ」のお話をしよう。

こころと身体の仕組みを知ることは、人間にとって、とても大切なことだからね。

ぼくは彼女に問いかけてみた。
「ねぇ、こころって身体のどこにあると思う? ちょっと絵を描いてみてよ」

そう言われると、私は一瞬考え込んでしまった。
「一体、こころってどこにあるんだろう……。心臓? それと頭かなぁ……」

少し考えて、私はこう答えた。
「こころって言ったら、やっぱりまずは心臓がある胸のあたりにハートマークかな。それから、頭。いろいろ考える意識もあるから、脳のあたりにもハートを描くね」

私はノートに人間の身体を描き、胸と頭に小さなハートマークを描き加えた。それを見たゆうは、嬉しそうに頷いた。

「頭のハートは当たり。それからね、胸のハートは心臓というより、胸の少し下、みぞおちのあたりにあるんだよ。でも、人間は昔から『こころは心臓にある』と思いたいものなんだね。よし、じゃあ今度はそのみぞおちのあたりにもハートを描いてみて。実はね、人間の身体の中には、もっとたくさんの『こころ』が隠されているんだよ」

私は驚きながら、ゆうの気配を感じていると、彼は優しく諭すように言葉を続けた。

「こころはこころ。身体は身体。別々のものに見えるけれど、本当は深くつながっていて、決して切り離せないものなんだ。こころが身体に影響を与えることもあれば、身体の調子がこころに影響を与えることもある。だから、自分のこころと身体の両方を同じように愛して、大切にしてあげることが大事なんだよ」

そして、ゆうはさらに一歩踏み込んだ質問をしてきた。

「じゃあ、きみにとって『こころ』って、一体どんなものだと思う?」

「こころって、本当にいろいろあるんだよなぁ……」
私は自分の内側に意識を向けてみた。

『自分で考えようとしたわけでもないのに、突然怒りや悲しみがわいてくることもあるし、考えれば考えるほど、よく分からなくなっていく。こんなこと、今までの人生で一度も真剣に考えたことがなかったかも……』

「うーん」と言いながら、私は思いつく限りの感情を言葉にしてみた。

「優しいこころ。信頼するこころ。愛しいこころ。警戒するこころ。恐れるこころ。悲しむこころ。怒りのこころ。他にもまだまだたくさんある気がする。それらを全部ひっくるめたものが『こころ』なのかなぁ」

「そうだね」と、ゆうの温かい声が響く。

「人間には、思考を司る『考えるこころ』と、感情を司る『感じるこころ』がある。でもね、それも人間が自分で気づくことのできる、ほんの一部にすぎないんだ。実は、人間には自分でも気づいていない『無意識のこころ(潜在意識)』がもっとたくさん隠されている。だから、自分でも理由が分からないまま、急に不安になったり、悲しくなったり、嬉しくなったりすることもあるんだよ。人間のこころは、自分が思っているよりも、ずっと広くて深い宇宙のような世界なんだ」

ゆうの深い話を聞きながら、私はふと、最近あった出来事を思い出して彼に尋ねてみた。

「そういえば、この前、転職したばかりの知人からこんな相談を受けたの……。『仕事場の人間関係がつらい。理不尽なことを言われたり、陰口を叩かれたりして、家に帰ってもそのことばかり考えてしまう。何をしていても頭から離れなくて、何度も何度もその時のことを思い返しては、毎日が苦しくて仕方ない』って言っていたの。そんな時はどうしたらいいの?」

「それは、とてもつらいことだね。理不尽なことを言われて傷つくのは、人間として当然だよね」
ゆうは知人の痛みに寄り添うように静かに言った。

「でもね。その嫌な出来事を何度も頭の中で思い返して、苦しんでいるのは、きみの知人そのものというより、その人の中にある『悲しんでいるこころ』なんだ。『怒っているこころ』、そして『心配しているこころ』たちが暴れている状態なんだ。だからね、そんな時は、その暴れているこころと『一緒にならない練習』をしてみるといいよ」

「一緒にならない練習……?」

「うん。自分の中にわき上がる感情と少し距離を置いて、『あっ、また私の中に悲しんでいるこころが出てきたね』『今は怒っているこころが主導権を握って話しているんだね』って、その感情に『静かにしようね』、そして無理にその気持ちを消そうとしなくていいけど、『大人しくしてね』と伝えればいいんだよ。戦わなくてもいいよ。ただ、『今、自分の中にこんなこころがあるんだな』って気づくことが大事なんだよ。それだけできっと、こころが静かになってくれるはず……最初は難しいかもしれないけれど、少しずつ練習していくと、そのこころは以前ほど大きく騒がなくなっていくからね」

「なるほど……! そういう客観的な捉え方があるんだね。ちょっと難しそうだけど、こころが軽くなりそう。早速、この話を伝えてみるね」

「うん、ぜひ伝えてあげて。きっと、その人のこころも少し軽くなると思うよ。人間には自分でも気づいていない無意識のこころがたくさんあるから、浮かんでくるすべての感情にいちいち振り回されて反応しなくてもいいんだ。その具体的な練習方法については、また今度ゆっくり話そうね」

当時の私は、「へえ、なるほどなぁ」と感心するくらいだった。
この時は、ゆうが教えてくれたこの言葉の本当の深さや意味までは理解できていなかった。

だけど、私たちの「こころ」と「身体」の距離は、この日の対話をきっかけに、少しずつ、けれど確かに縮まり始めていたんだ。

15年前、私の右手が勝手に描き出した「魂の絵」。透明な丸はこころで、その中に魂のかけらがあります。画材のせいかもですが、角度によって光ります。

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※本作は、いつも一緒にいてくれる「内なる存在」との絆、そして私自身の地獄からの生還を描く、全2巻(前後編)の【前編】となります。



🔗 続きはこちら第10章 こころと身体の話(身体編)〜臓器との対話〜



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