民法(総則)(16)時効の完成猶予、更新とは何か
私にとって、平成29年改正民法の中で最も難しかったのは時効における完成猶予と更新の部分でした。ここは逐次条文にあたって話したいところなのですが、その前に時効の完成猶予、更新とは何かについてざっくりと話を進めたいと思います。
時効障害というのは、時効の完成を妨げる制度をいい、時効の完成猶予と更新があります。
更新というのは、時効がいったん進行を始めた後、時効の基礎である事実関係と相容れない事実が存在するために、その進行が断絶し、それまでに経過した期間が全く無意味になること、つまりゼロになって再スタートすることをいいます。裁判上の請求によって判決が確定した場合や、債務者が承認した場合等がありますね。
これに対して、完成猶予というのは、時効更新のための手続きがなされた場合や時効更新が不可能又は著しく困難になる事情がある場合、一定期間時効の完成を猶予することをいいます。つまり、ゼロになるのではなく時効期間の進行がストップしているだけということです。
この完成猶予と更新の理解については、意外にも両者の関係を3類型に分けて捉えるとスッキリ頭に入るような気がします。完成猶予と更新の関係について、①一体型、②非一体型、③その他(一体型でも非一体型でもない)の場合に分けます。
【一体型】
(1/1)時効完成猶予にあたる事由が生じた。たとえば、裁判上の請求をしたとする。
↓
(2/1)が本来の時効完成日である。
↓
(3/1) に認容判決が確定した。
この場合、2月1日から3月1日までの間、時効の完成が猶予されることになります。そして、3月1日から新しい時効期間がスタートすることになります。このように、時効完成前に完成猶予に該当するとされる行為をなし、その事由の終了というか完成によって更新が始まる場合を、完成猶予と更新の一体型と呼んでいいかと思います。
この一体型に該当する類型行為が裁判上の請求等(147条)や強制執行等(148条)であり、これについては後で詳しく話しますが、基本は上記例をしっかり頭に入れておくことが肝要だと思います。
なお、時効の完成猶予期間というのは1月1日から3月1日までをいうようですが、私としては2月1日から3月1日までを完成猶予期間といった方がよいような気がするのですが、よく分かりませんね。いずれにしても、時効の完成が猶予されるのは2月1日から3月1日までです。
【非一体型】
(1/1)時効完成猶予にあたる事由が生じた。たとえば、催告(裁判外の請求)をしたとする。
↓
(2/1)が本来の時効完成日である。
↓
(7/1) 催告をしてから6か月経過時
この場合も2月1日から7月1日までの間、時効の完成が猶予されることになります。しかし、ここで注意すべきは(一体型)における裁判上の請求とは異なり、7月1日から新しい時効期間はスタートしないということです。完成猶予と更新は一体化していないのです。催告については色々論点があり、後で詳しく話しますが、一言いっておくと、催告による場合の完成猶予期間中(2月1日から7月1日まで)に裁判上の請求等をすれば、完成猶予・更新の一体化が可能です。そして、その完成猶予中に再度の催告をしても今度は完成猶予の効力も発生しないことになります(150条2項)。
この非一体型には、催告の他、仮差押え及び仮処分(149条)、協議を行う旨の合意(151条)等がありますが、後で詳しく話します。
【その他の型(一体型でも非一体型でもない)】
(1/1)時効完成猶予事由に似た事由が生じた。たとえば、承認をしたとする。その時点、つまり、1月1日から新しい時効期間がスタートすることになる。
↓
(2/1)が本来の時効完成日である。
このパターンは時効完成事由と更新との関係について一体型、非一体型、どちらにも当たりませんね。なぜならば、承認という時効障害事由は、時効の障害となる事由であるという点においては、裁判上の請求や催告と同じですが、すぐさま時効が更新されるわけなのだから完成猶予事由とはいえません。
民法上は、この「その他の型」に該当するのは、通常の請求の場合を除けば(通常の請求の場合、すぐさま時効が更新されるのはいうまでもない)承認の場合だけのようです。
※一体型を裁判上の請求等(147条)と強制執行等(148条)、非一体型を本条の仮差押え等、催告(150条)、協議を行う旨の合意(151条)、どちらでもない型を承認(152条)とグループ分けすると理解が早いような気がします。
それでは次回から、以上を前提に各論的時効の完成猶予と更新について話を進めたいと思います。
