大学入学前教育で見えた!読解力と表現力の深い関係【代ゼミと考える読解力#5】
こんにちは、代ゼミ教育総研note、編集チームです。
読解力の連載、5回目です。
これまでの連載はこちらからご確認いただけます。
これまで「読解力の現状」や、「大学入試で求められる読解力」を見てきました。
では、大学合格後はどのような場面で読解力が必要になるのか?
近年代ゼミ教育総研への依頼が増加している、「大学入学前教育」の観点から、大学支援チームのSさんに詳しく語ってもらいました。
💡読解力と表現力はコインの表裏のような関係⁉️
大学入学前教育について詳しく見ていく前に、まずは「大学入学時点で求められる力」を考えてみましょう。
代ゼミと考える読解力#3の中で、東京大学が発表している「高等学校段階で身につけてほしいこと」(国語)において、「文章を筋道立てて読みとる読解力」と「それを正しく明確な日本語によって表す表現力」が求められているとありました。
この2つの能力は、求めるレベルの違いはあれど、すべての大学が入学者に望んでいる基本的な力ではないでしょうか?
この読解力と表現力にスポットを当てて大学入学前教育プログラムの実施結果を分析したところ、読解力と表現力は、まるでコインの表裏のような関係に見えてきたのです。
本記事ではその関係を、「文章作成課題」の結果を通して考えていきたいと思います。

▶大学入学前教育とは?
まずは、大学入学前教育について少し触れておきます。
現在、私立大学入学者の約2人に1人は総合型&学校推薦型選抜を利用して合格しており、その数は年々増加しています。
詳しくは代ゼミと考える読解力#4をご参照ください。
総合型選抜の合格発表が11月1日以降、学校推薦型選抜の合格発表が12月1日以降と年内に合格発表が開始されるのが特徴です。
こうした選抜方式では、合格が決まってから実際の入学まで、人によって長ければ4か月以上の空白期間ができます。
入学前の11月~3月は一般選抜を受ける人たちが必死に勉強している時期。
一足先に合格が決まった入学予定者たちは、この時期に何をしたらよいのでしょうか?
運転免許取得?アルバイト?思いっきり遊ぶ?
人それぞれ考えがあるとは思いますが、大学側の立場で答えるのならば
「大学入学後の学びを意識し、その準備をしておいて欲しい」です。
実際の大学との打合せの場でも、この考えを根底に課題を決定していきます。
そのうえで、各大学が主に総合型&学校推薦型選抜合格者を対象として実施しているのが“大学入学前教育”なのです(大学によっては一般選抜・共通テスト利用型選抜の合格者も対象としています)。
大学入学前教育プログラムは、各大学が独自に用意しているもの、外部教育関係機関と協力して行っているものなどがあり、実施内容・実施方法は様々です。
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💡クライアント全大学が導入する意外な課題とは?
われわれ大学支援室が携わっている大学入学前教育プログラムでは、英国数、物理、生物、化学などの科目における復習や応用をはじめ、多種多様な課題を実施しています。
その中でも、文系理系・医学部系などジャンルを問わず全大学で導入しているプログラム、、、
それが”文章作成課題”です!
▶文章作成課題ってどんなもの?
文章作成課題を導入するねらいは、入学予定者に「レポートや論文を作成する能力を、課題を通して段階的に身につけてもらう」こと。
基本的に各大学・学部のニーズに合わせた課題を実施していますが、その内容には大学入学後に取り組むレポートを意識した、正確な情報収集とそれを元にした表現力が求められる課題であるという共通点があります。
課題内容について、具体的な例をいくつかあげてみました。
【文章作成課題の内容例】
・課題図書を要約し、意見を述べる
・課題文を読み、テーマについて自由に論述する
・関心事例をあげ、根拠を示しつつ理由・意見を述べる
・グラフや写真、イラストなどを使用して文章作成を行う
etc.
一見シンプルにも思える内容ですが、実際は、課題内容・作成条件・原稿用紙の使い方・出典の示し方・提出方法など詳細が記載された5~15ページほどの課題冊子を読みこんだうえで取り組みます。
そのため、まず課題冊子自体を正確に理解する必要があります。
しかしながら、文章作成以前に作成条件(サイズ・文字数・タテヨコなど)通りに作成することもできない人が増えてきているのが現状です…
大学の方とお話しする中でも、学生の書くレポート(文章)の質が落ちてきて困っているという話をよく聞きます。入学後につまずかないためにも、これまで以上に読み書きに力を入れていく必要がありそうです。

▶設問を正しく読めていない?!
ここからは、昨年度実施した文章作成課題の結果の一部をご紹介しながら、読解力と文章作成力・表現力について掘り下げてみたいと思います。
【内容理解の評価推移】📊
文章作成課題では、以下の項目についてそれぞれ5段階で評価をしています。

印象的だったのが、解答が設問の意図とずれている答案が多いという傾向です。添削した講師の講評では次のような指摘がありました。
「問題をよく読み、問われていることに確実に答えるという点が残念ながら疎かになり、『問題点』を的確に提示できないため、『解決策』『提案』などが的を射たものとなり得なかった」
さらに、課題の要項や設問を正しく読めていない学生が年々増えていることが、この後にご紹介するグラフからも読み取れます。
課題内容を理解し正しく取り組めているか、という「内容理解」の項目は読解力と結びつくものですが、下記グラフからわかるように、明らかにA・B評価が減少してきているのです。

文章の内容以前に、課題内容・条件を読み取ることができなければ、どれだけ良い文章を書いても高い評価は得られません。
外国語で書かれた文章と違い、日本語で書かれた文章は簡単に読む(文字を追う)ことができます。しかし、正しく読めているのかはまた別の話であり、たとえ日本語であっても、「正確に」読むのはなかなか難しいものです。
そして、正確に読めていないことに気づきにくいのも厄介なところ。
ましてや高校生が自分の読解力不足を認識し、自己改善するというのは簡単にできることではありません。

▶トレーニングの必要性と事例紹介
実施結果の一部について述べましたが、実際にどうしたら正確に課題を読み取り、それに対応した文章を書けるようになるのでしょうか?
その1つの答えとして、全く同じ課題に2回取り組んだ事例をご紹介します。
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受講生には「1回目の添削結果を参考に、再度答案を作成し提出する」という課題に取り組んでもらいました。
その結果は・・・
一人ひとりに合わせた丁寧で細かな添削指導をすることで、課題内容を正しく理解し、それに対応した文章を書く学生が増えました。

さらに興味深いのが、表現力・用語の正確さにも同様の結果が出たということです。

内容理解が高まったことを受け、表現力や用語の正確さにも大きな変化が見られました。1回目では見られなかったA評価が2回目には登場し、B評価も大幅に伸びています。
添削を担当した講師からも「添削の効果をはっきりと実感した」というコメントが寄せられており、その変化は明らかでした。
「1回目と2回目では別人が書いたと思うほどの改善が見られたものもあった」という声も!
この課題は、トレーナー(添削講師)の指導のもと、正しいパーソナルトレーニング(個別添削結果を活かした再作成)をすることで、正しく内容を読み取り、正確な文章が書けるようになるというひとつの好事例になりました。
しかしながら、トレーニングを1,2回行ったからといって文章作成力・表現力が身につくという簡単なものではありません。
代ゼミと考える読解力#2の記事にもあるように、「文章作成力・表現力」も正しく書けていないということを認識し、正しい書き方へシフトするためには、それなりの指導期間が必要なのです。
大学入学後は、文章を読むことはもとより、文章を作成するという機会が高校時代より大幅に増えることでしょう。「正しく読めていないと正しく書けない」ということを頭に置いて取り組んでいただければと思います。
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「代ゼミと考える読解力」という本シリーズ。
「大学入学前教育」を通して読解力を見つめてみると、読解力なくして正しい文章作成・表現はできない、両者は切り離すことの出来ないコインの表裏のような深い関係だということが浮かび上がってきました。
表現力というと「書く」ことばかりに目がいきそうですが、実はまず「正しく読み取ること」がとても大切なのです。
本記事が少しでも読解力や表現力について考えるヒントとなり、向上のお役に立ちましたら幸いです。

次回からは、高校現場で生徒の読解力をどう育んでいくか、授業デザインや授業改善のヒントを実例とともに考えていきたいと思います(全2回)。
お楽しみに😊
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