骨太方針2026-「健康医療安全保障」と「最恵国待遇」
2026年の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2026)が7月21日に閣議決定されました。
今回の記事では、第3章 責任ある積極財政に基づく「中長期経済財政計画」-2.全世代型社会保障の構築-(2)成長型経済に合わせた持続可能な社会保障制度のうち、創薬・先端医療イノベーションの部分についてお伝えします。
全体的には、再生医療から希少疾病医薬品、AIの活用など、まんべんなく言及されていると感じました。
その中で、筆者が個人的に目についた表現を挙げると、まずは
「健康医療安全保障」
健康や医療と安全保障を結びつける表現です。経済安全保障など、安全保障という言葉を耳にする機会が増えたと感じますが、医療分野でいえば、とりわけパンデミック時のワクチンや医薬品の不足など命に直結する問題があります。
個人的な見解ですが、何かと安全保障とを結び付けるのは、それだけ重要な問題であることを意味しているだけでなく、政治的な関与の強化、特定の分野への”肩入れ”を意義付けるレトリックでもあるのかなと考えます。
「神の見えざる手」に委ねられた市場に国家が介入することには否定的な見解があったと思いますが、それが必要になった(あるいは、それをやってきた国が結局うまくいった)というのが反映されているのではないかと思います。
続いて目についたのは、
「米国の医薬品に係る最恵国待遇(MFN)価格政策」
です。
骨太方針2026の原案にはありませんでしたが、最終的に本文に書きこまれました。
アメリカが指定した国の薬価を参照し、もっとも安い国の価格とアメリカの販売価格を合わせるという政策です(もともとの物価の違いは考慮されるようです)。
日本も参照対象の国に入っており、日本の薬価は先進諸国の中でも安いと言われることから、アメリカで安い価格をつけられないよう、日本では最初から売らないようになるのではないかということが懸念されています。
そうすると、他の国で使える薬が日本ではそもそも流通しないという事態が発生しかねません。
サプライチェーンや生産地の問題の性質と異なり、市場(マーケット)の問題は解決が難しいと思います。
中国やインド以外の原材料調達先を見つけたり、自国内に工場を作ったりすることは(容易ではないですが)選択肢としてはあり得ます。
しかし、医療用医薬品でアメリカに代わる規模のマーケットは現状ありません(長期的にはアメリカ一極集中は課題でしょう)。
したがって、アメリカのマーケットを失う(販売額を落とす)ということは何としてでも避けたいはずです。
骨太方針2026には、これを受けて「必要な医薬品等が確実に上市される環境整備」という表現が盛り込まれました。
医薬品への支出が厳しいのは日本だけではありませんが、国民負担とイノベーション評価という相反する課題に取り組まなければなりません。
また、これも個人的見解ですが、「必要な医薬品等が・・・」の「必要な」をどう判断するかという状況も今後生じ得るのではないでしょうか。
国内のニーズ、どこまでを国民皆保険制度内でカバーするかといったセンシティブな課題につながるかと思います。
※上記の内容はすべて筆者個人の見解であり、所属企業の公式見解ではございません。ご了承願います。
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