バスで隣に座ったおばあちゃんの、温かい一言
今日は、全てがうまくいかなかった
今日は、全てがうまくいかなかった。
仕事でミスをして、上司に怒られた。
資料を間違えて、取引先に迷惑をかけた。
同僚の前で、叱責された。
恥ずかしかった。
情けなかった。
自分が嫌になった。
何をやってもダメな気がした。
どうしてこんなに失敗ばかりするんだろう。
もう辞めたいとさえ思った。
早く家に帰りたかった。
誰にも会いたくなかった。
一人になりたかった。
帰りのバスで、うつむいていた
帰りのバス。
いつもと同じバス。
でも今日は、座る気力もなかった。
空いている席を見つけて、座った。
うつむいて、座っていた。
顔を上げたくなかった。
誰とも話したくなかった。
誰とも目を合わせたくなかった。
一人になりたかった。
窓の外を、ぼんやり見ていた。
景色が流れていく。
でも何も見えていなかった。
頭の中は、今日の失敗でいっぱいだった。
ため息が、自然と出た。
涙が出そうだった。
我慢した。
隣のおばあちゃんが、話しかけてきた
隣に、誰かが座った。
気にしていなかった。
しばらくして、声がした。
「大丈夫?」って。
顔を上げると、おばあちゃんがいた。
優しい顔をして、こちらを見ていた。
心配そうに、見ていた。
「え?」って言葉が出た。
何が大丈夫なのか、わからなかった。
おばあちゃんは、もう一度言った。
「大丈夫? 元気がないみたいだから」
思わず、言葉に詰まった。
知らない人に、心配されるなんて。
見ず知らずの人に、気づかれるなんて。
そんなに、顔に出ていたんだと思った。
「辛いことがあったのね」
おばあちゃんは、私の顔を見て言った。
「辛いことがあったのね」って。
わかってしまうんだと思った。
隠せないんだと思った。
こんなにも、顔に出ているんだと。
何も言えなかった。
言葉が出てこなかった。
ただうなずいた。
おばあちゃんは、優しく笑った。
「そうよね、辛かったわね」って。
その言葉で、涙が出そうになった。
誰も、私の気持ちをわかってくれなかった。
上司も、同僚も、わかってくれなかった。
でもおばあちゃんは、わかってくれた。
何も話していないのに。
わかってくれた。
「明日は、いい日になるわよ」
おばあちゃんは、言った。
「明日は、いい日になるわよ」って。
根拠なんてない言葉。
何の保証もない言葉。
でもその言葉が、心に響いた。
そうだといいなと思った。
そうなってほしいと思った。
明日は、いい日になってほしい。
「大丈夫、きっとうまくいくから」
おばあちゃんは、そう言って笑った。
その笑顔が、温かかった。
その声が、優しかった。
その言葉が、心に染みた。
泣きそうだった。
でも笑顔で、うなずいた。
「ありがとうございます」って言えた。
見知らぬ人の優しさ
見知らぬ人の優しさに、救われた。
名前も知らない。
もう会うこともないかもしれない。
でもあの優しさは、忘れない。
おばあちゃんは、私の降りる停留所で一緒に降りた。
「気をつけてね」って言ってくれた。
手を振ってくれた。
「ありがとうございました」
もう一度、言った。
おばあちゃんは、また笑顔だった。
バス停を離れて、振り返った。
おばあちゃんの姿は、もう見えなかった。
でも心は、温かかった。
あの言葉が、胸に残っていた。
「明日は、いい日になるわよ」
そうかもしれない。
そう思えた。
私も、誰かに優しくしたい
私も、誰かに優しくしたい。
見知らぬ誰かに、温かい言葉をかけられる人になりたい。
困っている人に、気づける人になりたい。
おばあちゃんみたいに、優しい人になりたい。
今日、救われた。
見知らぬおばあちゃんに、救われた。
その優しさを、忘れない。
いつか私も、誰かを救えるかもしれない。
小さな優しさが、誰かの心を温められるかもしれない。
そう思った。
明日は、いい日になる。
おばあちゃんの言葉を信じて。
また頑張ろうと思えた。
ありがとう、おばあちゃん。
あなたの優しさを、忘れません。
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