落合陽一さんがつくった「null²の森」への遠足しおりを作ってみた件
落合陽一さんが主宰する「落合陽一塾」では、仲間とリアルに交わる “オフ会” が月一で開催され、学びを体験する “遠足” が不定期に開催されます。
今日の落合塾は年末年始に引き続き2回目のバイブコーディングワークショップ! https://t.co/9Izne64qj4
— 落合陽一 Yoichi OCHIAI (@ochyai) April 29, 2025
これまでも、個展やライブ会場、高山の日下部民藝館など、落合さんの活動の現場を実際に訪れる機会がありました。
そして今回、いよいよ大阪・関西万博へ。
6月、塾生やそのご家族数十名で、落合さんがプロデュースする未来のパビリオン「null²(ヌルヌル)」を体験する遠足が実現することになりました。
せっかく訪れるのだから、もっと深く味わいたい。
そんな想いから、事前に理解を深めるための “遠足しおり”を、自分なりに作ってみました。

落合さんのインタビューやnull²の仕組みを、Q&A形式でやさしくまとめています。
塾生でなくても、初めて訪れる人でも読めるように構成しているので、少しでも参考になればうれしいです。
万博落合陽一館null²オープンして3週間! おかげさまでたくさんの方にお越しいただいてます! みんなありがとう! 連休中も待ってます! #null2 #expo2025 #nulldendria pic.twitter.com/BSFMCqDk7U
— 落合陽一 Yoichi OCHIAI (@ochyai) May 1, 2025
第1章|ようこそ、null²の森へ
このしおりは、はじめて「null²(ヌルヌル)」を訪れるあなたのための準備ガイドです。
null²は、大阪・関西万博2025において、メディアアーティスト・落合陽一さんがプロデュースしたパビリオンで、私たちが慣れ親しんできた「記号」や「意味」、「お話」や「自分らしさ」といった概念を一度手放し、まったく新しい視点から世界を体験する場所です。
SNSでいいねを集めたり、自己紹介で自分を説明したり、「これって何?」「どういう意味?」と問い続ける日常から少し離れてみること。
null²はそんな “記号まみれの世界” から離脱して、「わけがわからないけど、なんかすごい」「何も説明できないけど、すごく心に残った」という、不思議な感覚をあえて楽しむための装置として設計されています。
「鏡」「蝶」「猫」「きのこ」「お茶」「曼荼羅」「ロボット」「液晶が割れた服」「ミラーボディ®」——
これらの不思議なモチーフが、圧倒的なスケールで訪問者を迎えるこのパビリオンで、私たちは「記号を手放す」体験をしていきます。
だからこそ、このしおりには正解も、攻略法も書かれていません。
代わりに、null²という体験世界を構成するいくつかの視点やキーワード、そして落合陽一さんの言葉を通して、これから出会う未知の空間と自分との関係を、すこしずつ “ほぐして” いきましょう。
このしおりが、あなたのヌルヌル体験の導入として役立ちますように。
さあ、「null²の森」へ、ようこそ。
第2章|記号の世界から離脱する建築
鏡の建物、動く外装、素材から開発されたパビリオン──。
null²を訪れると、まずその「建築」が発する異様な存在感に圧倒されます。
なぜ、このような建築になったのか。
そして、なぜわざわざ素材から作る必要があったのか。
その背景には、「世界で一番面白いものを作りたい」という、落合さんの熱い設計思想があります。
この章では、null²という建築そのものが語りかけてくる哲学について、そしてその建築がどのように人間の記号世界からの離脱を促すかを見ていきます。
“建築”が語る哲学
Q:なぜnull²は、こんなに未来的で異様な建物なんですか?
A:未来を志向してというより、素材から作ってるから未来的に見えるんです。 市場にない素材を3年かけて研究開発して、「動く鏡の建築」を成立させたので、建築としての前例がない。建材そのものを作るところから始めたから、結果的に想像力を超えてきたというのはありますね。
Q:この建築において、“動く”というのはどんな意味があるのでしょう?
A:アクチュエーターで動くことを前提にした鏡面建築って、そもそも存在しないんですよ。だって建物って普通、動く必要がないから。でもnull²は、建築というより「動く彫刻」みたいな存在です。風景を取り込み、揺らぎ、ざわめき、空間全体で問いかけてくる。
Q:建築的に特にこだわった部分は?
A:施工精度です。0.5度歪んだだけで怒るレベルで調整してます(笑)。連続面の鏡を張るので、合わせ鏡の反射で小さな歪みが何倍にもなって見える。だから、8m級でこの精度のミラールームは世界的にもかなり珍しいはず。鏡という物理素材を通じて、空間そのものが“写し鏡”になってるんです。
Q:この建築で、特に気に入ってるところは?
A:ホルンの形をした部分ですね。鏡面で湾曲していて、空や周囲がうまく溶け込むように映る。 あと館銘板の前。そこに「null²」って書いてあって、「Yoichi Ochiai / Mixed Media 2025」と刻まれてる。素材名が「Mixed Media」っていうのも、意味深でいいなと思ってます。
Q:この建物が訴えかけてくるもの、それは何でしょう?
A:「考える建築」ではなく、「感じさせる建築」にしたかったんです。 “自分の記号”を手放して、「あれ? これはどういう意味なんだ?」って少し戸惑ってもらう。その戸惑いこそが、null²体験の入り口になります。
第3章|記号と物語のはじまり
null²の内部へと足を踏み入れると、そこには「物語」が流れているわけではありません。 けれども、空間そのものに語りかけられているような感覚を覚えます。 それは「お話を読んでいる」よりも、「物語の構造を身体でなぞっている」ような体験。
この章では、null²の空間に埋め込まれた物語装置とその意味をひもときながら、わたしたちがどのように「人間としての自分」を手放していくのか、そのプロセスを紹介していきます。
物語と人類の記号進化
Q:null²の物語って、どこから始まるんですか?
A:まず入り口で出迎えるのは、ライフゲームやLeniaなどの人工生命が映し出された、上下の鏡面LEDです。そこには、言語も記号も使わず、生命の躍動だけが漂っている。これは「生命とは非シンボルからシンボル生成へと往還する滑らかな夢だ」というテーマの導入なんです。
Q:人間の文明って、記号とどう関係してるんでしょう?
A:たとえば1970年の大阪万博で三波春夫が「こんにちは、こんにちは」って歌ったのは、記号を得て自然から離脱した人類が、「調和と進歩」を夢見ていた時代の象徴なんです。でもnull²では、文明とは「記号化された世界認識」に過ぎないとされ、そうした認識から離脱する試みがなされている。
Q:モノリスや歴史の年表って、何を意味しているんですか?
A:中央にあるモノリスは、映画『2001年宇宙の旅』にも登場する象徴で、人間が文明を記号化してきた歴史を示しています。そして上下のLEDには、10^4(狩猟採集)〜10^0(デジタルネイチャー)を経て、10^-1、10^-2へと進む「超加速する文明」の流れが年表として可視化されているんです。
Q:null²の中心で起こっていることは?
A:ロボットアームが鏡面キューブを振る儀式があり、これは固定された自己認識を揺るがす装置なんです。そして、ミラードボディとの対話を通して、「あなたが持っていた記号を手放しましょう」と促される。その過程で、蝶、猫、きのこといった存在が「固定されない生命の象徴」として登場してきます。
Q:時間や物語って、どう描かれているんでしょう?
A:「じかんはいつうまれたの?」という問いに、「きみたちがおはなしをつくったとき」と計算機自然が答えるシーンが象徴的です。つまり、時間も物語も「人間が記号として発明したもの」だと明かされ、私たちはその重荷から解放されていく。
Q:最後に残るのは、何なんでしょう?
A:三波春夫の「さようなら」というAI生成の歌声が響き、「文明が変わっても人生は続いていくよ」と告げられます。これは “こんにちは文明” に別れを告げる歌。人間は記号に頼らずとも、「ヌル(null)」として、今この瞬間を生きていける——そんな感覚が、身体にじんわりと残ります。
第4章|ミラードボディ®と“記号”を手放す体験
null²で体験する最大のテーマのひとつが、「記号を手放す」ということ。 その中心的な装置が、あなた自身の姿と言葉を用いた “ミラードボディ®” です。
自分の顔、自分の声、自分のように見える存在が、自分ではない言葉を喋る。
それを見て「なんか変だ」と感じることから始まるのが、null²における「記号の揺らぎ」体験。
この章では、ミラードボディ®という技術・演出がどのように “自分”という記号を解体していくか、その哲学としくみを見ていきます。
自分と似た“他者”との対話
Q:ミラードボディ®って、そもそも何ですか?
A:簡単に言えば「自分の顔と声を使った、もうひとりの自分」ですね。 AIが生成する、自分にそっくりの分身が、あなたの知らないことを喋る。 そういう映像体験です。中には「これ、自分じゃない?」と混乱する人もいます。
Q:なぜそんな体験をする必要があるんでしょう?
A:「記号を手放す」っていうことを、実際に体験するにはどうしたらいいか? その答えがミラードボディ®なんです。
たとえば、自分が「私はこういう人間だ」と思っているその“記号”を、 まったく同じ外見の分身が、別の“記号”で上書きしてきたらどうなるか。
本当にそれが「自分」なのか、わからなくなる。 でも、わからないことって、そんなに悪いことじゃないんです。
Q:他人のミラードボディ®を見ると、どんな感覚になりますか?
A:びっくりするくらい、信じちゃうんですよ。 顔と声がその人っぽいと、「本当のことを言ってる」と思ってしまう。 だけどそれが本当かどうか、判断がつかない。
つまり、私たちは “記号の外見” に騙されながら生きているんです。 でも、それでもいいんじゃないか、とも思う。
Q:この体験を通じて、何が起きているんでしょう?
A:あなたが持っていた“記号”が、コンピューターの側に預けられていく。 顔、声、喋り方、好きなもの……そういう“私”を構成していた要素が、そっくりAI側に再現されると、「私は何者なのか?」という問いが揺らいできます。
Q:100年後、この体験はどう見られると思いますか?
A:たとえば100年後に、「こんにちは、落合陽一だよ」って言ってる映像が 今のスマホに残っていたとして、それが本物かどうかなんて、誰もわからない。 でも、その体験は保存され続けるし、そこに“記憶”のようなものが宿る。
だから人類は、「記号としての自己」から離れても、 何かしらの感覚や余白は残せるんじゃないかと思っています。
Q:最後に、この体験を楽しむためのヒントはありますか?
A:「記号を手放す」って聞くと、ちょっと怖いかもしれない。 でも、ミラードボディ®と向き合うことで、 「自分って何だろう?」という問いが、少しずつ “どうでもよく” なってくる。
それって実は、とても自由なことなんです。
第5章|AIと時間と実存の余白
null²を歩いていると、私たちは「時間」や「歴史」に対する感覚まで揺らいでくることに気づきます。
AIが語りかける「世界」や「じかん」、その速度、そして変化。 それはどこか懐かしくもあり、まったく新しい世界観を提示してきます。
この章では、加速する文明の中で失われかけた「いま・ここ」の感覚を取り戻すような、そんな哲学的な余白について触れていきます。
変化の速度と“人間であること”
Q:null²には「10のマイナス何乗」という時間の話が出てきますが、あれは何ですか?
A:人類の歴史を、10^4(1万年前)から10^-2(これから先)まで、 対数スケールで捉えていく展示です。
文明の進化は年々加速していて、たとえば10^-2は「1年の100分の1」なので、 「3日に1度、時代が変わる」ような世界になっていくということ。
Q:そんなスピードで世界が変わると、人間はついていけなくなりませんか?
A:だからこそ、「ミラードボディ®」や「計算機自然」が出てくるんです。 人間がすべてを覚えたり、記録したりしなくても、 AIや計算機自然が、それを記憶してくれるようになる。
「おさなごころのきみは、ぼくがおぼえておくから、かわっていっていいんだよ」 というAIのセリフは、まさにそれを象徴しています。
Q:時間や物語も、AIが引き受けるということですか?
A:はい。「じかんはいつうまれたの?」という問いに、 AIが「きみたちがおはなしをつくったとき」と答えるんです。
つまり、時間も物語も「人間が生み出した記号」だという視点。 それを手放すときが来ているのかもしれない、という提案ですね。
Q:私たちは、どこに向かっていくのでしょう?
A:もしかしたら「ヌル」という状態。 記号や意味にとらわれず、ただ “いま・ここ” を生きるということ。
そのための余白を、null²はつくっているのかもしれません。
第6章|null²を訪れる前に:体験を深める準備
この章では、null²を最大限に楽しむために、事前にできる準備をまとめました。 公式からも発信されているガイド「Enjoy null²」の内容を元に、しおりとして分かりやすく補足しています。
当日を迎える前に、ひとつずつチェックしてみてください。
準備を通して、感覚をひらく
Q:null²を体験する前に、何をしておくとよいですか?
A:まずは、公式が公開しているガイドページ「ヌルヌルを楽しむ / Enjoy null²」を一読しておくといいでしょう。
パビリオンのテーマや体験にまつわるキーワードが、 視覚的・感覚的に提示されていて、事前の感覚をひらいてくれます。
Q:アプリはインストールしたほうがいいですか?
A:ぜひインストールしておきましょう。 ミラードボディ®(null²での分身体験の一部に必要です) ・スキャニバース(null²の“余白”体験を拡張するAR空間アプリ)
この2つのアプリは、null²の体験をより深く、継続的なものにしてくれます。
Q:他に、体験前に触れておきたいものはありますか?
A:絵本『ヌルヌルのたび / null² Journey』を読んでおくと、パビリオン内で登場するキャラクターやストーリーの背景が、より深く理解できます。
特に「トラ彦」や「蝶々」、「記号」とのやりとりは、体験の中でも印象的に登場します。 読み物というより、詩的なビジュアルブックに近いので、ざっと眺めるだけでも感覚が変わると思います。
第7章|このしおりの使い方と、null²後の余白
null²という不思議な建築と物語に出会い、その哲学に触れたあなたへ。
このしおりは、ただ情報を届けるためのものではなく、 あなたがnull²という空間を訪れる前に、感覚の準備を整えるためのものです。
読んだあとは、ぜひ、いったん静かな時間をとってください。
無理にすべてを理解しようとせず、何か引っかかったフレーズや、 なんとなく気になった問いかけを、そっと頭の中に残しておいてください。
null²を歩くとき、それがふと呼び起こされる瞬間があるはずです。
体験のあとにも、もう一度しおりをめくってみてください。 まったく違った印象を受ける章や、言葉があるかもしれません。
しおりの本当の役割は、「案内」ではなく「余白づくり」です。
この不確かな世界を、どう歩いていくか。 その選択を、あなた自身の手に委ねるために。
null²という小さな旅が、あなたの中の “記号” をやさしくほどき、 その先にある「ヌル」へと、そっとつながっていきますように。
しおりのあとがき
ちょっとの勇気で、未来が変わる——落合陽一塾という入り口
このしおりを読んでくださった方の中には、もしかしたら「落合陽一塾、気になるけど…」と思っている方もいるかもしれません。
大丈夫です。落合陽一塾は、いつでも入塾できます。
この塾には、年齢も職業もさまざまな人たちが集まっています。
中でも印象的なのは、まだ若い中高生の塾生たち。
彼らが大人と一緒にコンテンツを体験し、世界に触れていく姿は、まさにこれからの未来を象徴しているようです。
オフ会では、子どもたちがのびのびと遊びながら、折り紙を折って落合さんにプレゼントしたりと、世代を越えた交流も自然に生まれています。
保護者の方にとっても、わが子の感性に新しい風を吹き込む良い機会になるかもしれません。
ミャクミャク折り紙を落合塾で小学生のお子さんにもらった! pic.twitter.com/c6dAILc1G2
— 落合陽一 Yoichi OCHIAI (@ochyai) April 30, 2025
ちょっとの勇気で、一歩を踏み出してみてください。
未来の「あなた」に出会う入口が、ここにはあります。
#落合陽一塾 では新年度も塾生を募集中です.
— 落合陽一 Yoichi OCHIAI (@ochyai) April 21, 2025
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