フレーム:夫婦の形をつくるもの
社会で頑張るみなさまへ
この記事は、「フレーム(夫婦の枠組み)」についての解説です。フレームで日常生活を見てみると、これまで気にならなかった「ズレ」が見えてくるかもしれません。ぜひ、お試しください。
どうも。こんにちは。
小学4年生から箱ティッシュを持って、学校に登校するほど、花粉症の4月生まれです。うっかり、誕生月が一番嫌いになるところでした。
今回は、「フレーム(夫婦の枠組み)」という考え方を紹介します。これは、夫婦などの関係性を整えるための重要な概念です。
聞きなじみのないものですが、
・「フレーム」とは何か?
・なぜ必要となるのか?
・実際にどんなものなのか?
をお話ししますので、さまざまな場面で活用してみてください。
はじめに:おさらい
これまでの投稿は、
・夫婦がすれ違う構造
・個人要素【価値観・スキーマ・自己状態・認知】の影響
・個人の改善方法(構造化の実践)
について説明してきました。

実際に読んで頂いている方は感じているかもしれませんが、内容的には「基礎知識」であって、実際の夫婦関係において、「何を・どのように・どうやっていくのか」が、見えにくい内容だったと感じています。
ですので、これからは、実際の関係性を整えていく、「フレーム」という概念を説明していきたいと思います。
解説①:フレームとは何か?
フレームとは、
目標・方向性・意味付け・判断基準などを、
関係性を築くために必要な形(フレーム)に、
夫婦で調整しながら作っていく、
または作ってきた集合体もしくは集積体
と考えています。
解説②:フレームを構成する要素
フレームとして扱う内容(構成要素)は、主に以下の4つです。
目標:夫婦で設定する「通過点やゴール地点」
方向性:目標などを目指す際の「姿勢や取り組み、行動指針」
意味付け:事象をどのように意味付けするかという「見方や解釈」
判断基準:事象を判断するときの「ルールや基準」
これらの4要素を、
夫婦で構築していくこと、
夫婦で修正していくことが、
重要なプロセスだと整理しています。
私のなかでは、「地図」でイメージしています。
つまり、
目標は、地図上にある「通過点や終着点」
方向性は、次の点までの進み方や進む方法
意味付けは、地図全体を「どのように捉えるか」を決めるフィルター
判断基準は、迷いそうなときに「こっちにしよう」と判断するルール
です。
このように、フレームは、
夫婦が地図を見ながら、
どこを目指し、
どう進み、
起きたことをどう捉えて、
どう判断するか、
を支える枠組みだと考えています。
解説③:フレームがなぜ必要なのか?
では、なぜ「フレーム」が必要なのかを説明していきます。少し小難しい話になりますので、詳しく知りたい方は1.~3.をご覧ください。
結論だけお伝えすると、現代の夫婦関係は、生き方や価値観の選択肢が増えたことで、「空気感だけで維持できるほど単純ではなくなっている」ため、関係性を整えるための「フレーム」が必要だと整理しています。
1.世界が「より自由で、より複雑」になった
現在の社会では、さまざまな技術革新によって、「時間」や「距離」の感覚が変わってきています。インターネットの普及やX・InstagramなどのSNSの発展によって、私たちは時間や距離をほとんど意識せずに、世界中の人々とつながり、情報に触れられるようになりました。その結果、人々はさまざまな生き方や働き方を知り、自由に選択できるようになっています。
しかし、この自由の広がりは、「複雑さ」の裏返しでもあります。世界中の考え方や価値観に触れられるようになった分だけ、「当たり前」や「普通」の数も増えていくからです。そして、「普通」の数が増えるほど、それぞれの前提や判断基準を調整する必要も増えていきます。
その結果として、世界は以前よりも「複雑に重なり合うもの」へと変化していきました。
2.日本の夫婦の関係構築は「置き去り」に
このような劇的な変化が世界規模で起こるなかで、日本の夫婦関係は、旧来からある「空気感」や「家族観」によって、十分に調整されないまま残されてきたように感じています。日本の歴史を振り返ると、親子三世代で暮らしていた生活様式は、高度経済成長をきっかけに変化し、都心への出稼ぎや核家族化が進みました。その後も、世界情勢や政府の方針、技術革新などによって、共働き、在宅勤務、AIの普及など、働き方や生活の形は変わり続けています。
一方で、日本の夫婦関係や家族観については、「うちはうち、よそはよそ」「我慢することが美徳」といった従来の考え方が、思考の様式として残っています。そして、その考えを調整・更新していくことは、それぞれの家族に委ねられてきました。
その結果として、夫婦の役割や価値観、関係性そのものを、社会全体で調整・更新していく仕組みや風土は、十分に育ってこなかったのです。
つまり、「家族のことは家族で解決する」という非言語的な「空気感」や、古くからある生活様式的な「家族観」だけで生きていけるほど、現代の夫婦は単純な世界や環境には置かれていないということです。このように、本来なら素晴らしいはずの「空気感」や「家族観」が、現在においては、夫婦関係の弱みとして表れてしまっているのです。
3.多様化する生き方や考え方を調整する「フレーム」が必要
夫婦という組織が、この複雑で自由な世界を乗り越えるために必要なものは、ここまで述べてきた「フレーム」です。
つまり、これまであった「空気感」や「家族観」に頼ること無く、「フレーム」という考え方を通して、新たな「家族観」や「行動様式」を構築していくことが重要だと考えています。
実例:ズレってどんなもの?
ここまでで、
「フレームとは何か?」
「なぜ必要か?」
を整理してきました。
では次に、「実際にフレームがないと、どんなズレが起こるのか。」を実例からみてみましょう。夫婦のズレにはさまざまな形がありますが、今回はイメージしやすいものから順に見ていきます。
① 幸せに生きる
「幸せに生きる」のような抽象的な言葉は、夫婦の間でズレが生まれやすいテーマです。
例えば、
夫にとっての幸せ:自分の趣味に没頭すること
妻にとっての幸せ:さまざまな場所で家族とその経験を共有すること
というように、同じ「幸せ」でも中身が違うことがあります。
さらに、こうした考えは自己状態によっても変化します。例えば、夫の仕事が忙しくなり、精神的にも身体的にも疲れているときには、「家でゆっくり何もしない時間を作って癒されたい」が、その時の幸せになるかもしれません。
このように、「幸せに生きる」という抽象的なテーマには、
・夫婦で考え方が違う可能性がある
・その人の自己状態によって一時的に変わる可能性もある
という特徴があります。だからこそ、夫婦の生き方を二人で言葉にし、その時々の状況に応じて何を優先するのかをすり合わせ、必要に応じて更新していくことが大切です。
なお、こういった目標のようなテーマについては、過去に投稿した実践編
「【実践】夫婦の価値観をみつける方法」
で実際に言葉にすることもおすすめです。嬉しい時・悲しい時・辛い時にどうしてほしいか聞き合うことが、フレーム作りの第一歩として参考になると思います。
② ○○をやっておいて
「○○をやっておいて」のような言葉は、夫婦の間でズレが生まれやすいテーマです。この言葉は、「洗濯をしておいて」や「掃除をやっておいて」のように、要点を簡潔に伝えられる言葉です。しかしその一方で、
「どこまで」
「どのレベルで」
「いつまでに」
といった前提が含まれていないため、解釈のズレが生まれやすい言葉でもあります。たとえば、夕食後に「食器を洗っておいて」と依頼した場合、
依頼した側は、
・手洗いするものはしっかり洗剤で洗う
・食洗機に入れる前に、ある程度汚れを落とす
・洗い終わったら、シンクの水気も軽く拭く
・生ごみ入れもまとめておく
ところまでを想定しているかもしれません。
一方で、頼まれた側は、
・皿を食洗機に入れる
・大きなゴミだけ取っておく
ところまでを「やった」と考えているかもしれません。
この場合、どちらも「食器を洗った」つもりですが、想定している作業内容には差が生まれています。つまり、「○○をやっておいて」という言葉は、作業を依頼しているようで、相手に解釈を委ねている言葉でもあるのです。このズレは、「やる気がない」や「雑な性格」というよりも、
・何をもって完了となるのか
・どの程度を求めているのか
・どこまでを一連の作業としているか
といった意味付けや判断基準が、夫婦の間で共有されていないことが要因です。だからこそ、こうした日常的な作業ほど「言わなくても分かるはず」とせず、
「伝え方が雑でごめんね。私のなかでは、食器を洗うことに、シンクや生ごみ入れまできれいにすることも含めているんだけど、どうかな?できそうかな?」
といった形で、夫婦の間で共通の意味付けや基準を作るのが大切です。
③話し合う
「話し合い」は、夫婦関係だけでなく人間関係においても大切だと言われています。しかし実際には、しんどいものになっている夫婦も少なくない印象です。その理由の一つが、「夫婦の話し合い自体が徐々に壊れていく」ということです。
先程の食器洗いを例に挙げましょう。食器洗いについて、夫婦の間で意味付けや判断基準にズレが起きていました。そうすると、依頼者は「まだ終わっていない」と感じ、実施者は「やった」つもりになります。このズレが話し合いによって不満として表れると、
依頼者は「なんでちゃんとやらないのか。」
を伝えて、
実施者は「ちゃんとやったのに。」
と黙り込んでしまうような状態になります。
このようなやり取りが積み重なると、夫婦の間には、
・どうせ言っても伝わらない
・もう自分でやった方が早い
・やったのに文句を言われた
といった負の感情だけが残ります。
その結果、夫婦のコミュニケーション、ここでは「話し合い」そのものが、負の感情から始まるようになります。
つまり、片方は「夫婦をより良くするために話し合いたい」と思っていても、もう片方は「また何か怒られる。」「また伝わらない。」と身構えるようになっていきます。こうして、二人の「話し合い」という場は、「夫婦の前向きな調整の場」から、何を言っても受け止めてもらえない辛い場所や、ただ言われることに耐える時間へと変わっていきます。
このように、同じ相手とのやり取りの中で、ストレスや疑心暗鬼が繰り返されると、人はその人との会話に対して身構えるようになります。これも、関係性の中で作られていくひとつの行動様式です。
だからこそ、夫婦では、話し合いとは、
「夫婦にとって寄り添うこと」
「パートナーと笑顔で生きるための時間」
「あなたを非難する会ではない」
といったフレームを作ることが何よりも大切です。
④その他起こりやすいズレ
この他にも、夫婦の間では次のようなテーマでズレが起こりやすいです。
子供へのかかわり方:夫婦それぞれで親にされたことが違うことから、自分の子供に対して「どこまで見守るのか/どこで止めるのか」のズレが起こりやすい。
お金の使い方:何にお金を使うのか、また、お金を使うためにどのような生活をしていきたいのかといった生活基準でズレが起こりやすい。
見えない家事:「家事は見えないものが沢山あって大変だ」と捉えられる人と、「家事はただやるだけだから簡単だ」と捉えている人で家庭での行動にズレが起こりやすい。
人との距離感:親・義実家・友人・職場との付き合い方について、どこまで関わるのか、また、その場面でパートナーにどのように支えてほしいのかでズレが起こりやすい。
このように、一緒に生活を始めると、あらゆる項目が「ズレ」の対象になります。そして、それはストレスの原因にもなり得ます。だからこそ、こうしたズレが見えてきた段階でフレーム化していくことに意味があると考えています。
考察①:「ズレ」の社会的背景
ここからは少し視点を上げて、「ズレ」の背景にある社会的な影響について考えてみます。私たちは、資本主義や個人主義のなかで生きていくために、【競争・効率化・合理化・損得】といった「無意識の思考」を、日常でコツコツと当たり前のように身につけていきます。こうした考え方は、今の社会を生き抜くためには大切です。ただ、それが夫婦関係にも自然と現れることで、関係性に少しずつ影響を与えていきます。
たとえば、
・共働きによって、家庭の運用そのものが大変になる
・男性は仕事、女性は家事という考え方が実態として引き継がれている
・効率や合理化を重視する考え方が「できないことは悪いこと」という見方につながる
といったことが起こります。
こうした考え方があると、実例③でも紹介した通り、夫婦に必要な話し合いという場所が、「辛い場所」に変わっていき、少しずつ、「言わない・我慢する・閉じる」といった閉じた関係に変化していきます。
さらに夫婦には、夫婦関係そのものだけでなく、出産・育児・お金・仕事など、さまざまな出来事が重なります。こうした出来事は、夫婦関係よりも緊急性や重要度が高く見えやすいため、夫婦のズレは後回しにされがちです。
その結果、整理されないズレや不満が少しずつ蓄積していきます。これが、関係が壊れていく一般的なメカニズムなのかもしれません。
つまり、夫婦のズレは、二人の性格や努力不足だけの問題ではありません。現代の社会構造のなかで育ってきた「無意識の思考」が、家庭という場面で、そのまま使われることが大きな要因なのです。
考察②:フレームで実現できること
では、フレームを構築すると、夫婦はどのように変わっていくのでしょうか。まず、一番大切なことは、相手との違いに触れて違いを知るということです。
そもそも夫婦とは、同じではなく、違うものを持った二人です。この前提に立たなければ、お互いを許容することは難しくなります。だからこそ、この「違いに触れるプロセス」そのものが大切です。
違いを知れば知るほど、「どちらが正しいか」ではなく「この違いをどう運用していくか」を考える方向へ変わっていきます。
こうした運用のなかで、まず育っていくのが、個人の主体性や自主性です。「家族の一員として、自分は何をすればよいのか」が少しずつ見えてくるからです。すると、ただ言われたことをこなすのではなく、相談しながら行動することが増えてきます。
また、「夫婦は違っていてもよい」という前提で話し合いを続けた経験は、家族と過ごす場所を少しずつ居心地の良い空間に変えていきます。そして、夫婦のあいだに、その二人に合った「空気感」が育っていきます。毎回すべてを言葉にしなくても、「自分はこうするだろうけれど、相手はこう考えるかもしれない」と想像しながら動けるようになるのです。
つまり、夫婦の違いを受け入れて運用していくことが重要で、その副産物として、個人の主体性や自主性、居心地の良い空間、そして夫婦の空気感が育っていくのだと思います。
解説③で触れた「空気感だけでは維持できなかったもの」が、夫婦のあいだでフレームを作り続けることによって、「空気感で動ける関係」へと変わっていくのです。
そういった意味では、日本人の空気感や家族観が関係性を止めていたのではありません。夫婦の実態に合った空気感、つまり、目的・方向性・意味付け・判断基準が共有された空気感が、まだつくられていなかったのです。
まとめ:フレームとは?
いかがだったでしょうか。今回は、夫婦にとって大切な概念である「フレーム」について整理しました。フレームとは、一言で言うと、
お互いの違いを許容しながら、
「ここにいていいんだ」
と思える関係をつくるもの
だと考えています。
ですので、フレームは自然にできるものではありませんし、単にルールを増やすことでも、自分の意見を曲げることでもありません。また、運用の過程で戸惑ったり、驚いたり、うまくいかないこともたくさん経験しますが、すべて「夫婦は違う生き物。だからこそ、違うことを前提に関係性を作る。」という経験が積み重なっていくものだとご理解いただければ幸いです。
二人が「それでやってみよう」と思えるフレーム(夫婦の枠組み)を一緒に作ってみてください。
以上です。
ありがとうございました。
