魂の旅支度
いつか私たちは、
この世で集めたものを
ひとつ残らず置いていきます。
お気に入りの椅子も、
大切にしまっていた服も、
いつか使うかもしれないと残した箱の中身も。
持っていけるのは、
どれだけ所有したかではなく、
どれだけ愛し、どれだけ赦し、
どんな心で日々を生きたかだけなのかもしれません。
人は暮らしているだけで、
知らず知らずのうちに荷物を増やします。
部屋の隅に積もるもの。
押し入れに眠るもの。
そして、胸の奥にしまい込んだままの思い出や後悔。
けれど、それらをすべて抱えたままでは、
魂の歩みは少し重くなってしまいます。
手放すことは、冷たいことではありません。
忘れることでも、捨てることでもありません。
「ありがとう」と言って、
役目を終えたものを光へ返すこと。
それは、残される誰かへの思いやりであり、
未来の自分へのやさしさでもあります。
人生の終わりに向かう準備は、
寂しいものではなく、
本当に大切なものを見つけ直す静かな時間です。
少しずつでいいのです。
今日は引き出しをひとつ。
明日は心の痛みをひとつ。
そうして身軽になった場所に、
新しい風が入ってきます。
魂は、本当はとても軽いもの。
だからこそ私たちは、
大切なものだけを胸に抱いて、
いつか光の方へ歩いていくのでしょう。
