実はここまでできるCoworkハンズオン — Claude Codeに行く、その前に を経て
2026年4月28日に、メルカリオフィスで「Coworkハンズオン — 実はここまでできる(Claude Codeに行く、その前に)」を開催しました。
今回は、ハヤカワ五味さんとExplazaの共催で、Claude Coworkを使いながら、実務に近い成果物を作るところまで試すハンズオンでした。
ただ、終わってみて改めて思うのは、これは単に「Coworkの使い方を覚える会」ではなかったな、ということです。
むしろ大事なのは、AIと一緒に業務を進めながら、自分の中にある曖昧な業務を言語化し、次も同じように再現できる状態まで持っていくことなのかなと思います。
AIツールはどんどん変わります。
ChatGPT、Gemini、Claude、Codex、Claude Code、Copilot Coworkなど、選択肢も役割もかなり速い速度で変化しています。
なので「今の正解のツール」を覚えるだけだと、半年後にはまた別の正解を追いかけることになります。

一方で、どのツールを使うとしても変わりにくいものがあります。
それは、自分が何をしたいのか、どの業務でAIに伴走してもらいたいのか、どこまでをAIに進めてもらい、どこから人間が確認するのかを言語化する力です。
今回のCoworkハンズオンは、そこを改めて再確認する場になったかなと思います。
今回は教材もこちらに置いておきますので、色々ご活用いただけたらと思います。
なぜ「Claude Codeに行く、その前に」なのか
Claude Codeは、とても強力なエージェントツールです。ローカルファイルを編集でき、コマンドを実行でき、Git操作やMCP連携まで扱えます。実際、開発寄りの業務に限らず、あらゆる業務に適用できるエージェントツールの最有力な選択肢になってきています。
ただし、強い権限を持つツールは、そのまま業務に入れると、考えておくべきことも増えます。どのファイルまで触ってよいのか、社外秘情報や顧客情報をどう扱うのか、意図しない変更が起きたときにどう説明するのか。特に非エンジニアを含む組織展開では、便利さだけではなく、権限設定や運用の説明が必要になります。
今回あえて「Claude Codeに行く、その前に」と置いたのは、Code系のツールを否定したいからではありません。
むしろ逆で、強力なツールに進む前に、まずはAIと一緒に業務を進め、どこまで任せられるのか、どこで人間が見ればよいのかを整理しておいた方がいい、という考えがあるからです。
Coworkは、調査、整理、文章作成、ファイル保存、Skill化、スケジュール登録といった業務寄りの作業を、比較的わかりやすい入口から試せます。Connectorを使えばGmail、Calendar、Drive、Slack、Teams、Notionなどとも接続できますし、必要な範囲だけ接続して進めることもできます。
つまりCoworkは、いきなり開発環境に入る前に、AIと一緒に業務を整理し、言語化し、再現性を持たせるための入口としてちょうどよいのです。
Coworkで見たいのは、機能一覧ではなく「業務の渡し方」
今回は、Coworkの機能としてConnector、CoworkのSkill、スケジュール登録、Live Artifactsの考え方にも触れました。
ただ、機能名だけを覚えてもあまり意味がありません。
大事なのは、それぞれの機能が業務のどの場面に対応しているかです。
Connectorは、外部サービスの情報をAIに渡すための入口です。たとえばカレンダー、メール、ドライブ、Notionなどにある情報を、必要な範囲で参照できるようにします。
CoworkのSkillは、一度うまくいった手順を再利用できる形に残すためのものです。毎回プロンプトを思い出して書くのではなく、「この業務はこの流れで進める」という形に固定できます。
スケジュール登録は、決まったタイミングで同じ業務を実行するための仕組みです。毎朝のニュース整理、週次振り返り、定例前の情報収集など、繰り返し発生する業務と相性がよいです。
Live Artifactsは、自分のコネクタ先の情報をダッシュボードのように見える形へ整理する考え方として扱いました。単なる一回のチャットではなく、業務で使う情報の置き場を作る行為に近いと思っています。
こうして改めて見ると、Coworkは「AIに質問するツール」というより、AIと一緒に業務を進めながら、その流れを再現可能な形へ整えていくためのエージェントツールだと一層理解できますね。

セットアップでやっていたのは、AIに前提を渡すということ
ハンズオンの前半では、配布フォルダをダウンロードし、Coworkでそのフォルダを開き、必要に応じてConnectorを接続し、persona.mdを整える流れを入れました。
一見するとただの準備ですが、ここはかなり重要なポイントです。
AIに業務を手伝ってもらうとき、AIは最初からあなたのことを知っているわけではありません。自分の役割、普段作っている成果物、好む文体、避けたい表現、どのくらいの長さで出してほしいか。そういう前提がないまま依頼すると、どうしても一般論っぽい出力になります。
今回はpersona.mdを作り、その前提を渡すという体験設計も作ってみています。
たとえば同じ「調査して」でも、自分用メモなのか、上司に出す報告なのか、社外向けの説明なのかで、出力の粒度は変わります。AIが毎回そこを質問してくれてもよいのですが、よく使う前提は先に渡しておいた方が、会話がかなりスムーズになります。
これはプロンプトの小手先の話ではなく、自分の業務をどうAIに伝え、どう伴走してもらうかという話につながります。

Web検索を「一回の調査」で終わらせない
ハンズオンでは、まず全員が入りやすい共通入口として、リサーチの定型化を題材に置きました。
この題材は、Web検索だけで進められる調査です。Connectorがなくても進められるので、参加者全員が同じ入口から始められます。
ただし、ここでやりたかったのは、単にWeb検索をして要約を作ることではありません。
流れとしては、まずテーマを決めます。たとえば「毎日のAIニュース」などです。次に、切り口、時間軸、深さ、読み手、出力形式、文字数、矛盾点の扱い、保存先を決めます。
ここがかなり大事なポイントです。
「AIニュースを調べて」とだけ言うと、AIはそれっぽく調べて、それっぽくまとめてくれます。でも、その出力が自分の業務で使えるかどうかは別です。市場の動きを見たいのか、プロダクトのリリースを見たいのか、投資や競合観点で見たいのか、PMとして実務への影響を知りたいのかで、必要な調査は変わります。
今回のハンズオンでは、検索前にその観点をCoworkと合意する流れにしました。ここで「何を調べるか」だけでなく、「何のために調べるのか」「どの粒度なら自分の業務で使えるのか」を一緒に決めていきます。
これは地味ですが、AI活用では本質的な思考となります。良い出力を得るために必要なのは、すごいプロンプトの魔法というより、「何をどう見たいか」というWhy、Whatのような観点をAIと一緒に決めていくことなのだと思います。

コンテキストの場所こそが、業務の運用に直結する
この題材では、成果物の保存先を3つから選ぶ設計にしました。
ローカルmdに保存する、Notion DBに保存する、Google Driveに保存する。この3パターンです。
一回きりの調査であれば、どこに保存してもそこまで大きな違いはないかもしれません。でも、これをCoworkのSkillにして、スケジュール登録まで進めるとなると話が変わります。
保存先を選ぶことは、今後その業務の情報をどこに蓄積するかを決めるということです。
毎日のAIニュースをローカルmdに貯めるのか、Notion DBに日付つきで追加していくのか、Google Driveでチーム共有しやすい形にするのか。保存先が決まると、業務の運用もかなり具体的に固まってきますし、その設計に合わせて、今後のSkill構成も決まってきます。
ここまで来ると、Web検索は単なる検索ではなくなります。
「テーマを決める」「観点を決める」「検索する」「整形する」「保存する」「改善する」という一連の業務になります。
CoworkのSkill化は、棚卸しした業務をエージェントに委譲するということ
個人的には、ここが一番大事にしたい且つ伝えたいポイントでした。会話がうまくいったその瞬間よりも、それを次も安定して使える形に残せるかどうかで、業務の中で活かせるかどうかが変わるからです。
一度うまくいったWeb検索の流れを、その場限りで終わらせず、CoworkのSkillとして残すことです。
AIとの会話は、放っておくとすぐに流れて忘れていきます。たまたま良い出力が出た、たまたま良い観点で整理できた、たまたま保存までうまくいった。でも次に同じことをやろうとすると、何をどう頼んだのか思い出せないことがよくあります。
だから、生成結果が良かった会話は、再現性を担保するために言語化した方がいいですよね。
CoworkのSkillでは、テーマ入力、観点合意、Web検索、出典確認、出力整形、保存先への書き込みといった流れを、SKILL.mdとして残せます。次回からは、その手順を呼び出して同じ業務を再現できます。
これは「プロンプトを保存する」というより、「業務の型を保存する」に近いです。自分が毎回なんとなくやっていた判断や手順を、AIと一緒に再現できる状態にしていくイメージです。
自分が何を確認したいのか、どの順番で進めたいのか、どこで人間が確認するのか。その手順が言語化できていると、AIに任せられる範囲が一気に広がります。
スケジュール登録まで進めると、業務が一段変わる
さらにStep 6では、作ったCoworkのSkillをスケジュール登録するところまで扱いました。
たとえば、毎週月曜9時にAIニュースを調べて、指定した保存先に出す。毎週金曜17時にカレンダーを見て週次振り返りを作る。毎朝7時にTodoを整理する。
こうした繰り返し業務は、毎回「やらなきゃ」と思い出して依頼するだけでも負荷があります。
スケジュール登録は、毎回人が入力するという部分を減らすことができる仕組みです。もちろん、すべてを確認なしに任せるという意味ではありません。送信、削除、上書き、外部共有のように影響が大きい操作は、人が確認する前提で設計が必要です。
ここで大事なのは、AIに判断を丸投げすることではなく、繰り返し発生する情報収集、整理、下書き、保存のような業務ではAIに伴走してもらい、人間は確認と意思決定に時間を使えるようになることです。
Coworkは、Claude Codeの代わりではなく、前段に置ける入口
今回のイベント名には「Claude Codeに行く、その前に」と入れました。
これは、Coworkだけ使えばよいという意味ではありません。
Claude Codeが必要な場面は当然あります。コードを書き換える、Gitで差分を見る、CLIで検証する、ローカルの複数ファイルを扱う。そういう場面ではClaude Codeの方が有効なことが多いでしょう。
一方で、すべての業務を最初からClaude Codeで行う必要があるわけでもありません。
業務メモを整理する、調査結果をまとめる、NotionやDriveに残す、SlackやGmailの文脈を読みながら下書きを作る、毎週の振り返りを作る。こうした業務では、まずCoworkで十分に試せることが多いです。
そして、Coworkで業務の流れを言語化し、CoworkのSkill化を行い、Scheduleまで通してみると、「これはCoworkで足りる」「これはClaude Codeに進んだ方がよい」という判断もしやすくなります。
ツール選びの前に、業務の形が見えてくるからです。
終わってみて思ったこと
今回のハンズオンで扱ったものは、Coworkの操作方法でありながら、実際にもっと大事だったのは、より手前にあるものの話だと思っています。
AIと一緒に業務を進めながら、自分の業務をAIに渡せる粒度で言語化すること。
良かった会話をCoworkのSkillとして固定し、次も同じように使える状態にすること。
決まったタイミングで実行できるようにScheduleへつなげ、再現性を持たせること。
この3つがそろうと、AI活用は「その場で便利に使う」から「業務の中で活用できる」ものに変わっていきます。
もちろん、最初から完璧にできる必要はありません。むしろ最初は、AIにどう頼めばいいかわからない、保存先をどこにすればいいかわからない、どこまで自動化してよいかわからない、という状態で自然だと思います。
最初は小さな業務から始めてみてください。
毎日のAIニュースでも、週次振り返りでも、Todo整理でも、メールの下書きでも構いません。自分の中で何となくやっている業務を一つ選び、それをAIと一緒に言語化してみる。うまくいったらCoworkのSkillにして、必要ならスケジュール登録まで持っていく。
それができると、AIツールの見え方がかなり変わります。
「どのAIが賢いか」だけではなく、「自分の業務をどこまでAIと一緒に進められる形にできているか」が見えてくるからです。
今回のCoworkハンズオンは、その入口としてかなり良い題材だったなと思っています。
