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【日本一周 九州編47】 国立公園にある絶景露天風呂

・メンバー

明石、尾道

・星生温泉の白昼夢  明石

 馬刺しでややお腹の満たされた僕たちは、阿蘇からくじゅう連山にかけての金色の野原をするりするりとドライブしていった。


阿蘇くじゅう国立公園


 やがて、長者原の街へ辿りつくと、自然豊かな街へ出店した野生のモンベルや歳を重ねるごとに楽しいビジターセンターを訪れ、なんとなくチェックポイントをまわった気になった。


 しかし、阿蘇くじゅう国立公園の看板とそれぞれ写真を撮りながら、「観光とはこんなものでよいのだろうか」という疑念が湧いてきた。

 いま僕たちは日本昔ばなしのように素朴で豊かな山々にかこまれた国立公園にいる。でも、時間の関係から、ビジターセンターで紹介された動植物を見るために山へわけ入ることはできない。

 とはいえ、この稀有な空間を人工的な観光の骨組みを押さえただけで満足して立ち去るのは、旅があまりに形骸化していやしないだろうか。


野生のmont-bell


 そして、なんとはなしにGoogleマップを眺めると「星生温泉」の文字が飛びこんできた。写真を見ると、360°美しい山々を見渡せる露天風呂が表示され、一目惚れした僕たちはすぐさまそこへ向かった。


 温泉こそ人工的観光の代表のような気がしなくもないが、旅も終盤で疲れの色の濃い僕たちはそんな矛盾に気づける視野でなく、無我夢中で日帰り入浴の手続きを済ませた。



 星生温泉は九重星生ホテルの施設だった。チェックイン時間を迎える前のロビーにはがらんとした心地いい倦怠が充満していて、フロントの従業員も突然の来訪者に驚いているようだった。


 しかし、瞳に温泉の二文字が焼きついた一行は特に気に留めずにお金を支払うと、大浴場まで蟻の巣のようにのびた半地下の廊下をずんずん進んでいった。


 廊下の壁には阿蘇くじゅう国立公園の自然をとらえた大判写真が展示されており、トラディショナルな宿の雰囲気を醸していた。

 やがて「男」ののれんをくぐると、脱衣所のかごの様相から貸切であることを悟り、僕たちは喜び勇んで露天風呂へと向かった。


九重星生ホテル 公式YouTubeより


 青い空に金色の山々というウクライナ国旗のような絶景に囲まれた露天風呂はとんでもない広さだった。

 幾何学的な打たせ湯や屋根つきの桶風呂、岩風呂、水風呂、泡風呂と、はじめは心の赴くまま気になるお風呂をそれぞれ自由に楽しんでいたが、浴場が広すぎるためにやがて互いのすがたが見えなくなった。


 すると、ふいに底知れぬ不安に襲われ、「おーい」と呼んでみた。しかし、声は虚空に散るばかりで尾道のすがたは見えない。青空には雀が二羽飛んでいる。打たせ湯の水音だけが響いている。

 "もしかしたら尾道は浴場庭園の片隅に吸いこまれてしまったのかもしれない"

 まさかとは思いつつも、白昼の野山には神隠しが起きても気にかけなさそうなおおらかさがある。不安に駆られた僕は浴槽を飛び出し、尾道を捜した。


九重星生ホテル 公式YouTubeより


 しかし、岩風呂の裏手にまわると、いともたやすく桶風呂にたゆたう彼を見つけた。

 あっさり見つかったことに拍子ぬけしつつも一度波打った心の肌はすぐには戻らず、僕も桶風呂に入ってともに山々を仰ぎ、そのまま平日の昼を漂った。

次の記事は来週の金曜日に投稿します!


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