「第三の投資の流れ」をつくる
先日、鎌倉投信が提供するラジオ・ポッドキャスト番組「Finding the GOOD」に登壇いただいたクルミドコーヒーの店主 影山知明さんの対談イベントが、地元で朝ごはんがおいしいと評判のお店「コバカバ」で開催され、参加してきました。
対談は、影山さんの著書「大きなシステムと小さなファンタジー」(クルミド出版)の根っこにある問い、目的や目標、成果(リザルト)を定義して最短距離でたどり着こうとするリザルトパラダイムに絡めとられるのではなく「一人ひとりの命が輝く生き方、それができる社会のあり方」を考える内容でした。
私が日頃携わっている投資や資産運用の観点でいえば、「国のGDPを最大化する」「会社の利益を最大化する」「個人のお金を効率的にふやす」など、お金をふやすことが共通目的化しやすい市場経済の大きなシステムの延長線上に、本当の意味で、豊かな社会や人の幸福はあるか、という問いに置き換えられるテーマでした。
そして、その問いに対する私の解は、「第三のお金の流れを太くする」です。
1. 鎌倉投信創業の想い
グローバルに広がった市場経済の下で、世界の経済規模や金融市場は右肩上がりで膨らみ、お金で計る富は全体としてみればふえています。しかし、その一方で、気候変動は年を追うごとに身近に感じるようになり、世界に目を向ければ、あちらこちらで分断が生まれ、連鎖的に起きる戦争に歯止めが効かない状態になりつつあります。
日本においては、少子化や高齢化、地域が抱える課題など、多くの社会課題に直面しています。こうした中で、企業活動、それを支える金融や投資も、環境や社会の持続性を無視しては成り立たない状況になっています。
私が、資産運用や投資を通じて経済や社会の潮流を観てきた中で、これからの投資には、インデックスでもアクティブでもない、第三の投資の流れが求められると感じる理由がここにあります。
2. 「直販」への想いの原点
鎌倉投信は、このような課題に挑戦しようと、2008年11月、リーマンショックの直後で世界の金融・経済が大混乱の真っ只中に設立しました。その当時は、もちろんSDGsやESGという言葉もなく、「会社は株主のモノ」という株主資本主義の考え方がまだまだ色濃い時代でした。
「いかに効率的にお金をふやすか」が、資産運用の常識とされてきた中で、鎌倉投信は、インデックスでもアクティブでもない、「社会的目線」や「自分らしさ」といった軸を持つ「第三の投資」のあり方を目指してきたといってもいいでしょう。
このような想いで設定した投資信託「結い 2101(ゆいにいいちぜろいち)」は、2010年3月に運用を開始し、今年の3月末で丸15年が経ちました。本当にあっという間です。
この間、「調和を生む『和』の心を大切にし、『話』と出会い、『輪』がつながる、こうした3つの『わ』が育まれる『場』としての運用会社でありたい。」という「会社の志(経営理念)」を大切にしてきました。
「場」とは、つながりであり、縁です。
顔の見える信頼に根差したより善いお金の循環を生み、「いい社会」「いい未来」をつくる投資のつながりを謳ったもので、鎌倉投信の想いの原点です。
また、いかなる状況においても、「投資は“まごころ”であり 金融は“まごころ”の循環である」という投資哲学、「事業性と社会性を兼ね備える『いい会社』に投資する。」という「結い 2101」の運用方針をぶらすことなく実践してきました。
そして、その魅力や価値をしっかりと伝え続けてお客様との信頼関係を築くために、お客様と直接対話にこだわり、「直販」のみで販売をおこなってきました。そして、昨日公表したとおり、直販から一歩踏み出し、7月1日から楽天証券で「結い 2101」の取り扱いを始めることにしました。
楽天証券における「結い 2101」の取り扱い開始について
https://www.kamakuraim.jp/news/detail/---id-2120.html
3. 直販から一歩踏み出す理由
これからも、お客様との直接対話を大切にするという基本的な姿勢が変わることはありませんが、一歩踏み出すことにした背景について、お伝えしようと思います。大きくは、次の三つです。
まずは、鎌倉投信の志に謳う「わ」を広げ、「結い 2101」を発展・成長させ、ひいては「いい会社」を応援して「いい社会」「いい未来」をつくる第三のお金の流れをより太くするためです。
次に、その可能性を広げる際には、価値観を共有できる販売パートナーの存在はとても重要です。楽天証券は、鎌倉投信に対して、長年にわたり敬意をもって接してくださいました。その過程において、個人投資家の健全な資産形成にいかに貢献するか、といった対話を何度も重ねて目線を合わせ、鎌倉投信の創業の想いである、「受益者との顔の見える関係づくりを通して、直接信頼関係を築くことに協力する」意向を示してくれたことは大きな転機になりました。
最後に、個人投資家の中に長期投資の考えが徐々に広まる中で、ネット証券経由で「結い 2101」を購入したいというお客様の声がふえていることも背景の一つです。
今後、直販と全く同じ、とはいきませんが、楽天証券経由で「結い 2101」に投資いただくお客様との対話の「場」も可能な限りつくります。こうして新たに仲間に加わってくださるお客様との関係が、直販で築いてきたお客様との信頼関係にどこまで迫れるか、その一方で、直販の受益者の皆様との関係性をいかに進化させるかは、新たな挑戦です。
4. 鎌倉投信のこれからの挑戦
一方で、あまたある投資信託や有価証券を扱う販売会社での取り扱いは、運用会社としての実力、「結い 2101」の魅力を際立たせることなしに、広がりが生まれることはありません。
その実現のためには、何にもまして、運用の力を蓄え、「結い 2101」をより魅力的な投資信託に磨いていくことが重要です。例えば、「いい会社」とは何か、そうした会社が持つ要素は何か、を問い続けてきた中で、ただ長期で保有し続けるだけではなく、より厳選した投資先選びと「いい会社」をより力強く応援できる対話力を磨くと同時に、その魅力をしっかりと投資家の皆様に届けることが求められるでしょう。
また、「結い 2101」設定当初から持ち続けてきた、値下がりの不安を抑制してお客様に安心して長く保有いただける収益特性を変えることなく、運用者の力がより発揮され、収益面での魅力を高めることも大事です。こうした地道な取り組みは、直販の受益者の皆様の貢献にもつながりますので、鎌倉投信は、努力を惜しまず様々なことに挑戦していきます。
5. 第三の投資の流れをつくる
私は、社会人になってから37年間、資産運用や投資の最前線に立ち続け、今、あらためて感じていることがあります。世界中に拡大した市場経済は、人と人、人と自然との関係を希薄化する構造を有しますが、本来経済とは、お金を介した世界中の人と人とのつながりである、ということです。投資を含め、一人ひとりのお金の流れの総和が経済であり、経済のあり方が社会をかたちづくる、ということです。皆さんの投資や消費を含めて、皆さんが使うお金にどんな想いを込めるか?その想いの先に「いい社会」「いい未来」はある、と思っています。
お金を、ただふやすために株式市場全体を上昇させる時代は、いずれ転換を迎えるでしょう。金融市場にゆだねる運用から本当に社会に必要とされる会社を選別する投資の時代へ、金融市場にゆだねる運用から未来をつくる投資へ、とお金の流れは変わるでしょう。鎌倉投信は、そうした投資家の「わ」、第三の投資の流れを少しずつでも信念をもって広げていきたいと思っています。
※前回のnote「指導者の一念 ~「いい会社」の経営者講演 IKK 中嶋副社長~」の続きは、次回以降に書きたいと思います。
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