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解離性障害のわたしとアスペルガーの彼氏┊お互いの凸凹を補い合えたら。


21時前に彼から終始無言の電話が掛かってきた。彼は精神的には入院する必要は無い状態だが、『社会的入院』と言って、色々事情があって住む所がないので病院が住所になっている。なので連絡手段は彼から公衆電話で電話をかけてもらうことしかないのだ。それか、わたしが手紙を書くか、どっちか。
彼は調子が悪くなると自分のことだけしか考えられなくなる傾向があるので、調子が悪くなると電話もかかってこなくなるし、デートを連絡無しでドタキャンされることも度々ある。そんな彼が、無言の電話を掛けてきた。ただ単に調子が悪かったのか、それとも何か言いたいことがあるのだけど言い出せず無言を貫いたのか、今はまだ分からない。ただ、そんな電話は初めてだったのですごく心配しているし、同時に不安もすごく覚えていて本当に色々なことを考えている。

彼とわたしは凸凹カップルなのだ。
彼は頭がめちゃくちゃ良いアスペルガー症候群の人だ。IQ的には低いところが普通の人の平均で、特にワーキングメモリに関してはIQがめちゃくちゃ高い。なので、彼自身記憶にこだわる傾向がある。凸凹は大きいが、平均してとても頭が良い。
一方でわたしは、発達障害は持っていない、IQもごく平均的だが解離性障害。病気の特性上覚えていたいことを覚えていることができなかったり、日常的な記憶が薄かったりする。元々はこんなに記憶力が悪い訳ではなく、今でも日常的なこと以外、勉強した記憶など、情報等に関しては多分記憶力は悪い方ではないと思う。
まずここが凸凹ポイントで。記憶に関して補い合える所もあれば、彼にしてみれば覚えてて当然なことや、わたし自身にとっても忘れたくないことを忘れてしまっていて彼も不快な気持ちにさせてしまうし、自分も覚えていたいことを覚えていられない申し訳なさもあるし、自分にガッカリして落ち込んだり自分を責めたりすることも多々ある。

逆に、読み書きについてはわたしの方が得意だ。文章を考えることも好きだし、読むことも好き。そして、文章をサラサラと読んだりすることは早いし、読書感想文で賞を取ったこともある。小学生の頃から小説ばかり読んでいる女の子だった。
一方で彼は、出来なくはないが読み書きが苦手で、文章を書くのにも読むのにも時間がかかる人だ。多分、考えて考えて文章を組みたてたりするので書くことにも時間がかかって、記憶にこだわるが故、全て覚えておきたくて読むのにも時間がかかるのだろうと思っている。
ここも凸凹ポイント。とにかく色んな面で凸凹カップルなのだ。

その凸凹をいつも補い合えたら最高なのだが、お互い得意な部分と苦手な部分が正反対なので、やはりカチンとくる所もあれば、悲しくなることもあれば、申し訳なくなることもあれば…。そこに彼のASDの特性として『感情を読み取ること、想像することが苦手』という部分も加わり、わたしにとっては当然想像がつくとか、察することが出来るだろうという『当たり前』が彼には通用しないことがある。逆に彼にとっても自分の中の『当たり前』が通用せずに思うことは色々あるだろう。ただ、彼は頭がいいので、多分色んなことを考えることによって、そういった苦手な部分や普通とのギャップをカバーしているのだと思う。

彼のことは大好きだし本気で愛している。元々恋愛感情を抱かなかったわたしが、唯一本気で好きになれた人で。だから、彼の特性を理解しなければいけない、彼が悪いのではなくて特性が彼の良さを邪魔しているだけ。と、不満を覚えたり怒りの感情を抱いたりしても、『しょうがない』『特性なんだから』と言い聞かせて、そのネガティブな感情を表出せずずっと蓋をしてきた。彼にぶつけたら、怒られて関係が終わるかもしれない。彼にぶつけたところで、ちゃんとわたしの気持ちが伝わるかどうかという部分も不確か。そんな不安や怖さがあって、彼に対して怒りをぶつけたこともなければ、周りの人になにか愚痴を言うこともしたことがない。

だが、ふと思ったのだ。
『わたしばっかり我慢して、謝って、笑って、バカみたい』
、と。

彼はわたしが解離性障害だと言うことはもちろん知っているし、そもそも出会った場所が病棟だったので、わたしのすごく良くない状態も目の当たりにしたことはある。
でも、記憶に関してわたしが忘れているところを、最近は教えてくれるのではなくて「思い出して」と宿題にされる。それがなんとも辛いのだ。覚えていないことを責められている感じがするし、覚えていないことが情けなくなるし、申し訳なくなるし、記憶を掘り起こそうとすることがわたしにとってどれだけ負担がかかることか、伝えていないわたしも悪いのだけど、本当に色んな意味で辛いのだ。
宿題にされるのは、彼の覚えていて欲しいという気持ちなのは分かる。だからそれに対して反論はできない。覚えていないわたしが良くないのだから。だから、色んな場面で何かを忘れていることが浮き彫りになる度に、謝ることしかできない。大切に思ってくれていなければ、『覚えていて欲しい』とは思わないだろうし、そこも彼の愛なのだとも感じているから、余計に申し訳ない。

でも、ふと思った。彼に怒られたことは、遁走して飛び降りてその後初めて会った時しかないけれど(愛がこもった怒りだったから真剣に怒ってくれて逆に嬉しかった)、間接的に言葉でチクチク攻撃される(わざとでもなく悪意も無いのだと思う)。そして、自分が苦手な部分は「ASDだから」とそこを言い訳にされる。
彼の中での基準が彼でしかないから(そこは自分でも変えていかなきゃいけないと彼も自覚している部分)、『何で周りの人はこんなに忘れるんだろう』とよく思うらしい。わたしはその度に『わたしも記憶に関しては病的だからね』とさり気なく伝えているのだけど、その真意は彼には届いていないのだろう。
というか、彼がASDを言い訳にしているように、わたしが勇気をだして訴えているところも彼にとっては言い訳にしか聞こえていないのではないか。

彼がわたしのことや病気を必死に理解しようとしてくれていることは、痛いほど伝わってくる。だからわたしもASDの勉強もしていて。だから特性が変わらないことも、割り切らねばならない部分は割り切らなければ自分が辛くなってしまうことも、頭では理解はしている。むしろ、彼はASDの中でも人の気持ちを想像できる方だとも勉強をしている中で思ったりもした。まぁ、世間一般の常識と彼の中での常識にズレがあることも度々感じる。けれど、そんな彼のことを好きになったのだし、そこで幻滅する訳でもなければ、彼なりに色々考えてこうしてくれたのだな、とポジティブに気持ちを受け取るようにしている。純粋に気持ちは嬉しいしね。

けれど、時々考えていることが掴めなくて、苦しくなる。
今回の無言の電話もそう。調子が悪いけど何日か電話してなかったし、心配かけちゃってるだろうから電話しようって純粋に考えて電話したけど、話せる状態じゃなかった。それだけなのか、なにか伝えたいことがあったのだけど、言いづらくて言い出せずに無言の電話になったのか。
本当に前者だった場合、後者のことを指摘してしまうと余計に体調を崩してしまうよな…。と思って、後者のことを考えているような言葉は一切掛けずに電話で呼びかけ続けたけれど。
難しい。ASDという特性は。そして、彼もまた、きっとわたしの病気の理解には難しいと感じているのだと思う。
きっとお互い様なのだと思う。

…けれど、我慢して言葉も感情も飲み込み続けることには、少し疲れてきた。彼からの電話の後、色んなことを考えながらずっと涙目になっていたけれど、泣くまいと泣かなかった。そこで、ふと客観的に『わたし、思ってた以上に追い詰められてるじゃん』と思った。
あの無言の電話が、わたしにとってネガティブなことを言いたくても言い出せずに何も言えなかった、そんな電話だったとして、その話を持ち出されたとしたら、わたしも思っていることを正直にぶつける必要があると感じた。そうでなくとも、我慢して謝って笑ってばかりではなく、自分が不快に感じたことなどは、ちゃんと伝えないと、カサンドラ症候群になりかねないとも感じたし、今もその傾向にあると感じたので、勇気をだしてぶつけることも必要になってくるとも感じた。
このままお付き合いを続けてたら、わたしが潰れる。
そう感じた。

目指すは、凸凹を補い合える関係。
その為には、自分の気持ちに素直になる必要もあると思ったし、伝えなければ伝わらないと言うところはASDの彼にとっては普通の人よりも言えることなので、伝えたいこと、伝えなければいけないことはきちんと伝えるべきだと、そう思った。
大切な人だからこそ、離れたくない、離したくないからこそ、伝えるべきことは伝えようと、頑張ろうと、そう決意した。彼にもそうしてもらいたいと思った。お互い我慢の限界になる前に伝えあった方が良いと。長く関係を続けるためには、必要な事だと。そう思った。

彼も彼で大変な思いをしているはずだし、色んな感情や言葉を飲み込んでいるのだと思う。お互い様だからこそ、伝え合うことは重要な事だと、そう感じた。
人に気持ちをぶつけることが苦手なわたしだけれど、頑張ってぶつけよう。伝えよう。

2人の未来のために。

(長文、最後まで読んで下さり、ありがとうございました。)



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