思い立ったら吉日!
八月になった。夏休みが四か月もある。もうすでに二ヶ月間を部屋でグウタラ過ごしたと思うと何だかこれで良いのかというような気分になった。朝早起きして外が暑くなりすぎる前に近所の公園を散歩時々ジョギングみたいなことをしていたら、ええい、チキショー、どっか行こう、と思って、その晩の宿を予約して電車に乗った。
今回行ったのはチェスキークルムロフという、チェコの観光スポットの話では必ず出るような場所です。ずっと行ってみたかった理由は、観光スポットだからという理由ではなく、好きな画家のエゴンシーレが描いた町だからという理由です。出来れば観光スポットにはなるべく行きたくないんだけど、シーレの見た町を自分の目でも見たいと思っていました。
昼に出発してプラハから電車で三時間くらいドンガタドガタ、到着するとめちゃくちゃ暑くて😅という感じになりました。
しかし駅前でとても良い木の棒を見つけ、機嫌が治りました。

観光をしている観光客の人たちがペチャクチャ喋りながらキョロキョロしてノロノロ歩いていて、ズカズカ歩きたい私は木の棒を杖のように着きながら早歩きで人々の間を縫って蛇行しましたが、今思うとそれって最短距離を落ち着いて歩けば良いのにだいぶ徒労だな。
夜ご飯をどっかで食べようかと思っていましたが、レストランは全て観光スポットにあり、観光の雰囲気に疲れたので、ちょっと歩いたとこにあるスーパーでぶどうやチーズやワインを買って部屋で食いました。

部屋にはテレビがあり、初めてチェコでテレビを観るという経験ができ嬉しかったです。カウボーイの映画をやっていたのでそれを観てましたが、彼らはずっと戦、セックス、酒を飲む、の繰り返しでだんだん飽きてきたのでニュースに変えたら、原爆についての特集をやっていて、突如強引に現実に引き戻されたような気分になりました。
次の日は六時半くらいに目が覚めたので宿の近所をお散歩していたら、中国や韓国のおじさんやおばさんなど、早起きのアジア人しか居なくて面白かったです。
そのあとどっかで朝ごはんを食べようかと思い洒落た雰囲気のレストランに行きおはようございます!と言って着席してみましたが、メニューを開くと「モーニングメニュー」とか言ってトーストや目玉焼きなどが二千円くらいしててアホみたいに思い、さようなら!と言って出ました。
お腹がすいたよぉ〜と思いながら川の方へフラフラ歩いて行ると、半地下のチーズ屋さんを見つけ、サンドイッチが四百円くらいで売ってるのを発見したのでそれを買いました。デッカいおばさんが「ファイブミニッツ!」とパーの手を見せながらハキハキとおっしゃりました。待ってたら、常連のおじさん五人組みたいな軍団がやってきて世間話を始め、もうとっくにファイブミニッツ経ったよな…と思いながら狭いお店の隅の方で待っていました。
アルミホイルに包んでくれて、ちぎったキッチンペーパーも添えてくれたサンドイッチは、見た目はものすごく普通でしたがボリューミーな反溶けチーズが挟まっていてめちゃ美味しかったです。
そのあと川のそばのキッチャテンの外の席で、持ってきた小さい水絵の具セットで絵を描いていました。近くの席に座っていた夫婦のおばさんの方の携帯が鳴って、仕事の電話のようでおばさんは席を立ってテキパキと喋ったあとに私のそばで立ち止まって、絵を褒めてくれました。とっても綺麗ね、と言ってくれたのでありがとうございますと言いました。そのあと「これは水彩絵の具か」的なことを聞かれたんだけど水彩絵の具という単語を知らなかったものの「水」という単語は知っており、それに似た言葉を絵の画を指差しながら言ってきたので何のことだかわかりました。絵を褒めて頂いて、拙いチェコ語の知識でも少しばかりの会話ができて嬉しかったです。後から調べると水彩絵の具は「vodové barvy」でした。水はvodaです。勘が良いね、グッジョブ結。


その後写真を撮ったりウロウロしながら駅に向かいましたが、途中でステキ服屋さんとかがあって入るたびに、ありえない値段がついていてびっくりしました。学生生活にて様々な「最安」を知っているので尚更あり得なく感じました。例えばメルカリ的アプリや地元の古道具屋さんでは数百円くらいで手に入るようなレトロ雑貨などが、観光古道具屋さんでは「 ニ万円」みたいな。
そんな感じで帰路につき、帰りの電車に乗りました。チェコの国鉄は大体ガラガラで、特に指定席券とか買わずに空いてるとこに座れば良いというのが好きです。ガラガラの電車って最高。電車って最高。ちょっと遠出する時は多少時間かかっても電車に乗ります。バスとか乗りたくない。
それで帰りに座ったボックス席で靴を脱いで大変怠惰な姿勢でくつろいでいたら、途中で向かいにサイクリング用の自転車をかついでたチェコ人のお兄さんが座ってきて、おやつを食べながらビールを飲みはじめました。電車の自転車ラックに近い席だったからか、私のくつろぎ様を見て気後れせずくつろげそうと思ったのか、両方か、という感じです。暇だったのでスケッチブックを取り出してその自転車お兄さんを描いてたら途中で大勢が変わってしまったので、「エクスキューズミー。あなたを描いてるんだけど、さっきのポーズに戻って」と言って戻ってもらいました。自転車お兄さんは靴を脱いでかなり椅子からずり落ちた体勢でYouTubeで自転車の動画を見ていました。

思い立ったら吉日というのは本当です。何かをやりたいなあと思っても「今じゃなくても、いつか…」とか思ってたらだんだん「やりたさ」が飽和していき、他のことがどんどん出てきて、そのやりたさが薄れてきてしまいます。行動力があるね、と言われることが割とありますが、「行動力がある」というのはおかしなセリフに聞こえます。行動力が無いって、何か頭に浮かんでもやらずに椅子に座ってるようなイメージ、そんなの意味わからないと思う。いつ死ぬかわからなしね。
生きることに積極的になってからは、「死」以外の事を全てやりたいというようなスタンスで過ごしています。そうしてたら「死」のことを考える暇もないし。絵を描くのも似たような感じです。特に夏は、絵を描くか、憂鬱になって床でバテるかの二択なので、楽しいほうを選びます。
突発的な小旅行は大変気分がリフレッシュできて良かったです。自分で宿に泊まるというのは初めてでしたが意外と楽勝だったので、旅行のハードルが下がりました。今度はドイツとかブダペストとかちょっと遠くまで行ってみようかな。
