体は「ケアしすぎる」と壊れることがある
体がつらいと、人は何かを足す。
マッサージ、整体、ストレッチ、ヨガ、筋トレ。
体を良くするために、いろいろなケアを増やしていく。
でも整体をしていて、何年も前から不思議に思っていることがある。
いろいろケアをしている人ほど、
体が硬いことが多い。
むしろ、何もしていない人のほうが
体が柔らかかったりする。
体は本当に、
「やればやるほど良くなるもの」なのだろうか。
治るとは何なのか。
整体をやっていると、この問いから離れられなくなる。
体がつらくなると、人は何かをする。マッサージに行く、鍼を受ける、整体を受ける、ストレッチをする、ヨガをする、走る。
どれも体にとって悪いものではない。むしろ良い影響が出ることもある。
ただ最近強く感じるのは、足してばかりいる人がとても多いということ。
体を良くするために、何かをどんどん足していく。
ケアを増やし、運動を増やし、刺激を増やす。
本当にそれで体は整うのだろうかと考えることがある。
人の体には受け取れる量がある。
食事を思い浮かべればわかりやすい。どんなに美味しくても食べ続けることはできない。
あるところで体が止める。
もう入らないと教えてくれる。
これは自然に起きていること。
体は自分を守るために限界を知っている。
刺激も同じはず。
マッサージでも運動でもストレッチでも、体は必ず反応する。
その反応を利用して体は変わっていく。
ただその反応を理解したうえで、どこまで刺激を入れている人がいるのかは疑問に思う。
整体やマッサージの世界には魅力的な言葉が多い。
「これをやれば良くなる」
「これをやれば治る」
希望になる言葉でもある。
だから人は通う。
だけど現実として、体の不調を抱える人は減っているだろうか。
体のケアの方法は昔より圧倒的に増えている。
それなのに体のつらさを抱える人はむしろ増えているように見える。
ここに少し違和感を感じている。
実際に施術していて思うことがある。いろいろやっている人ほど体が硬い。
本人にそのつもりがあるかどうかは別として、そう感じることが多い。
鍼、整体、マッサージ、ストレッチ、ヨガ、筋トレ、加圧トレーニング、自宅の健康器具。
体のケアの予定が一週間の中にびっしり入っている人もいる。
子どもの習い事のように体のケアが並んでいる。
健康を大事にしていること自体は悪いことではない。
ただ体に触れてみると、体はパンパンに張っている。
むくみがあり、奥まで指が入りづらい。筋肉が閉じてしまっているような感覚になることもある。
施術の前にこう言われることもある。「マッサージチェアでほぐしてきました」
「別のお店でマッサージを受けてきました」
「ジムでしっかり筋トレをしてきました」
良かれと思ってやっているのはよくわかる。
ただ施術する側からすると、体はすでに刺激でいっぱいという状態になっていることがある。筋肉は張り、むくみ、体全体が緊張している。
そういう状態だと体の奥の硬さに触れていくのが難しくなることもある。
なぜ人は刺激を入れ続けるのか。
体が温まる、
血の巡りが良くなる、
元気になった気がする、
体が動きやすくなる。
そういう感覚があるからだと思う。
確かにそうだ。
刺激のあとにはエネルギーが満ちたような感じになることもある。
それ自体は悪くない。ただ、そのあとに必要な時間がある。休む時間。
体は刺激を受けると反応する。
緩むこともあるし、張ることもある。
むくむこともあるし、熱を持つこともある。
これは自然な反応。
ただ刺激が続きすぎると体は反応し続けることになる。
つまり緊張した状態が続く。
休む時間がないまま刺激を受け続けていると、体は落ち着く時間を失う。
仕事も同じ。
働き続ければ体は疲れる。
食事も同じ。
食べ続けることはできない。
酒も同じ。
飲み続ければ体は壊れる。
体のケアも同じなのかもしれない。やればやるほど良くなるというものではない可能性がある。
体を整えるために必要なのは、足すことではなく引くことかもしれない。
動きすぎているなら休む。
やりすぎているなら減らす。
体に余白をつくる。
体は本来、休んでいるときに整う部分がある。
筋肉も休まないと緩まないし、体の巡りも落ち着く時間が必要になる。
慢性的な不調を抱えている人を見ると、何かのバランスが崩れていることが多い。
生活、食事、働き方、休み方。
場合によっては生き方そのものを見直す必要がある人もいる。
ただそれを決めるのは本人。
人にはそれぞれ価値観がある。
正解も人それぞれ。
だから施術者が答えを押しつけることはできない。
ただ、ときどき出会う。
体と向き合い始める人に。
自分の体の状態を感じようとする人。
生活を少し見直す人。
無理を減らす人。
そういう変化が起きると体は驚くほど変わることがある。
別次元のように良くなる人もいる。
整体をやっていて思う。やればやるほど良くなるという考えは、本当に正しいのだろうか。
体は機械ではない。刺激を入れれば入れるほど良くなるわけではない。ときには止まること、休むこと、引くこと。それが必要なこともある。
私が現場で大事にしているのは、強い刺激ではない。
体が落ち着く時間。
静かな空間の中で体に触れていく。
余計なものを足すのではなく、体が元に戻る時間をつくる。
すると硬く閉じていた体が、少しずつほどけていくことがある。
治るとは何なのか。
答えはまだわからない。
ただ一つ思うのは、いかに自分の体の状態に向き合うか。
それによって変わるものはある気がする。
人それぞれ生き方も体も違う。
その中で何か共鳴する瞬間があると嬉しくなる。
ただそういう出会いは多くない。
それでも今日も、体に触れながら考えている。
もうずいぶん長く、この仕事をしているけれど。
体は本来、整う力を持っている。
忙しさや刺激の多さの中で、それが働きにくくなっているだけなのかもしれない。
体は、余計なことをやめたときに本来の力を思い出す。
