TNY Legal Bangladesh Newsletter No. 47(2026年商事裁判所法(Commercial Court Act, 2026)の概要 )

今回は、 2026年商事裁判所法(Commercial Court Act, 2026)の概要 についてご紹介します。

2026年商事裁判所法(Commercial Court Act, 2026)の概要
 
バングラデシュ政府は2026年4月10日、「2026年商事裁判所法(Commercial Court Act,2026)」を官報に公布・施行しました。同法は、2026年1月1日に公表された2026年商事裁判所令(Commercial Court Ordinance,2026)を正式に法律として可決したものです。同法の規定は2026年商事裁判所令と同一であり、国内の投資環境整備と経済発展を目的として、商事紛争を専門的・迅速に解決するための商事裁判所(Commercial Court)を新設することを主な目的としたものです。
 
1.商事裁判所の管轄(対象となる紛争類型)
同法2条は「商事裁判所の管轄事件」を詳細に定義しています。主要な対象類型は以下のとおりです。
(1) 商人、銀行家、金融機関および商人の間における、商事文書の適用および解釈を含む一般的取引
(2) 物品もしくはサービスの輸出または輸入
(3) 航空機、航空機エンジン、航空機装備品およびヘリコプターに関する、販売、リース、資金調達を含む取引
(4) 貨物輸送(運送)
(5) 建設およびインフラ契約、ならびにそれらに関連する入札
(6) 商業または事業のために使用される不動産に関する契約
(7) フランチャイズ契約(Franchising agreements)
(8) 配布(ディストリビューション)およびライセンシング契約
(9) 管理(マネジメント)およびコンサルティング契約
(10) ジョイントベンチャー(共同事業)契約
(11) 株主間契約(Shareholders agreements)
(12) アウトソーシングならびに金融サービスを含む、サービス部門に関連する購読(サブスクリプション)および投資契約
(13) 商事代理店(Commercial agency)および商慣習(mercantile usage)
(14) パートナーシップ(組合)契約
(15) 技術開発契約
(16) 商標法(2009)、著作権法(2023)、特許法(2023)、意匠法(2023)、地理的表示法(2013)に基づく権利、またはドメイン名に関連する請求もしくは権利
(17) 物品の販売またはサービスの提供に関する契約
(18) 鉱物、ガスまたはその他の天然資源(電磁スペクトル等)の使用に関する契約
(19) 保険もしくは再保険、または保険法(2010)に基づく事項
(20) 代理店(エージェンシー)契約
(21) 船舶の建造、販売または輸出に関する契約
(22) 仲裁法(2001)に基づく仲裁合意、仲裁、仲裁手続および仲裁判断(アワード)
(23) 決済および決済システム法(2024)に基づく取引
(24) 随時、政府または適切な当局により通知を通じて定められるその他の商事紛争
 
なお、公共サービス(Public Service)の提供に関する紛争は商事裁判所の管轄から明示的に除外されています(同法2条ただし書)。
 
2.裁判所の構成・設置および上訴手続
商事裁判所は、最高裁判所長官との協議を経て政府が指定した裁判官により構成され、政府が定める地域を管轄区域として設置されます(同法3条⑴、4条)。管轄区域については、事件の性質や地域の実情に応じて政府が柔軟に定めることができるとされており、今後の運用を注視する必要があります。
上訴については、商事裁判所の判決または命令に不服のある当事者は、高等裁判所(High Court Division)に上訴することができます(同法5条)。

3.訴訟前調停(Pre-Suit Mediation)
同法は、緊急の暫定的な救済(urgent interim relief)を求めない限り、提訴前に調停手続(Pre-Suit Mediation)を経ることを義務付けています(同法7条(1))。手続の流れは以下のとおりです。
まず、訴訟提起を希望する当事者は、相手方に対して書面で調停の申入れを行う必要があります(同法7条⑴)。申入れを受けた当事者は受領から30日以内に回答する義務を負い、回答がない場合または調停が不成立となった場合には、申請者は商事裁判所に訴訟を提起することができます。なお、30日の期間は書面による合意により延長することも可能です(同法7条⑵)。当事者双方が調停による解決を希望する場合は、合意した調停人(Mediator)を選定のうえ調停を開始します(同法7条⑶)。調停が成立した場合には、その合意内容を商事裁判所に申請し、裁判所の命令として確定させることができます(同法7条⑷)。調停費用については、原則として当事者双方が折半して負担します(同法7条⑸)。

4.仮処分・暫定措置
商事裁判所は、管轄区域外への財産の移転または処分を防止するための仮処分(injunction)命令の申請を認めており(同法6条)、訴訟手続中においても当事者の申請により財産の保全・処分禁止等の暫定措置を命ずることができます(同法10条⑴)。暫定措置の申請は本案訴訟の提起と同時または提起後に行うことができ、裁判所は申請から15日以内に判断を下すものとされています(同法10条⑵)。
 
5.専門家証人・外部証拠
同法は、商事紛争の専門性に鑑み、専門家証人の活用を明示的に認めています。裁判所は、当事者の申請または職権により専門家を選任し、技術的事項について意見を求めることができ、専門家の報告書は証拠として採用されます(同法9条⑾(a))。専門家費用は当事者が負担しますが、その配分は最終的に裁判所が決定し、敗訴者負担を原則として合理的費用が訴訟費用に算入されます(同法9条⑾(b))。
 
6.判決の執行と外国判決の承認
商事裁判所の判決は、通常の民事判決と同様に1908年民事訴訟法(Code of Civil Procedure, 1908)に基づいて執行されます(同法11条)。また、裁判所は証拠調べ完了後の判決において、元本の支払いに加えて利息・費用・損害賠償等についても命令を発することができます(同法15条)。外国の商事裁判所の判決および国際仲裁判断については、相互主義等の要件を満たす場合に限り、商事裁判所において承認・執行の申請が可能です(同法16条)。
 
7.実務指針(Practice Directions)
最高裁判所長官は、1908年民事訴訟法の規定に加えて、商事裁判所の手続に関する実務指針(Practice Directions)を発行する権限を有します(同法12条)。現時点では手続の細部が明確でない部分もありますが、今後この実務指針を通じて順次整備される見込みであり、その動向を継続的に注視することが重要です。

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