🌸ダンゴムシのそのあと
チリン、チリーン
いつもより早い出勤途中、後ろから自転車がけっこうなスピードで追い抜いていった。
前と後ろに子供を乗せた、スーツ姿のお母さんだ。
きっと子供を保育園におくってそのまま出勤するのだろう。
小さくなっていく3人の後ろ姿を見ていて、朝の保育園送迎のことを思い出した。
育児休暇が明けて、仕事復帰となったころ
朝は本当に怒涛だった。
早く起きているつもりでも、自分の支度と子供の支度
すんなりいくわけがなく、いつもぎりぎりの時間に出発してた。
まだ下の子が生まれる前、
息子を送っていく時の話だ。
私がいつものようにバタバタ玄関で靴を履いていると
先に外に出た息子が植木のところでしゃがんでいた。
「はやく、のってー!!」
ママチャリを用意しても
なかなか乗ってこない。
「なにしてんの??」
イライラしながらのぞきこむと
息子のちいさな手のひらには何匹かダンゴムシが入っていた。
「うわーもう時間ないからー」
私はそう言って
息子の手を広げてパラパラとダンゴムシを地面に落とし、
彼を抱き上げて自転車に乗せた。
急いで保育園へ向かう途中、
信号の前で
ふと息子のほうをふりむくと
彼はまだ手を広げたまま
じーーっっと手のひらを見つめていたのだ。
その姿をみて
私は胸がキーンと痛くなって
こぎ続ける自転車の上で涙がいっぱいあふれてきたのを覚えている。
私が働いていなければ
きっと子供とのゆっくりした時間はたくさんあって
ダンゴムシをじっくり見ながら
息子といろいろな話ができたかもしれない。
どんな思いでダンゴムシをひろって何を感じたのか、彼の口から聞けたかもしれない。
息子にとっての大切な瞬間をたくさんたくさん見逃している自分が
ものすごく嫌になってきて
涙がたくさん出てきたのだと思う。
そんな息子もすっかり成長し
あの時のダンゴムシのことをきいてみた。
どんなこと思ってた?
かなしかった?
高校生の息子曰く
「いや、おぼえてねえし。」
ですよね。少し拍子抜け。
でも私にとっては
あのときのあの場面は鮮明にココロにのこっている。
子供との一瞬一瞬が
大切でかけがえのないものだと教えてくれた特別な場面だ。
その瞬間があったからこそ
私はもっと子供との時間をわたしなりに大切にしようと気づいたから。
子育てが一段落すると、きっと誰にでも
そんな忘れられないシーンが心の中に残っているのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました🌸
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