🌸みえない温度
朝起きると月並みだがコーヒーが飲みたくなる。
昨夜のポットのお湯が残っているから、カップにインスタントコーヒーを入れてポットのお湯を注ぐ。
我が家のポットはサーモスのボトルだ。
電気ポットは電気代節約のため、棚の奥に眠っている。
ぬるい。
サーモスならがんばれると思ったがやはり翌朝はぬるい。
わたしはぬるいコーヒーが嫌いだ。
仕方なくやかんでお湯を沸かす。
オール電化の我が家のコンロはカセットコンロだ。
キッチンのIHは電気代節約のため、食器置き場に改装された。
ぴー----
やかんの熱量がやる気に満ち溢れていて、朝にはちょうどいい。
ぬるいコーヒーを捨てて、つくりなおす。
湯気の立つマグカップを持って、PCを開く。
蒸気で顔を湿らせながらコーヒーをすする。
ああ、しみる。
熱が、こころに届く。
熱は、人を安心させる。
沸騰したお湯
握手のぬくもり
ふとんの中の体温
肩までつかったお風呂
湯気の立つ味噌汁
ハグのあたたかさ
子どものほっぺ
犬の胸ぐら
首に巻いたマフラー
カイロの熱
石油ストーブ
湯たんぽのぬくもり
重ねた手の間
寒い日も、暑い日も、
わたしはこのぬくもりがほしい。
自動販売機のホットは1年中にしてほしい。
仕事をしていても、ふと、寒さを感じる。
エアコン? パソコン? 緊張? 孤独?
うう、寒い。
ホットコーヒーを飲みながら自分を抱きしめる。
肌だけじゃない。どこか、寒いのだ。
うう、誰か、何か、人肌がほしい。
しかし、職場で誰かに抱きついたり、触ったりしたものなら
ハラだ。ハラスメントだ。迷惑だ。
欲求不満?いやいや深い意味はない。
ただ、寒いのだ。あたたかさを感じたいだけなのだ。
「おはよう〜」
にこにこ笑って佐藤さんが通り過ぎた。
「おはよう」
にこにこ佐藤さんをみる。
おお、少しぬくもり。
「今日もありがとう。」「だいじょうぶ?」
「おつかれさまあ」 「つかれたあ!」
「なにしてんの?」「どうかした?」
声をかけたり、笑いあったり、思いやったりすると
心の温度がすこしずつ上がっていく。
そこに人がいる。わたしはここにいる。
ほんの少しのことばで、寒さが和らぐ。
熱いコーヒーもすぐに冷めてしまうけれど
最初の一口で、身体に灯がともる。
心の温度が上がる一瞬があるだけで
凍えることなく、過ごせる気がする。
今日も、熱いコーヒーと、少しのぬくもりを感じて

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