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『鍋供養』 【シロクマ文芸部】

みなさん、こんにちは。
今週のシロクマ文芸部のお題は、「鍋の具は」から始まる創作です。
小牧部長、どうぞよろしくお願い致します。

『鍋供養』

鍋の具は人それぞれ。
さて、今夜の具材はどんな感じだろう。

まずはピンク色の土鍋にたじろいだ。
ファンタジーか?
ファンタジーだろ・・・。

ゴクリ。
覚悟を決めて蓋を開けると、
ほわ〜ん。
と、甘苦い香りがした。
ドロドロのチョコレートの中にはドーナツやチーズケーキ、溶けたマシュマロがカオスに。
オレンジは生煮えでも合うと思うが、熱々イチゴは煮詰まるまでは逆にいただけない。
手元のお品書きを見ると、「パティシエの卵」とあった。
げんなりして、ため息を吐く。
「お勤めですから、召し上がってくださいませ」
鉄面皮の執事はさらりと言う。
(じゃあ、お前が食ってみろよ。このゲテを!)
と、何度言ったところで、役を変わることはできない。
「鍋は人生の縮図である」
とは、誰が言った名言か。
神代からこの役を担う身にもなってほしい。

人が死ねば、魂は黄泉に下る。
なかでも食べられなくて死んだ者の無念はすさまじい。
次の輪廻に向かうまでに魂を浄化し、鎮めなければならないが、魂が物を食することはできないので、代わりに食らうのが私なのだ。
黄泉戸喫神(よもつへぐい)と人は言う。
死人の欲する食事を食べて、成仏させる。
「しかし、なんで鍋なんだ?」
執事は几帳面に眼鏡を直しながら言った。
「鍋は何を入れてもよいのでしょう?また、様々な具材を入れることで相乗効果があると聞きます。何より人生そのものらしいですから、最も効果的なんですよ」
言葉もない。

鍋の具は人それぞれ。
昨日は塩の薄い粥だった。そんなものでも腹を満たしたいと死んだ老人だった。
「パティシエの卵」のチョコレート鍋は久々に強烈だった。
ワースト3 には入るだろう。
それでは、ワーストナンバーワンはというと、熱々ワインで煮立ったスープに湯だった生ハム。追いチーズという「ソムリエ鍋」だった。
久しくちゃんこ鍋やチゲ鍋、優しい水炊きなどにありつけていない。

時折感じるが、神とは名ばかり。
この役目こそ罰ゲームではなかろうか。

〈了〉
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