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[ブログ] Johnny Spadeというブランドをご存じですか?

私はここ15年ほど、Johnny Spadeというブランドを着ていることが多いのですが、先日発送に関してお問い合わせメールを送ったところ、なんと代表の半沢さんからわざわざお電話をいただきました!

http://johnnyspade.jp/

とても感激です。正直なところ、私が現在もブランドもので着ている服はここだけなんです。自分は漫画や音楽などに対して「広く浅く好き」なものは多いのですが、「ファン」と言えるものはとても少なくて、そしてその少ない中でも「ファン」と言えるものの一つが、Johnny Spadeなのです。

Johnny Spade(以下JOSP)は1993年に仙台で生まれたブランドです。なんと今年で29年です。主に代表&デザイナーの半沢さんの好きなカルチャー、ロックンロール、パンクロック、オールドアメリカンスタイル等からのインスパイアをベースに、半沢さん自身のメッセージを乗せたアイテムを展開しています。現在はJOSP、Midnight、Shineの3つのブランドを展開していて、それぞれちょっと雰囲気が違います。

JOSP

http://johnnyspade.jp/?sort=n&mode=srh&cid=&keyword=2022%2F3%2F23


Midnight

http://johnnyspade.jp/?mode=cate&csid=0&cbid=2198730&sort=n


Shine

https://suzuri.jp/Shine


写真アルバムを見ても、よく着てます。これは妻ちゃんにプロポーズしたときの軽井沢旅行の写真です。10年前です。

これは2016年に宮城県の松島に行ったときの写真です。

このジャケットの裏は、こういうかっこいいプリントになっています。

自転車にもこういうふうにステッカーを貼っています!これももう12,3年乗っています。

1977年生まれの私の世代は、1990年代に大きなファッションブームがありました。今でこそ若い人、特に男性もアンテナが高くおしゃれな格好をしていますが、そのトリガーになったのが90年代だったと思います。多くの人が「着れればいい」「暖かければいい」から、おしゃれ性を求めるようになったのです。

https://creators.yahoo.co.jp/lunasubito/0100190734

例えば東京であれば、原宿、渋谷、代官山に有名ブランドの路面店がたくさんできて、さらにセンスの良い若者が個人ブランドを始めるという流れが生まれました。大きなブランドは明治通りに、そして個人のブランドは少し奥に入った地域にお店を構えていました。「裏原宿」や「キャットストリート」と呼ばれる場所で、聞いたことがある人もいると思います。日曜日はそういうところに服を買いに行くのがかっこいいというブームが起こっていたのです。私も高校生の頃、よく電車で2時間以上かけて行っていました。(Zazousというブランドが好きでした)

https://www.pinterest.jp/h4bolt/%E8%A3%8F%E5%8E%9F%E5%AE%BF/

この雰囲気を音楽で例えると、大規模なブランドやショップ、例えばポールスミスやラフォーレ原宿はローリングストーンズです。世界中で愛されるビッグバンドです。そして個人ブランドは初音ミクちゃんです。Youtubeで個人が自由に発信できますね。そして時々その中から、米津玄師YOASOBIのような大ヒットアーティスト現れたように、個人ブランドの中のいくつかも、大きな人気を得るようになったのです。A Bathing ApeUndercoverは特に有名だと思います。

https://rockinon.com/news/detail/191528
https://blog.piapro.net/
https://urahara-fashion.com/blog-entry-420.html?sp
https://www.paulsmith.co.jp/shop-locator

半沢さんのJOSPもそういった個人ブランドの一つです。その経緯についてはジョニースペード物語というブログにまとめられているのですが、これがすごく面白いんです。一からブランドを始める大変さと楽しさ、そして何より半沢さん自身の苦悩など、 いろんなジャンルのクリエイターにも共感できる内容でいっぱいなのです。私は漫画という全然違うジャンルですが、多くの部分で共感しました。もしあなたが何かしらのクリエイター、もしくは興味のある方でしたら、ぜひ読んでみてください。文章全体からあふれる周りの人への敬意と感謝も読んでいて気持ちいいですし、後半の直営店をオープンさせる段階で続々と周りの仲間が集まって協力してくれる様子は、まるで少年漫画のクライマックスシーンのようです。

その中からいくつか、私の好きな部分を紹介します。

[東京ではなく仙台で展開する意味について]

俺はこの仙台って街で生きてきて、刺激を受け、商品を作って生きてきた。そして仲間もいる。

生きる場所を変えれば、デザインや考え方も変わってしまうかもしれないなって思った。

スイサイダルがローカルのベニスからカルチャーを世界に発信してるように、ジョニースペードもローカルの仙台から全国に向けて発信しているわけでね。

俺は結局、そんな考えで仙台で店舗をやることに決めた。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881166389/episodes/1177354054881166412

[商売と芸術のバランスについて]

順調に売上を伸ばしていたジョニースペードも良い時期は続くはずもなく、少しづつ低迷してきた。ジョニースペードをもっとハイセンスに・・もっとモードな感じに・・・なんて思っていた俺はもう一度、ストリートに軌道修正しなければならなかった。考えてみれば、自分のエゴイズムがそれを引き起こしていた部分もある。「俺はこれだけ最新のモードを理解してるんだ!」みたいな部分があったと思う。

これを読んでるみんなも好きなアーティストのアルバムに10曲入っていて、10曲全部が好きって人は少ないと思うんだけど・・・アーティストは10曲全部、本気で作ってると思う。でも当然、リスナーによっては「このアルバムは2曲しか好きじゃないんだよね~」って場合もある。

俺も同じくでジョニースペードで毎月リリースする商品も全作品手を抜いたことはない。が、しかし当然、お客様の好みがあるわけで「前回は3枚買ったけど、今回の感じは好みじゃないのでいらない」ってことも多々、あるわけで。

どれだけ一生懸命やっても、売れなきゃ意味がないのが現実だったりする。

ジョニースペードはそんな感じでモードスタイルを追い求めていたりしたので、取扱店やお客さんも減少し、だんだんと支払いなんかにも支障が出てきたりしていた。俺がやってるのは商売であって芸術ではないってことをここで思い知らされたよ。自分が心からカッコイイと思わない商品や音楽のパワーは弱いと思うよ。人に伝わるはずがない。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881166389/episodes/1177354054881166412

そして私が一番好きな部分はここです。

もともと俺はジョニースペードを大きく事業としてやっていこうとか、金儲けをしたいとか、そんな気持ちはそんなになくてジョニースペードも、そしてバンドも「自分の探求」としか思ってない。

「何でこのデザインがカッコイイと俺は思うのか?」「何でこのメロディが心から湧き出てくるのか?」ガキの頃からその「自分」の中にある謎を突き詰めて「商品」というものにしてきただけで、それを皆が「カッコイイ!」って言って買ってくれる事に至福の喜びを感じているようなもんで。その購入という行動がみんなから俺への評価だと思ってる。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881166389/episodes/1177354054881166412

物作りを仕事にして生きていくには、自分の目線ばかりではなく、受け手の目線を意識しなくてはいけませんよね。でも、一番基本にあるものはやはり自分の目線なのです。この矛盾に悩むクリエイターは多いと思います。

自分の例でいうと、私は昔からコミックスの後書きやミュージシャンのインタビューを読むのが好きでした。それは作品と作者を紐づけて「人間」を感じていたんだと思います。なので、エッセイ的な漫画(つげ義春とか桜玉吉とか)が好きで自分もそういうものが描きたかったのです。今描いているようなものがそれで、それは「自分の目線」ですね。

https://note.com/yuki1192/n/n167e5232829b?magazine_key=m1e33821197a1

けれども私が漫画をよく持ち込みしていた2000年代初めは、今ほど世の中にエッセイ漫画が多くなかった頃で、編集者には「エッセイ漫画は、もともとその作者が有名でないと意味がない」とよく言われました。つまり有名人の私生活はみんな知りたがるけど、何でもない人の私生活は誰も興味がないというのが業界のスタンスでした。自分の目線で面白いと思っていても、受け手の目線でそれが求められていなければお金にはならないということです。では、受け手の目線を意識するのであれば何を描けばいいだろうかと考えました。この当時はおたく的な趣味が一般化し始めた時期でもありました。簡単に言えば美少女ブーム(男性向けの場合)でした。こういう感じの絵柄ですね。

https://www.hmv.co.jp/en/artist_%E3%81%BE%E3%82%93%E3%81%8C%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%81%8D%E3%82%89%E3%82%89max%E7%B7%A8%E9%9B%86%E9%83%A8_000000000432951/item_%E3%81%BE%E3%82%93%E3%81%8C%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%81%8D%E3%82%89%E3%82%89max-%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-2021%E5%B9%B4-1%E6%9C%88%E5%8F%B7_11316015

ちょっと少女漫画ぽい雰囲気もありますし、私は少女漫画にも好きな作品が多いので、絵柄や作品の構成を研究してそっち方面で持ち込みをしていた時期がありました。しかし、やはりぱっとしなかったのです。当然です。美少女系で才能を発揮している作家は美少女が好きで描いているわけで、自分のようにマネした漫画は偽物なのです。まさに「自分が心からカッコイイと思わない商品や音楽のパワーは弱いと思うよ。人に伝わるはずがない。」です。かといって自分の描きたいものは世に求められていないみたいだし…で、行き詰まっていたのをよく覚えています。もちろん、人並みに「こういう絵柄はかわいいな~」と思いますが、クリエイターとしてはそれだけではだめなのです。

さて半沢さんは、洋服や文章と同時にロックバンドのリーダーも務めています。"Innsanity"、 "Dog day afternoon", "Howling point", "Night bird" の4つです。

中でも私はInnsanityがお気に入りです。特に2ndアルバム「Justice?」は、今風の言葉でいうと「エモい」んです!スピード感もあって激しめで、懐かしいロックンロール的なフレーズも入っていて、それでいてちょっと「悲しい」ような。アルバム全体のテーマも「正義とは何か?」で、これは私の漫画「杉村くん」と一緒です。アルバムから1曲紹介します。

Innsanity / Tonight(The king is dead)
裸の王様 みんなの笑い者
壊れたスピーカーを持って、崖の上から世の中の矛盾を叫んでる
いくら叫んでもその言葉は誰にも届かない

TONIGHT 虚飾が蔓延る
TONIGHT 王様は絶望する
TONIGHT 真実は抹殺される
TONIGHT 王様は絶命する

子供たちは王様の味方 真実を知っている
王様を庇う子供たちに親たちが叱咤する
子供たちの「純粋」が次々に去勢されていく

TONIGHT 虚飾が蔓延る
TONIGHT 王様は絶望する
TONIGHT 真実は抹殺される
TONIGHT 王様は絶命する

私は、この歌詞の「王様」とは全てのクリエイターであり私自身、そして何より半沢さん自身であると思います。そして「子供」は受け手で、「親」は世間と解釈しました。多くの場合クリエイターは受け手の心を動かす作品を作る、一種のエンターテイナーでもあります。しばしばそこには嘲笑的に笑われることも含まれます。そして本当に伝えたいことはあまり伝わらないことも多いです。個人的には、脳内を10としたら、作品にすると7くらいに減って、それを受け取った人は5くらい、人によっては1だったりすると思います。もちろん7全部受け取ってくれたり、解釈を広げて15にしてくれる受け手も大勢います。

そしてクリエイターはだいたい変わり者なので、親(世間)からすると敬遠されがちです。漫画でいえば鬼滅の刃くらい大ヒット作家になれば歓迎されますが、ほとんどの漫画家はギリギリの生活で昼間から家にいる変な人です。(もちろん自分もその一種です。)

でも、だからこそ世間とは違う物の見方ができるのです。それは時に世間がうっかり気づいていなかった「真実」も含まれます。多くの、特に物語を作るクリエイターはそこを作品に昇華することが多いです。でもそれは↑↑で書いたとおり、なかなか伝わりづらかったり、世間からディスられたり、時には絶望して作品作りをやめて世間のほうに行く、平たく言えばフルタイムの仕事に就職することもあります。王様としては「絶命」です。そういったクリエイターとしてのジレンマを表した曲だと思います。ちなみにInnsanityは以前にメジャーデビューのお誘いもあって、断った理由の一つが「TVでコミックバンドみたいなことをやらされそうになった」とのことでした。このエピソードもすごく共感しました。私ももし、杉山君デビューさせてあげるから毒親と子供が和解してハッピーエンドの漫画描いてよと言われたら、それは嘘になっちゃうので描けません。

もし興味を持ったかたがいましたら、WEBショップもありますのでぜひどうぞ!


最後に、半沢さんは作品の中でよく「OUTSIDER」という言葉を使います。それは私が「杉村くん」を描くうえでとてもインスピレーションを受けた言葉なんです。直訳すると「外側の人」です。

それは不良的な人たちだけでなく、いろいろな理由、生まれつきの性質だったり環境が理由だったりで社会になじめない人たちです。そしてそのこと自体には善悪はないはずなのに、結果的に悪とみなされ、弱い立場に立たされてしまいやすい人たちのことです。そういう人たちが不良グループ内で寄り添い、ちょっと救われている様子を描いたのが「杉村くん」です。

半沢さんの作品に「HARD BOILED SWING CLUB」という小説があるのですが、その一文「…俺が若い頃、「THE MIDNIGHTS」ってチームに所属していた時があった。全員いわゆる「不良少年」ってやつでな。「ワル」だけど「悪」じゃない堅気のチームだった」は、それをよく表していると思います。

この小説にはたくさんのアウトサイダーたちが登場します。親から捨てられてしまった人や、どもりが原因でうまく人とコミュニケーションが取れない人など、理由があって外側の世界で暮らす人たちです。そんな彼らの物語が、優しさと理解を持った目線を通して描かれます。クリエイターもある種のアウトサイダーですし、私の漫画を読んでくれている方もちょっと病んでしまった方が多めです。きっと多くの人に共感される作品だと思います。

↑↑でも書いたとおり、ブランド運営も音楽も文章も、半沢さんにとっては全て等しく自分を表現する手段です。29年間も一つのことを続けるというのは、お金とか有名になりたいとかがモチベーションではありえないことですよね。そしてジョニースペード物語でも描かれる周りの人への敬意と感謝、そしてちょっとしたきっかけでわざわざ私にお電話もくれて、私も小規模ながら長いこと漫画を描いているので共感したことをもとに今ブログに書いているという、全部がつながっているように思えます。ブランドの雰囲気やバンドで演奏する姿だけ見るとちょっと恐そうなイメージを持たれるかもしれませんが、ブログが結構ゆかいで親しみがわきます(電話やメールでもその親しみやすい人柄のままでした)。ぜひ半沢さんの世界に触れて、いろいろ感じ取ってみてください!オススメです。

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