ショートショート 『ひとりごとの調べ』 #シロクマ文芸部
窓際にあるデスクが彼の定位置。
事務処理をしながら会社を立て直してしまった寡黙なオトコがいた。
彼が何をしたかって?
なんてことはない、ただの事務処理さ。
残念ながら、彼は仕事の能力があまり高くなかった。
寡黙な彼は、ひとりごとのように声に出して仕事を進めないと分からなくなってしまうくらい、あまり仕事が出来なかった。
仕事が出来ないのになぜ、会社を立て直せたかって?
知っているかい?
「1 / f ゆらぎ」
規則正しいのと不規則なのが、ちょうどいいバランスで混ざっている状態のこと。
自然界には、このゆらぎが隠れている。
雨の音、小川のせせらぎ、小鳥のさえずり、ろうそくの炎…
人間にも一万人に一人の確率で、この「1 / f ゆらぎ」の声を持つ人が存在するらしい。
そう、彼はその一万人に一人なんだ。
彼が声出し確認しながら、仕事を進める。
その声を聞いている者たちは自然とリラックスし、整えられ、最高のパフォーマンスを発揮する。
業績が上がるだけじゃなく、社内のムードや人間関係も、どんどん良くなっていく。
仕事も増えて、彼のひとりごとも増えた。
彼を中心に、会社は一気にマイナスからプラスに転じた。
ひとりごとで会社を立て直せるんだ。
何が起こるか分からないよ、この世界は。
まぁそんなに意気込むことはない。
こちらの企画に参加させていただきました。
ひとりごと、つい出ちゃいますよね・・・
