"正しさ"の鎧をまとったリーダーは、必ず間違える:組織不正のメカニズム
組織を率いるリーダーが、誰よりも強く「正しさ」を信じ、それを貫こうとした結果、かえって道を誤ってしまう──。そんなリーダーシップの逆説(パラドックス)について、本記事では考えていきます。
多くの組織がコンプライアンスを強化し、倫理的な行動を声高に叫ぶ一方で、なぜ組織ぐるみの不正や不祥事は後を絶たないのでしょうか。もしかすると、僕たちが拠り所としている「正しさ」そのものに、落とし穴があるのかもしれません。
この根源的な問いに向き合うきっかけとなったのが、知人であり、立命館大学経営学部准教授の中原翔さんによる著作『組織不正はいつも正しい:ソーシャル・アバランチを防ぐには』(光文社新書/2024年)でした。組織不正のメカニズムに鋭く迫る一冊です。
なぜ「組織不正」は「正しさ」から生まれるのか?
品質偽装、会計不正や、安全基準を無視した製造など、法を犯すような不正行為が、なぜ「正しさ」から生まれてしまうのか。このタイトル自体が、まず強烈な問いを投げかけてきます。
一般的に「組織不正」と聞くと、私たちは「悪意を持った誰かが、私利私欲のために、ルールを意図的に破る」という構図を思い浮かべがちです。しかし、本書によれば、現実に起きている組織不正の多くは、そのような単純な構図ではないのだそうです。
むしろ「悪意」どころか、当事者たちは「良かれ」と思って、目の前の目標達成や組織の正義を貫いた結果、それが期せずして組織不正に繋がってしまっている。そんなメカニズムが、本書では指摘されているのです。
これは驚くべき指摘です。「うちの会社に限ってそんなことは…」「自分は絶対に不正なんてしない」と誰もが思うはずです。しかし、近視眼的な「正しさ」の追求は、組織的な「盲目さ」を生み出してしまう可能性がある。それは、誰にでも、どんな組織にも起こりうるのだと、本書は警鐘を鳴らしているのです。
「ソーシャル・アバランチ」という名の雪崩現象
本書の副題にある「ソーシャル・アバランチ」という言葉も示唆的です。「アバランチ」とは「雪崩」を意味します。「ソーシャル・アバランチ(社会的雪崩)」は中原さんによる造語ですが、この現象を的確に捉えたメタファーだと感じました。
個々人が「正しさ」を求めるがあまり、それが積み重なることによって、個人のみならず、組織や社会などの全体が沈んでいく現象があります。本書では、これを社会的雪崩(social avalanche)と呼んでみたいと思います。
一人ひとりが、自分の持ち場で「正しい」と信じることを実行する。それは、一見すると小さな、取るに足らない行動かもしれません。しかし、その小さな「正しさ」が積み重なり、組織内で暴走し、大きく膨れ上がった結果、個人の行動の連なりが「組織的な雪崩」となり、やがて止められない「社会的な雪崩」、すなわち大規模な組織不正へと発展してしまうのです。

組織には、ルールや規範の階層構造が存在します。最上位には法律や業界基準があり、次に市場原理、そして会社の方針や理念、戦略といった組織全体のルール、最後に現場やチーム、個人レベルのルールや目標へと落とし込まれます。

現場の従業員は、多くの場合、目の前にある具体的な目標達成や、「職場レベル」のルール遵守を「正しさ」として追求します。その目標が会社の存続や自分の昇進にとって重要で、厳しいものであればあるほど、当事者たちはそれを絶対的な「正義」として捉え、がむしゃらに貫こうとします。
たとえそれが倫理観や業界の作法に反する行為であっても、目の前の「正しさ」が優先されて、グレーゾーンの行為が少しずつ容認され始める。次第に感覚が麻痺して、さらに組織的に行為が助長されて、制御不能な「雪崩」になった頃には、無自覚に法律や社会的な規範に反するレベルにまで達してしまう。下位のルールに盲目的になることで、上位のルールを踏み越えることがある。これが「社会的雪崩」の恐ろしい構造です。

※ちなみに僕の解釈を多分に混ぜてるため、正確な内容はぜひ書籍でご確認ください
コンプライアンス教育は逆効果!?正しさを指導するほど、なぜか不正が増える理由
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