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新・東北高校が求め続けた1年。楽しい野球とは?の問いと答え

最後の三振が決まった瞬間、東北高校の夏が終わった。
スコアは1ー4。
10年ぶりの甲子園まで、あと一歩届かなかった。
選手は呆然としていた。涙でひれ伏す光景はなかった。力負け、完敗。現実を受け止める選手に安どの色が見えるほど、力の差は明確だった。悔しかった。
それでも、この試合を見ていて「未来が見える」チームだと感じた。決勝の舞台に来たのは7年ぶり。この決勝の景色すら見れない年月を考えると、未来への希望を感じる試合に思えた。
決勝の相手は、全国屈指の絶対王者・仙台育英だった。
須江航監督は春の東北大会決勝で敗れた悔しさを糧に「近年で最も価値のある敗戦」と位置づけ、チームはさらに強くなって夏を迎えた。
先発した古川諒弥投手は、その象徴だった。


春の敗戦では九回に涙を流した2年生右腕が、この日は一球一球を冷静に積み重ねる。直球で押し込み、変化球でかわし、東北打線から8つの三振を奪う。9回に一点を失っても動じず、最後は自ら選び抜いたスプリットで試合を締めくくった。
敗戦を力に変える。ライバルは、また一つ強くなっていた。

完敗。3つの決勝とも1点しか取ることができなかった


しかし東北高校もまた、一年間で驚くほど成長した。
この1年は野球部が揺れ動いた1年。前・佐藤洋監督から8年ぶりに我妻敏監督が母校へ戻る。
「再建には5年はかかる」と周囲は言った。しかし現実は、その予想を大きく上回り、東北大会4強。センバツ3枠の条件を満たし、甲子園へ。22年ぶりのセンバツ勝利。夏を含めると17年ぶりの甲子園勝利。そして夏、7年ぶりの決勝進出を果たした。
なぜここまで飛躍できたか?我妻監督は「選手たちは色のついていない、カラカラのスポンジのようだった。そこに考えさせる練習を落とし込み、戦術を注ぐだけでどんどん上手くなっていった。『なんのためにこの練習をするの?』『目標は?』『日本一になるためになにをする?』。考えを明確化させ、実行させました。選手たちは、自分で考え行動するようになりました」。


「どうすれば勝てるのか」
「楽しい野球とは?」
答えを待つのではなく、自分たちで探す集団へ変わっていった。

劇的に変わったチーム。その変化に選手は必死になってついていった



仙台育英は、秋1-2、春1-4で負けている相手。
3度目の対戦。この試合も苦戦を強いられたが、東北は最後まで諦めなかった。
0ー4で迎えた9回。

主将・松本叶大は「このままじゃ終われない。チームを変えるには自分が打たないといけない」と打席に立ち、センター前へ運んだ。続く適時二塁打でホームを踏むと、両手で大きくガッツポーズをつくった。優勝には届かない一点だった。しかし、最後まで自分たちの野球を貫く姿勢が見れた。次の世代へ残す一打だった。3年生の意地が詰まった一点だった。

試合後、我妻監督は敗戦を振り返りながら、言い訳をせず完敗を認めた。

「今日は相手が上だった」
「守備で大きなミスをしたわけでもない。やることはやった。」
「だからこそ、自分の力のなさを感じた。オフェンス力も上げていかないと」

悔しさを認め、すぐに次の課題を口にした。


反撃の安打。松本は雄叫びを上げた


一年間、東北高校を追いかけてきて印象に残っているのは、
グラウンドに戻ってくる卒業生、関係者の多さだった。
試合が終わればOBが顔を出し、監督と言葉を交わし、後輩を励ます。
「帰ってきたくなる場所」が少しずつ戻ってきていたように思った。それもまた、我妻監督の人望と目指した「東北高校らしさ」の一つなのだろう。人に応援されるチームになっている。教員で生徒指導する鈴木雄太コーチとともに「学校でも応援されるチーム」を目指した。5年はかかると言われたチームは急速に変貌している。
「1位と2位との差をどう埋められるか。このままじゃ終わりたくない。また頑張ります」。最後に王者・仙台育英の高い壁。その差を埋める覚悟を口にした。



レギュラー外の意識の強さが、このチームには重要だった


 我妻監督は「再編」とは言わない。それは、新しい時代にあったチームを創る挑戦を行っているからだと思う。その手ごたえを感じた1年だった。厳しい課題も突きつけることがあったが、選手はついてきてくれた。現チームの土台をつくった前監督が11月に逝去し、選手たちは心の落胆や揺れもあったが、乗り越えてくれた。3年生への感謝は尽きない。
選手たちは試合後、晴れ晴れとした顔が印象的だった。そして口々にいった。

「やりきった」
「悔いはない」
「いい仲間に出会えた」
「たくさんの人に応援してもらえた」

春は甲子園にも行けて、最後は8000人近い観客の中でファイナルゲームができた。
改めて、支えてくれた人への感謝がこみ上げる。


だからこそ、気づけた。
「勝つことが『楽しい野球だった』と」。

甲子園連れて行けなくて、ごめんな…。と泣いた


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樫本ゆき/ Yuki Kashimoto 応援ありがとうござます。自費の取材活動に活かさせていただきます!