【稼ぐ力 第4回】教える力で年収が変わる——魚を焼くな、レシピを渡せ
稼ぐ力シリーズ第4回は「教える力」じゃ。プレーヤーとして一流でも、教えられん人間の値段はそこで止まる。おめえが後輩を持つ日の話をするで。
おめえ、来月から後輩がつくらしいのう。
「え!? なんで知っとるんですか!? まだ内示レベルの話ですよ!?」
ワシを誰じゃと思うとるんじゃ。ほんで、どうじゃ、初めての後輩は。
「正直……嬉しい半分、怖い半分です。教えるのって、自分がやるより難しそうで。」
ええ感覚じゃ。ほんなら最初に、一番大事なことを言うとくで。後輩に魚を焼いてやるな。
「……魚?」
毎朝おめえが魚を焼いてやったら、後輩は一生、魚が焼けんままじゃ。
「あ、『魚を与えるより釣り方を教えろ』ってやつですね。聞いたことあります。」
それの一段上を今日はやる。釣り方を「教える」のもまだ半分でな。レシピを渡して、隣で失敗を見守る——ここまでやって、初めて人は育つんじゃ。今日はその技術の話じゃ。
なんで「教える力」で年収が変わるんじゃ
「先輩、シリーズのテーマ確認ですけど、教える力って稼ぐ力なんですか? 教えるのって、むしろ自分の時間を取られる側じゃ……。」
ほんなら会社の値段のつけ方を教えたるわ。ええか、一人で100の仕事をする人間と、5人に80ずつやらせられる人間、会社はどっちに高い給料を払う。
「……5人×80で400だから……教えられる人、ですか。」
そうじゃ。プレーヤーの成果は足し算じゃが、教える人間の成果は掛け算じゃ。管理職の給料が高いのは、偉いからじゃない。掛け算の人間じゃからじゃ。
「……あ、だから『教えられない名プレーヤー』は昇進が止まるんですね。」
そうじゃ。ほんでな、これは管理職だけの話じゃないで。新人に教えるのが上手い若手、マニュアルを分かりやすう作れる人間、引き継ぎが丁寧な人間——「あいつに教わると育つ」という評判は、社内で一番強い通貨の一つじゃ。おめえの合体ロボ(本棚シリーズ第7回)に「教える力」を1体足しとけ。どの分野と掛けても強いけぇの。
「たしかに、『経理×教える力』って、もう研修講師ですもんね。」
そういうことじゃ。
教え方の失敗①——ワシは「全部言う先輩」じゃった
ほんで恒例の、ワシの失敗談からいくで。ワシが初めて後輩を持ったとき、ワシがやったのは「全部言う」じゃった。
「全部言う。」
資料の作り方を、フォントのサイズから言うた。電話のかけ方を、最初の挨拶の一言目から言うた。後輩が考え始めた瞬間に、答えを言うた。
「……手厚いような、息苦しいような。」
ワシは親切のつもりじゃった。じゃが半年経って、気づいたんじゃ。そいつ、ワシがおらんと何も決められん人間になっとった。
「……あ。」
「先輩、これどうしますか」「先輩、次は何をやりますか」——1日に30回聞きに来る。ワシは全部答える。答えるたびに、そいつの「考える筋肉」が細うなっていく。
「……先輩が焼いた魚を、毎朝食べさせ続けた結果ですね。」
そうじゃ。ほんで決定的な日が来た。ワシが出張で3日おらんかった時、そいつの仕事が全部止まっとったんじゃ。本人が悪いんじゃない。ワシの教え方が、そいつの足を折っとったんじゃ。
「……良かれと思って、ですもんね。」
良かれと思って、が一番怖いんじゃ。教える側の「親切」はな、往々にして自分が安心したいだけなんじゃ。失敗されるのを見とるのが怖い。待つのがもどかしい。じゃけぇ先回りして全部言う。あれは後輩のためじゃのうて、ワシの不安のためじゃった。
教え方の技術①——1on1は「話す時間」じゃない、「聞く時間」じゃ
「じゃあ、どう教えたらええんですか。」
ここで今日の教科書じゃ。『ヤフーの1on1』——本間浩輔さんの本での、ヤフーが全社でやっとる「週1回30分、上司と部下が1対1で話す」仕組みの解説書じゃ。
「1on1、うちの会社も形だけありますよ。上司の説教タイムになっとりますけど。」
それが一番あかんやつじゃ。この本の core は一つでな。1on1は部下のための時間じゃ。上司が話す時間じゃのうて、部下が話す時間。
「……え、教える側が聞くんですか?」
そうじゃ。比率で言うたら、部下が8割話して、上司は2割じゃ。ほんで上司の2割も、アドバイスじゃのうて質問——「おめえはどう思う?」「他にやり方あるか?」「で、どうしたい?」
「……それで育つんですか? 答えを教えたほうが早くないですか?」
早いで。その場はの。じゃが思い出せ、ワシの「全部言う」の末路を。答えを渡すのは魚を焼くことじゃ。質問を渡すのは、レシピを一緒に書くことなんじゃ。人間はな、自分の口から出た答えしか、本気で実行せんのじゃ。
「……あ。それ、わかります。人に言われた目標って、他人事なんですよね。」
じゃろ。ほんでな、聞くときの姿勢にも技術がある。腕を組むな。パソコンを閉じえ。「なるほど」で切るな、「それで?」で促せ。部下が沈黙したら、沈黙のまま待て。
「沈黙を待つ!? 気まずいじゃないですか!!」
気まずいのう。じゃがその沈黙はな、部下が考えとる音なんじゃ。ワシら教える側が耐えられんくて口を挟むたびに、生まれかけの答えを一個つぶしとる。
「……沈黙が、考えとる音。」
うまいこと言うたのはワシじゃけどな。
「先取りされた!!」
ほんなら練習しよか。ワシが新人役をやるけぇ、おめえが1on1をやってみい。
「え、ロールプレイですか。……じゃ、じゃあ。最近、仕事はどう?」
……べつに。
「え。」
べつに、っす。
「新人役が濃い!! やりにくいタイプで来た!!」
現実はこう来るんじゃ。ほれ、どうする。「べつに」で終わらせるか。
「……えっと。『べつに』の中でも、強いて言えば一番気になっとることって何かある?」
……まあ、電話は、ちょっと。取るの怖いっす。
「お!! 出てきた!! ……電話、何が一番怖い?」
誰からか分からんとこ、っすかね。
「……じゃあ、まず社内の内線だけ取るのから始めてみる? 内線なら相手は社員だけだし。」
……それなら、まあ。
——はい、ここまで。おめえ、今の自分の発言を振り返ってみい。一回もアドバイスしとらんのに、新人が自分から対策を選んだじゃろ。
「……ほんまじゃ。質問しかしてない。しかも最後、本人が『それなら』って言うた。」
それが1on1じゃ。自分の口から出た対策はの、実行されるんじゃ。……ほんで、ワシの新人役はどうじゃった。
「トラウマになるレベルで面倒でした。」
現場はもっと濃いで。楽しみにしとけや。
教え方の技術②——背中を見せるな、ついていきたい背中になれ
もう一冊いくで。『ついていきたいと思われるリーダーになる51の考え方』——岩田松雄さん、スターバックスやザ・ボディショップのトップをやった人の本じゃ。
「リーダー論ですか。ワタシ、後輩1人ですけど。」
後輩が1人おったら、もうリーダーじゃ。ほんでこの本の core はタイトルが全部言うとる。リーダーシップいうのは「引っ張る力」じゃのうて、「ついていきたいと思われる力」じゃ。
「……何が違うんですか。」
引っ張るのは、おめえの腕力じゃ。ついていきたいは、相手の意志じゃ。腕力で引っ張っとる限り、おめえが疲れたら全部止まる。じゃが「この人についていったら成長できる」と思われたら、後輩は勝手に走る。
「どうやったら、そう思われるんですか。」
この本から3つだけ持って帰れ。
ミッションで語れ。「やれ」じゃのうて「何のためにやるか」から話す。作業を渡すな、意味を渡せ
手柄は後輩に、責任は自分に。 逆をやる先輩の下から、人は静かにおらんくなる
弱みを見せえ。 完璧な先輩は、後輩から相談されん。ワシがこの連載で失敗談ばっかり話しとるのはの、あれが一番、人が心を開く技術じゃからじゃ
「……あ!! この連載のFXの100万円も、冷蔵庫の上の書類も、全部『弱みを見せる』の技術だったんですか!!」
技術でもあり、ただの実話でもある。悲しいことにの。
「実話なんかい!!」
あと一個、褒め方も教えとくで。後輩を褒めるときはの、結果じゃのうて過程を褒めえ。
「結果じゃなくて、過程。」
「受注おめでとう」だけじゃとの、受注できんかった月に、そいつは自分を無価値じゃと思う。「あの見積もりの出し直し、先方の予算を先に聞き直したのが効いたの」——何が良かったかを名指しで褒めるんじゃ。過程を褒められた人間はの、結果が出ん月も、正しい過程を繰り返せる。
「……積立と同じですね。評価額(結果)じゃなくて、入金の継続(過程)を見る。」
おお、ええ接続じゃ。人も資産も、過程を褒めて育てるもんなんじゃ。
教えることは、二度学ぶことじゃ
「先輩、ここまで聞いて思ったんですけど……教えるのって、結局自分が一番勉強になりません? 後輩に説明できるように、自分の仕事を整理し直すことになりそうで。」
……おめえ、今日一番ええこと言うたで。教えることは、二度学ぶことじゃ。
「あ、なんかことわざっぽい。」
フランスの思想家の言葉じゃと言われとる。ええか、人に教えようとした瞬間、自分の理解の穴が全部見えるんじゃ。「なんとなくやっとった」が通用せん。なんでこの手順なんか、なんでこっちが先なんか——後輩の「なんでですか?」は、おめえの理解度テストなんじゃ。
「……後輩に教える1年は、自分の仕事を作り直す1年でもあるんですね。」
そうじゃ。ほんでな、ここだけの話、ワシがこの連載で投資や本の話を書き続けとる一番の理由もそれじゃ。おめえに説明しようとするたびに、ワシの理解の穴が見つかる。埋める。また書く。教える側が、一番安い授業料で、一番深う学んどるんじゃ。
「……この連載、先輩の勉強でもあったんですか。」
そうじゃ。じゃけぇおめえも後輩を持ったら、「教える側に回ったら損」と思うな。あれは給料をもろうて受けられる最高の研修じゃ。
結局、何が大事なんじゃ
「先輩、まとめをお願いします。」
第4回の core はこれじゃ。
教える力は掛け算の力じゃ。 プレーヤーは足し算、教える人間は掛け算。会社は掛け算に金を払う
魚を焼くな、レシピを渡せ。 全部言う親切は、相手の考える筋肉を細らせる
1on1は聞く時間じゃ。 部下8割、自分2割。アドバイスより質問。沈黙は考えとる音
ついていきたいと思われる背中を作れ。 意味を渡す・手柄は後輩に・弱みを見せる
教えることは二度学ぶこと。 後輩の「なんでですか?」は無料の理解度テストじゃ
「来月、後輩が来たら……まず何からやればいいですか。」
初日にの、仕事を教える前に、30分だけ話を聞け。どこから来て、何が得意で、何が不安か。教える前に、知るんじゃ。レシピを渡す相手の、アレルギーも好みも知らんで料理は教えられんけぇの。
「……初日は、聞くだけ。覚えました。」
ほんでな、最後に一個だけ予言しとくで。半年後、おめえはその後輩に、NISAの相談をされる。
「え!? なんでですか!?」
おめえが昼飯のときに、嬉しそうに積立の話をするからじゃ。ほんでそのとき、おめえは気づくんじゃ。ワシがこの連載でやってきたことを、おめえが後輩にやり始めとることにの。
「……あ。……ワタシが、パイセンになる日が来る。」
そうじゃ。教わった人間が教える側に回る——それが「稼ぐ力」の一番きれいな増え方じゃ。以上じゃ。
「……その日が来たら、例え話、借りますね。」
バスと弁当箱は貸したるわ。原始人は使用料を取るで。
「例えに使用料!! ……ちなみにおいくらですか。」
使うたびに、おめえの積立に100円じゃ。
「支払先がワタシ!? ……あ、それ、腹立ち積立と同じ仕組み。」
ええ仕組みは使い回すんじゃ。
今日の一冊
📚 「ヤフーの1on1」 本間浩輔 著
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「聞いて育てる」の教科書じゃ。対話例が漫画で入っとるけぇ、明日の後輩との会話にそのまま使える。部下・後輩を持った週に読むのが一番効く。
📚 「ついていきたいと思われるリーダーになる51の考え方」 岩田松雄 著
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肩書きで引っ張らんリーダーシップの51箇条じゃ。1項目が短いけぇ、寝る前に1個ずつ読め。
あわせて読むなら(稼ぐ力→増やす力)
📚 「1分で話せ」 伊藤羊一 著
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教えるのも伝え方じゃ。稼ぐ力シリーズ第1回とセットでの。
📚 「多動力」 堀江貴文 著
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合体ロボに「教える力」を足す発想の元はこっちじゃ。本棚シリーズ第7回で解説しとる。
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📚 本は「読む前に買う」もんじゃ
紹介した本が全部要るわけじゃない。1冊だけ選んで、今日カートに入れえ。
「明日でええか」と思うた本を、人は一生買わん。ワシがそうじゃった。
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