円安シリーズ第1回 — 1ドル163円。円安で損しとるのは、誰なんじゃ
円安は「いい・悪い」で語るもんじゃねえ。「誰が得して、誰が損するか」で見るもんじゃ。ほんで、損する側の席にはな——ほぼ全員が座っとる。
「先輩、ニュース見ました? 1ドル163円ですって」
見とる。ワシはさっきから茶の間で正座して見とる。
「なんで正座なんですか」
事件じゃからじゃ。テレビの前で寝転がって見てええニュースと、正座して見なならんニュースがある。これは後者じゃ。
「……先輩の中に、そんな分類あったんですね」
ある。台風と、地震と、円安じゃ。
「円安、そこに入るんですか」
入る。ゆっくり来る災害じゃけぇ、みんな正座せんだけじゃ。
まず、円安ゆう言葉の覚え方から始める
ええか。円安ゆうんはな、円高とどっちがどっちか分からんようになるじゃろ。
「なります。毎回なります。ニュースで『円安が進み』って言われるたびに、頭の中で3秒止まります」
じゃけぇこう覚えるんじゃ。「円の価値が安くなる」。円と安で、そのまま文章を作りゃあええ。
「あ、それは覚えやすい」
覚えやすいじゃろ。ほんでな、覚えやすいだけで、中身は災害じゃ。
「災害!!・・・。」
数字で見りゃあ一発じゃ。昔は1ドルと交換するのに110円出しゃあよかった。今は163円出さんと交換してくれん。
「同じ1ドルなのに、53円も余計に要るってことですか」
そうじゃ。おめえが海外のサイトで100ドルの物を買うとする。110円の時代なら11,000円じゃった。今は16,300円じゃ。
「5,300円増えてる……。物の値段は上がってないのに」
そこじゃ。物は何も変わっとらん。変わったんは、おめえの持っとる円の方じゃ。
「……値札じゃなくて、財布の中身が変わったってことですか」
やっと分かったか。今日はその話じゃ。
おめえの1万円札は「日本商店街の商品券」じゃ
ええか。日本円ゆうんはな、世界から見りゃあ**「日本商店街の商品券」**なんじゃ。
「商店街って。日本は国ですよ、先輩」
世界の両替屋から見りゃあ一緒じゃ。おめえの財布に入っとる1万円札はな、日本の外に出たらただの商品券よ。「この券、日本の商店街でしか使えませんけど、なんぼで買い取ってくれます?」ゆう紙切れじゃ。
「言い方が急に雑になりましたね」
ほんでその商品券が今、世界中で買い叩かれよる。「昔は110円分でドルと替えたるゆうたけど、今は163円分持ってこんと替えられんで」ゆうてな。
「商品券のレートが悪くなってる」
そうじゃ。ここで大事なんはな、欲しいもんが安うなるんは嬉しい。ほんでも、持っとるもんが安うなるんは地獄、ゆうことじゃ。
「どういうことですか」
おめえ、こないだ軽トラ買うたじゃろ。あの軽トラの値段がな、毎月毎月、下がっていきよったらどう思う。
「嫌ですね。買った直後にセールが始まるみたいな」
それが今、おめえの財布ん中で起きとるんじゃ。おめえの財布に入っとるんは円じゃろ。ドルやユーロは入っとらんじゃろ。
「入ってません。というか、財布に外貨が入ってる人の方が珍しいでしょう」
そこがミソじゃ。日本人はみんな、円ゆう商品券で給料をもろうて、円で貯金しとる。その円が、安うなりよる。
「……ちょっと待ってください。それ、僕の貯金も安くなってるってことですか」
世界から見りゃあ、そうゆうことじゃ。通帳の数字は1円も減っとらん。減っとらんのに、買えるもんが減っとる。
「数字が減らずに、価値だけ減る」
そうじゃ。通帳の数字はな、嘘はついとらんが、本当のことも言うとらん。
「……なんか今日、たまに真顔で怖いこと言いますね」
ほんで、なんぼ高うなるんか
「具体的に、何が高くなるんですか」
輸入しとるもん全部じゃ。ガソリン、小麦、大豆、飼料、iPhone、パソコン、外国のブランド品、海外旅行。
「けっこう生活の真ん中にありますね」
真ん中どころか、土台じゃ。小麦が上がりゃあパンもうどんもラーメンも上がる。飼料が上がりゃあ肉も卵も牛乳も上がる。ガソリンが上がりゃあ運ぶ費用が全部に乗る。
「……ドミノ倒しじゃないですか」
ドミノよりタチが悪い。ドミノは倒れる音がするじゃろ。円安は音がせん。
「音がしない」
値札がな、ある日いきなり2倍になったら誰でも怒る。じゃが、10円ずつ、しれっと上がっていくんじゃ。ほんで気づいた時にゃあ、「あれ、こんな値段じゃったかな」で終わる。
「……終わりますね。正直、終わってます」
怒れんまま貧しくなるんが、円安のいちばん怖いところじゃ。
「先輩、今日ちょっと語彙が刺さりすぎます」
円安で得する人——両替所でボーナスが出る人ら
「でも先輩、テレビで『円安は日本経済にプラス』って言ってる人もいましたよ」
おるな。あれは嘘をついとるんじゃねえ。見とる席が違うんじゃ。
「席?」
野球場と一緒じゃ。バックネット裏で見とる人と、外野席で見とる人と、球場の外で音だけ聞いとる人がおる。同じ試合を見て、感想が違うんは当たり前じゃ。
「……その例え、けっこう分かりやすいですね」
たまには出るんじゃ。ほんで円安で得する人は、ちゃんとおる。まず、輸出しとる大企業じゃ。アメリカで車を売っとる会社はな、代金をドルでもらう。ほんでそのドルを円に替える。1ドルが110円の時代にゃ110円になって返ってきた札が、今は163円になって返ってくるんじゃ。
「同じ1ドルなのに」
そうじゃ。両替所を通るだけで札束が分厚うなる。商売の中身は何も変わっとらんのに、両替でボーナスが出よるんじゃ。
「それはうまいこと言いますね」
もう一組おる。海外の株や資産で財産を持っとる投資家じゃ。あの人らの財産はドル建てじゃけぇ、円が安うなりゃあ、円に直した時の財産は勝手に膨らむ。
「寝てても増えるんですか」
寝とる間に、日本におる全員の財布が薄うなった分だけな。
「……言い方」
事実を言うとるだけじゃ。
「じゃあ、損するのは……」
それ以外、全員じゃ。
「全員」
ええか。トヨタに勤めとる人はようけおる。ほんでもそれは「トヨタで働いとる」んであって「トヨタを持っとる」んじゃねえ。
「あ」
ユニクロの服を着とる人はようけおる。ほんでもユニクロの会社を持っとるわけじゃねえ。円で給料もろうて、円で貯金して、輸入品を買うて暮らしとる普通の人はな、円安になりゃあガソリンも小麦もiPhoneも高うなって、財布だけが軽うなる。
「……僕、完全に損する側の席じゃないですか」
ワシもじゃ。じゃけぇ正座しとるんじゃ。
「せめて座布団は敷いてください」
「外為特会がホクホク」——政府はどっちの席に座っとるんか
ほんでな、今年の1月31日、高市総理が川崎の演説でこうゆうた。「円高がいいか円安がいいかは分かりません」。その上で**「輸出産業さんにとっては大チャンス」、ほんで「外為特会がホクホク」**ゆうたんじゃ。
「がいためとっかい……? 新しいお菓子ですか」
外国為替資金特別会計。ざっくりゆうたら、政府が持っとる外貨の財布じゃ。政府はドルをようけ持っとるけぇ、円安になりゃあ、円に直した時の資産が膨らんでホクホクする。
「え、じゃあ政府は『得する側』の席に座ってるんですか」
外為特会だけ見りゃあ、そうなる。
「……なんか、審判がどっちかのチームのユニフォーム着てるみたいな話ですね」
おめえ、今日ええこと言うたな。
「褒められても嬉しくないやつですね、これ」
ほんでもな、公平に言うと、政府は損もしとる。輸入品が高うなりゃあ物価対策に金を出さなならん。国民の生活も苦しゅうなる。じゃけぇ「政府は円安で得しとる」と単純には言えん。
「あ、そこはちゃんとフォローするんですね」
ワシは断言はするが、嘘は言わん。大事なんは、政府にも「得する財布」と「損する財布」が両方ある、ゆうことじゃ。ほんで、どっちの財布の話をするかで、演説の中身は変わる。
「……で、僕らはどうなんですか」
ワシらは外為特会を持っとらん。輸出大企業も持っとらん。ワシらが持っとるんは、安うなりよる円だけじゃ。財布は1個しかない。
「1個しかない側からすると、なかなかしんどい話ですね」
そうじゃ。じゃけぇ「円安がええか円高がええか」は、「誰にとって」を抜きにしたら答えの出ん問いなんじゃ。ほんで政治ゆうんは、どっちの席に向いて喋っとるかが全部なんじゃ。
「……なんか、静かに怖くなってきました」
ほんなら、損する側の席で何ができるんか
「先輩、で、僕はどうすればいいんですか」
今日はまだ処方箋の日じゃねえ。診断の日じゃ。
「診断だけして帰らせる気ですか」
医者もそうじゃろが。初診でいきなり手術はせん。
「まあ……そうですけど」
ほんでも今日、1個だけ持って帰れ。自分がどの席に座っとるかを確認せえ。それだけでええ。
「席の確認」
給料は何で入ってくる。円じゃろ。貯金は何で置いとる。円じゃろ。買うとるもんは。輸入品まみれじゃろ。
「……全部、円です」
それが確認じゃ。おめえは今、円ゆう1つの通貨に、人生の全額を賭けとる。
「賭けてるつもりはないんですけど」
賭けとるつもりがないんが、いちばん危ないんじゃ。競馬場で「わし賭けとらんよ」ゆうて全財産を1点に置いとる人間と一緒じゃ。
「……その例え、やめてもらっていいですか」
やめん。この話は第5回でもう一回やる。
「引っ張るんですね」
怖がるんはまだ早えぞ。なんでここまで円だけが安うなったんか。その理由がまた、ぼっけえ怖いんじゃ。それは次回にする。
「頼むから、次回は明るい話にしてください」
結局、何が大事なんじゃ
円安とは**「円の価値が安くなる」**こと。値札が変わったんじゃのうて、おめえの持っとる円の方が変わった
1ドル110円→163円。同じ100ドルの物が11,000円→16,300円になる。物価が上がっとるように見えて、実は円が下がっとる
通帳の数字は減らん。減らんまま、買えるもんだけが減る。怒れんまま貧しくなるのが円安のいちばん怖いところ
円安は「いい・悪い」じゃのうて、**「誰が得して誰が損するか」**で見る
得する側:輸出大企業・海外資産を持つ投資家・外貨を持つ政府(外為特会)
損する側:円で給料をもらい、円で貯金し、輸入品を買うて暮らす人——つまり大多数
「円安は経済にプラス」ゆう意見は嘘じゃのうて、見とる席が違うだけ。まず自分がどの席に座っとるかを確認せえ
次回は、今回の円安の不気味なところ——**世界で円だけが安うなっとる「独歩安」**の話じゃ。
今日の参考書籍
まず、この3冊は全シリーズ共通の土台じゃ
📚 「本当の自由を手に入れる お金の大学」 リベ大・両学長 著
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貯める・稼ぐ・増やす・守る・使う。金の全体地図はこの1冊で足りる。円安の話も結局は「守る力」の話じゃ。
📚 「ジェイソン流お金の増やし方」 厚切りジェイソン 著
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「円だけで持っとくな」を、いちばん短い言葉で言い切っとる本じゃ。今日の話の答え合わせに使える。
📚 「20代から始める新NISA 高配当株投資術」 プラズマコイ 著
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損する側の席から一歩ずらす、いちばん現実的な方法が書いてある。
ほんで今回のテーマなら、この2冊じゃ
📚 「カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本〈日本経済編〉」 細野真宏 著
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円安・金利・日銀。経済ニュースの「そもそも」が図解で分かる定番じゃ。累計200万部超のロングセラー。
📚 「知らないと損する 池上彰のお金の学校」 池上彰 著
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そもそも金とは何か、為替とは何か。ここが分かっとらんまま投資の本を読んでも身につかん。
出典
中田敦彦のYouTube大学「【止まらない円安と骨太ショック】日本がヤバい」 https://www.youtube.com/watch?v=cTHMmdnBORQ(参照日:2026-07-29)
為替レート・演説内容等の時事情報は上記動画の解説に基づく(2026年7月時点)
📚 本は「読む前に買う」もんじゃ
紹介した本が全部要るわけじゃない。1冊だけ選んで、今日カートに入れえ。
「明日でええか」と思うた本を、人は一生買わん。ワシがそうじゃった。
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⚠️ 本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資は自己責任で行ってください。また、本記事は特定の政党・政治家を支持または批判する意図はありません。

