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『インフレリスク』——ガリガリ君の価格から学ぶ、現金の価値が目減りする恐怖【守る力 第5回】


最後の罠は「目に見えん敵」じゃ。詐欺は気づく、浪費も気づく、災害はもっと気づく。ほんでインフレだけは、気づかんまま資産が減っとる。


「先輩、最後の罠は何ですか」

インフレじゃ。

「物価上昇ですね。ニュースでよく聞きます」

ほんで、これがいちばん怖い。

「……4つの中でですか。詐欺より?」

詐欺より怖い。

「……なんでですか」

詐欺は気づくからじゃ。

「あ」

120万円取られたら、その日に気づく。腹も立つ。次から気をつける。 ほんでインフレは——

「……気づかない」

10年経ってから「そういや高うなったな」と思うだけじゃ。 腹も立たん。誰も悪者がおらんけぇな。

「……犯人がいない」

犯人がおらん犯罪じゃ。 それが今日の話じゃ。



ガリガリ君は30年で30%上がった

まず、みんなが知っとる話からいく。

ガリガリ君は、ワシがガキの頃100円じゃった。今は130円じゃ。

「……30円上がってますね」

30年で30%上昇じゃ。

「……年に直すと?」

年0.88%くらいじゃ。

「……1%もないんですか。小さいですね」

小さいじゃろ。ほんでな、逆から見い。

「逆」

おめえが30年前に持っとった100円は、今130円出さんと同じもんが買えん。

「……あ」

100円の価値が、30年で77円になったゆうことじゃ。

「……えっ」

金額は減っとらん。100円玉は100円玉のままじゃ。 ほんで買える量が減った。

「……円安シリーズと同じ話ですね」

よう気づいた。 円安は「外国のもんが買えんくなる」話。インフレは「国内のもんが買えんくなる」話じゃ。構造は同じよ。


値段が変わっとらんのに、中身が減る話

ほんで、ここからが本題じゃ。ガリガリ君はまだ親切な方じゃ。

「……親切?」

値段を上げてくれたからじゃ。

「……値上げが親切なんですか」

気づけるじゃろ。

「……あ」

気づけん値上げがある。

「……なんですか」

袋の中身が減っとるやつじゃ。

「……あー!!」

気づいたか。

「ポテトチップスですね。昔より軽い気がしてました」

気のせいじゃない。 ほんで、これがないちばんタチが悪い。

「なんでですか」

値札が変わっとらんけぇ、家計簿に出てこん。

「……あ」

「今月も食費は5万円じゃった」と思うとる。ほんで買えた量は去年より減っとる。

「……家計簿では見えない」

そこじゃ。 ワシはこれを**「静かな値上げ」**と呼んどる。

「……先輩、それ怖い話ですね」

怖い。ほんで誰も悪うない。 材料費も人件費も上がっとるんじゃから、企業もそうするしかない。

「……誰も悪くないのに、こっちだけ減る」

それがインフレじゃ。


現金1,000万円が、30年後にいくらになるか

数字を出す。1,000万円を銀行に置いといた場合じゃ。

「はい」

物価が**年1%**上がり続けたとする。30年後、その1,000万円で買えるもんは——

| 期間 | 買える量(今の価値に換算) |
|---|---|
| 10年後 | 約905万円 |
| 20年後 | 約820万円 |
| 30年後 | 約742万円 |

「……258万円、消えてる」

通帳の数字は1,000万円のままじゃ。

「……減ってないのに減ってる」

そうじゃ。 ほんで、ここで多くの人がこう言う。

「でも預金には金利がつくじゃろ」

「……つきますよね。最近上がったって聞きました」

上がった。ほんで、次の章じゃ。


2026年、物価は1.7%上がっとる

ここから今の話をする。2026年6月の物価は、前年比で+1.7%じゃ。

「……1.7%」

さっきの計算は年1%でやった。今は1.7%じゃ。

「……もっと速い」

速い。 ほんで預金の金利はどうか。

  • メガバンクの普通預金:0.4%(2026年8月から)

  • 金利のええネット銀行:年1.0%(上限つき)

「……1.0%と1.7%」

負けとる。

「……ええ口座に移しても負けるんですか」

負けとる。しかも利息には20%の税金がかかる。

「……税引き後だと0.8%くらい」

そうじゃ。実質で年0.9%ずつ、静かに減っとる。

「……」

「……先輩、じゃあ預金する意味は」

ある。 ここは間違えるな。

預金は「増やす道具」じゃのうて、「いつでも使える状態を保つ道具」じゃ。

「……生活防衛資金」

そうじゃ。 病気も失業も災害も、現金が要る。 その分は預金でええ。物価に負けてもええ。

「……保険と同じ考え方ですね。前回の」

そこじゃ。 ほんで全財産を預金に置くんは、全財産を保険にしとるのと同じじゃ。


インフレに勝つ側にどう回るか

「じゃあ、どうすればいいんですか」

インフレで得する側に、少しだけ回っとくことじゃ。

「得する側?」

考えてみい。ガリガリ君が130円になって、損したんは誰じゃ。

「……買う人ですね」

ほんなら、得したんは。

「……売ってる会社?」

そうじゃ。 物の値段が上がるゆうことは、それを売っとる会社の売上が上がるゆうことじゃ。

「……あ」

その会社の株を持っとったら、おめえは値上げの側に回れる。

「……買う側と売る側、両方に立てる」

それが株を持つゆうことの意味じゃ。

「……なんか腑に落ちました」

インフレはな、金を持っとる人から、モノを持っとる人に、価値が移る現象じゃ。じゃけぇモノ(株・不動産など)を少し持っとけゆう話になる。

「……先輩、でも株は下がりますよね」

下がる。1年や2年では負けることもある。 ほんで30年で見た時に、現金だけで持っとるリスクの方がでかいゆうことじゃ。


30年後の差を計算する

具体的に見せる。月5万円を30年間でやってみるで。

パターンA:全部預金(金利ほぼゼロ)

  • 積み立てた元本:1,800万円

  • 30年後の額面:約1,800万円

  • 物価1%で実質価値:約1,340万円

パターンB:インデックス積立(仮に年5%)

  • 積み立てた元本:1,800万円

  • 30年後の額面:約4,160万円

  • 物価1%で実質価値:約3,090万円

「……実質で1,750万円の差」

そうじゃ。 ほんで注意して聞け。年5%は約束された数字じゃない。

「……はい」

暴落は必ず来る。半分になる年もある。 ワシは狼狽売りで200万円溶かした男じゃ。

「……使う力シリーズの」

そうじゃ。じゃけぇ、この表を見て「株にすれば勝てる」と思うな。

「……じゃあ何を思えばいいんですか」

「現金だけで持つのも、ひとつの賭けじゃ」と思え。

「……あ」

「何もせん」も選択じゃ。ほんで、それは「物価が上がらん方に賭ける」ゆう選択なんじゃ。

「……賭けてるつもりがないのに」

円安シリーズで言うたじゃろ。「賭けとる自覚がないのが、いちばん危ない」

「……つながりましたね」

全部つながっとる。守る力の5つの罠は、最後にここに着く。


結局、何が大事なんじゃ

  • インフレが4つの罠の中でいちばん怖い理由は、犯人がおらんことじゃ。詐欺は気づく、インフレは10年気づかん

  • ガリガリ君は30年で100円→130円。逆から見ると、100円の価値が77円になったゆうことじゃ

  • もっと怖いんは「値段が変わらんまま中身が減る」タイプの値上げ。 家計簿に出てこんけぇ、気づけん

  • 1,000万円を預金に置くと、物価が年1%でも30年後に買えるものは約742万円分通帳の数字は減っとらん

  • 2026年6月の物価は+1.7%。 金利のええ預金でも年1.0%(税引後約0.8%)で、実質は年0.9%ずつ減っとる

  • ほんでも預金は要る。 預金は「増やす道具」じゃのうて**「いつでも使える状態を保つ道具」**じゃ。全財産を預金に置くんは、全財産を保険にしとるのと同じ

  • インフレは、金を持っとる人からモノを持っとる人へ価値が移る現象。 株を持つゆうんは、値上げする側に回っとくゆうことじゃ

  • 月5万円を30年——預金なら実質約1,340万円、年5%で運用できたなら実質約3,090万円。ただし5%は約束されとらん

  • 「何もせん」も賭けじゃ。物価が上がらん方に賭けとることになる

次回はまとめ版じゃ。5つの罠を1本にして、チェックリストにする。


今日の参考書籍

まず、この3冊は全シリーズ共通の土台じゃ

📚 「本当の自由を手に入れる お金の大学」 リベ大・両学長 著
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インフレに対抗する「増やす力」の基本が全部ある。 守るだけでは守れんゆうんが、この本の答えじゃ。

📚 「ジェイソン流お金の増やし方」 厚切りジェイソン 著
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「現金で持っとくのがいちばん危ない」を、いちばん短く言い切っとる。

📚 「20代から始める新NISA 高配当株投資術」 プラズマコイ 著
Amazonで見る楽天で見る

値上げする側に回る第一歩が、漫画で分かる。体力が要らんのがええ。

ほんで今回のテーマなら、この3冊じゃ

📚 「世界インフレの謎」 渡辺努 著
Amazonで見る楽天で見る

なんで世界中で物の値段が上がったんか。 今の1.7%が何なんか、データで分かる新書じゃ。今日の話の教科書よ。

📚 「敗者のゲーム」 チャールズ・エリス 著
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「年5%は約束されとらん」を50年言い続けとる古典。 期待しすぎんために読め。

📚 「投資の大原則」 バートン・マルキール/チャールズ・エリス 著
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インフレに負けん資産の組み方が、薄い本にまとまっとる。 分散・低コスト・長期の3つだけじゃ。


関連記事

  • 守る力シリーズ第4回 — 災害リスク

  • 金利シリーズ第2回 — 預金金利が上がった(物価1.7%との綱引き)

  • 円安シリーズ第1回 — 通帳の数字は減らんまま、買えるもんが減る


出典・注記

  • ガリガリ君の価格推移は一般に報じられている情報に基づく概数

  • 2026年6月の消費者物価指数は総合で前年同月比+1.7%:参照:ニッセイ基礎研究所(参照日:2026-07-29)

  • メガバンク3行の普通預金0.400%(2026年8月3日引き上げ予定)、ネット銀行の普通預金年1.00%(上限あり):参照:Business Insider Japan(参照日:2026-07-29)

  • 記事中の積立シミュレーションは月5万円・30年・年5%(複利)を仮定した概算。年5%は将来のリターンを約束するものではない。実質価値は物価上昇率年1%で割り戻した概算

  • 預金利息への課税は20.315%


⚠️ 本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資は自己責任で行ってください。
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