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【エッセイ】陰口言う人、言われる人。それに聞き耳立てる人

(1300文字)
久しぶりに近所のホルモン焼き屋へ。
カウンターでひとり、活字を追いながらホルモンをひっくり返し、生ビールを口に運んでいると、隣に二人組が座った。
ひとりはジャガイモ顔のポロシャツ、ひとりは細身でぴっちりした白いワイシャツ。二人とも四十代くらいだけど、ジャガイモの方が先輩のようだ。
それぞれに違う銘柄の瓶ビールを注文し、ワイシャツがジャガイモにお酌をしようとすると、ジャガイモはいいからとそれを制する。
「もっと出世したらお酌してもらうよ」
「これ以上、出世する気ですか?」
「俺さ、1500万は稼ぎたいんだよね。そうなったらお酌してもらうよ」
何の仕事だか分からないけど、景気の良い金額。
「社長っていくら稼いでいるんでしょうね?」
「社長は額面が低くたって、経費で何とでもなるんじゃねぇの?」
社長の存在が近い感じがする。ということは地元の中小企業か?とにかくボクとは違う世界。ちょっと怪しい臭いもする。
そうなると俄然興味が湧いて、本を閉じて聞き耳を立てるよね。

「なんであいつら、同じことやってられるんですかね?」
「なんにも考えてねぇんだよ」
仕事仲間に対する愚痴なのか。どういう会社なのかは分からない。その後も愚痴なのか、陰口なのか、そういう話が続く。
ワイシャツには頻繁に電話がかかってきて、その度に躊躇なく出る。仕事の電話らしく、ジャガイモは咎める様子もない。
電話の相手はワイシャツより上の立場らしく、少々ペコペコした感じで、しかし実際に頭を下げることもなく話をしては、短い時間で切ると、またジャガイモとの会話に戻る。
「いやぁ、この前、困っちゃって。そういう時、どうしてます?」
「ああ、そういう時はさ、サプライヤーを泣かせれば良いんだよ」
「え?良いんですか?」
「良いの、良いの。仕事なんだから」
お友達になりたい二人じゃないなと思う。

とはいえ、どこの会社でもこういう会話はされているのかな、とも思う。
何の仕事か分からないけど、稼げる分、ストレスが多いような仕事なのかな、とも。
ただね、嫌だなと思ったのが咀嚼音。二人とも咀嚼音が大きいのよ。くちゃくちゃと口を開けたままホルモンを噛みしめる。さすがに聞き耳を立てるのが嫌になった。まぁ、頼まれたわけじゃなくて、こっちが悪いんだけど。
時々、こういう咀嚼音が大きい人っているけど、ボクが女性だったら、いくら稼ぐ人でも絶対に嫌だな。店で一緒に食べるのも恥ずかしくなると思う。

「あれ?営業のAさんBさん、帰ったの?」
「ああ、帰ったわよ。飲みに行くって。ホラ、あのホルモン屋」
「ああ、あそこ美味しいもんね。誘われなかったの?」
「誘われたわよ、奢るって。でも無理」
「だよね〜、私も無理」
「Bさん、また婚活で振られたらしいんだけどさ、稼ぎもあるし、見た目も悪くないと思うんだけど、どうしてかな?なんて言うのよ」
「なんて答えたの?」
「なんてって、くちゃくちゃ音出して食べるからじゃないですか?なんて言えないわよ」
「だよね〜。ハハハ」

なんて、事務の女の子たちに言われてたりしてね。
まぁ、こんな想像してるボクが一番タチが悪い感じがするけど、物を書く人間の性として許してもらおう。

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