kのアトリエ
着いたばかりの美月は、額の汗をふきながら涼んでいた。
カバンから水筒を出し、一気に喉を潤し、やっと汗もひいてきた。
ここは、駅から徒歩で十分くらいの図書館。
今日は、平日の割には若干、人が多い気がするが、いつも通り、ここで借りた本を出し、自分のペースで読み進める。
今年も、去年よりも上回る猛暑、、
程よく、冷房もきいてて生き返る。
季節問わず、私のお気に入りの場所だ。
暫く没頭していると、頭の上で声がした。
「やぁ」
「ごめん、邪魔しちゃったかなぁ…」
それは、圭人だった。
一年くらい前に、この近くに引っ越してきて、この図書館に通ってるうちに、いつの間にか顔見知りになり、今では、雑談をしたりする関係。
彼は、小林圭人。
ついでに云うと、私は内藤美月。
二人共、別の学校に通う大学生だ。
「ここ、席いいかなぁ?」と、美月の正面の席に指をむけて…
「はい、どうぞ」(美月)
圭人は座り、汗をハンカチでぬぐいながら…
「あの、こないだ頼んだ件なんだけど…??」
「返事はどうかなぁ…?」
圭人が遠慮がちに聞くと…
美月は読んでた本をパタンととじて、、
「私で良ければ…」と、返事をした。
圭人は、、
「良かったぁー」
「断られるかなぁーってドキドキだった」(汗)
美月は、「ただ、何かしらのポーズをとるのは、ちょっと恥ずかしいわ」(苦笑)
圭人は、「それなら、心配無用!」(笑)
「君には、ただ本を読んでいてほしいんだ」
美月は目をまんまるくした。
「いつも通りの君でいいんだよ」
本を読んでるところを描きたいだなんて、かなり予想外…
(美月は心の声で呟いた)
「そういうことなら安心しました」(美月)
実は、こないだ、圭人に絵のモデルになってくれないかと頼まれてた。
最初は、少し驚いたけど、ちょっと嬉しくもあった。
そう…
私は、いつの間にか、圭人くんのことが気になる存在になっていたの…♡
でも、圭人くんは、美大生で、近々、作品を出さないといけないらしく、たまたま、頼みやすそうな私に声を掛けただけ。
私も同じ大学生だし、一つ下…
何も深い意味はないのだ。
「ね?どうする?一度、アトリエ下見しとく?」
「もし、このあと時間有るなら、近くだから見てみない?」
「そ、そうだね」(美月)
そうして、二人はアトリエに向かった。
「ほら、あそこだよ」
圭人は、腕をスーッとのばし、指さした。
青い屋根の大きなお家が見えた。
「美月ちゃん、犬は大丈夫?」
「うん、大好きです」(美月)
「そっか!良かった」
「うち、大きいのがいるから」
「大型犬?」(美月)
「うん。ゴールデンレトリバー。優しい子だよ」
「そうなんだぁ」(美月)
話してたら、ご自宅に着いた。
「アトリエは庭の裏なんだ」(圭人)
そう言って、庭に行くと、レトリバーが大きな尻尾をブルンブルンふっていた!(笑)
「ジョン!」(圭人)
「ワン!」
「あとで、散歩連れていくからな」
「ワンワン!」
「可愛いわね!優しい目をしてる」(美月)
「どうぞ、ココ!」
「アトリエk」って書いてある…
圭人のkか。(美月)
「お邪魔しまぁーす」(美月)
「わぁー絵の具の匂いで溢れてる!」(美月)
「私、初めて!」
「なんか、ステキですねー♪」
「沢山の、絵の具や筆…色んな絵たちがイッパイ!」
「ゴチャゴチャしてるけどごめんね」(圭人)
「暑いよね!冷房つけるね!」
「あ、あと、なんか飲みもの持ってくるね!ちょっと待ってて!」
圭人くんは急いで出ていった。
圭人くん、いつも、ここで絵を描いてるんだぁー!
流石に、画家志望の人は違うな。本格的だもの。
「お待たせー」(圭人)
「冷房きいてきた?」
「はい。涼しいです」(美月)
「良かった!」(圭人)
「はい!とりあえず、ジュース!」
私たちは、まるいテーブルの椅子に腰掛けて、ジュースを飲んだ。
「当日は、美月ちゃんは、ココなは座って、ふつーに本読みながら、お茶でもしてて」(笑)
「あ、はい」(美月)
「ここ、景色がスゴくいいですねー!」
「緑に囲まれてステキ!」
「ずっと見ていられる」(笑)
美月は思わず、頬杖をついて、ボーッと出窓から見える景色を眺めていた。
それを、圭人は懐かしいような目で…
まるで、見守るかのように…
二人…微笑ましく…
了
