民家の奥で待っていたのは、茶碗蒸しグラタン——ある昼下がりの冒険記
お店との出会い
方向音痴な自分を救ってくれる相棒、くぼっちがいる。
今日もまた、迷いかけた私の足を正しい方向へと引き戻してくれた。
ランチの時間になり、スマホで周辺のお店を検索していると、民家を改装したらしい小さなお店を発見した。
「なんだか面白そう」という軽い好奇心と、「まあくぼっちもいるし大丈夫か」という根拠のない安心感を携えて、ふたりで向かった。
料理が運ばれてきた瞬間
扉を開けても、誰も出てこない。
「こんにちは」「こんにちは……」と何度も声をかけながら、ずんずん上がっていくと、そこにはタバコをくゆらせるお爺さんの姿。
もはや引き返す勇気はない。メニューをひらいて、くぼっちとふたり、示し合わせるでもなく同じものを指さした——海老グラタン。
注文してから30分。「ホワイトソースをゼロから作ってるのかな」「本格的なやつが来るかも」などとひそひそ話しながら、ふたりのテンションは妙にじわじわと上がっていった。
そして、ついに運ばれてきたグラタンは、見た目だけは、まごうことなき美しさだった。

ぷりっと赤く色づいた海老が2本、緑のブロッコリーを従えて、とろりとした黄金色のソースに沈んでいる。香ばしい焦げ目と緑のパセリが散って、これは期待していい、と思った。
ひと口食べた瞬間
フォークでそっとすくって、口に運ぶ。
……んん?
とろり、ふわり——ホワイトソースの重さがない。クリームの香りがしない。
なんというか、やさしい。やわらかい。そして、どこかなつかしい。
「これ……茶碗蒸しじゃない?」

ソースの正体はホワイトソースではなく、たまごをベースにしたふんわりとした何か。
グラタンと茶碗蒸しのあいだに生まれた、名もなき料理。
くぼっちと目が合った。ふたりとも何も言わない。ただ、無言でフォークを動かし続けた。
このお店のここが、、、
良くも悪くも、記憶に残る。それだけは確かだ。30分待って出てきたのが茶碗蒸しグラタンだったとき、人は笑うべきか悩むべきかわからなくなる。
でも、くぼっちとふたりで後にしたお店の話は、きっとこれからも何度も語られる気がしている。「あのとき、民家に入ったら……」と。
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