読書日記 『売れるパッケージデザイン 150の鉄則』 プロを目指すデザイナー必携の書
著者:小川 亮/発行者:杉本昭彦/発行:日経BP
読書期間:2025年5月13日〜2025年5月20日
おすすめ度:★★★★★★★(10点中7点)
仕事で、ある商品のパッケージデザインを刷新するという企画が持ち上がり、参考資料として読んでみた。パッケージデザインの役割からはじまり、オリエンテーションの重要性、デザインの評価などの実践的なものから、ブランド構築や、競争優位性などの戦略的なものまで、幅広くカバーしている。本書を読めば、だいたいパッケージデザインの世界が理解できるようになっている。
パッケージデザインの役割として、興味深かった項目がある。それは良いパッケージデザインは中身の評価を変えるということだ。アメリカで行われたある実験で、同じオレンジジュースに対してAとBの2種類のパッケージデザインを用意する。結果、多くの人は、パッケージデザインの評価が高く、おいしそうに見えるほうを実際においしいと感じたのだ。こういった現象は「感覚転移」と呼ばれているようだ。
「ChatGPT」に料理の器によって料理が美味しく感じたり、まずく感じたりすることはあるのか質問してみた。どうやら、心理学や感覚研究の分野でも証明されている現象のようだ。オックスフォード大学のチャールズ・スペンス教授らの研究では、「色や器の素材によって、同じ料理でも甘み・塩味・おいしさの評価が変わる」という結果が出ているという。人はまず「見た目」で味を判断し、器の手触りや重さも味覚に影響するという。
こういった現象を考えると、食品業界においてはパッケージデザインの良し悪しが売上げに直結することが分かる。
その他、なるほどと思ったのが、消費者の購買行動は、初回購入(トライアル)と継続購入(リピート)に分けて考えられるということだ。オンラインショップでの購入であれば、パッケージデザインの影響はそれほど受けないと思われるが、店頭での初回購入の場合は、消費者は商品の良さを推測して購入する以外にない。当然、口コミなども大きな影響を与えるが、検討する要素として、パッケージデザインも重要だということだ。
ここで重要なことは、「短時間で正確にベネフィットを伝える」ということ。商品の特徴を語るパッケージデザインはよく見かけるが、それではまだ不十分で、「この商品はあなたに幸せをもたらす」ということをできるだけ分かりやすく、納得してもらわなければならない。しかも一瞬のうちに。
ベネフィットを含んだ優れたキャッチコピーは「五感に響く納得感」「新しさ」「短い」「分かりやすい」などのポイントがある。
本書を読んで、どこの現場でも同じような問題が起こっているのだなと思ったことが、「ターゲットでもない上席の人が自分のセンスで決めてしまう」ということだ。それでは、チーム全体が納得する客観的な意志決定のプロセスになりにくい。担当者が不本意な形に終わらないよう、事前にABCDEの評価指標を設けておく方法を本書はオススメしている。
つまりA.目立つか(Attention)、B.らしいか(Basic)、C.コンセプトは伝わっているか(Concept)、D.アイデンティティーがあるか(iDentity)、E.経験価値があるか(Experience)、の五つの指標だ。
五つ目の経験価値は聞き慣れない言葉だが、米コロンビア・ビジネススクールのバーンド・H・シュミット教授が提唱したもののようだ。商品・サービスそのものではなく、それらを利用する際の体験や経験にこそ価値があるという考え方。その商品を使うのにとても便利な仕掛けや、思わず自慢したくなるようなデザインが施されていたら、SNSで紹介する人が出てくるかもしれない。SNSの普及によって、経験価値の共有がとてつもないマーケティングパワーを持つようになったということだ。
また、興味深い事例の紹介もあった。
米国の「トロピカーナ」がパッケージデザインをリニューアルしたことで、売上げが20%ダウンしたというものだ。ロングセラー商品のデザインリニューアルの失敗は、この例に限らず、日本国内でも見られるようだ。新しくしたから売れるということではない。現在、私が仕事で進めているリニューアルもこのようなリスクをはらんでいると考えると決して油断はできない。
同僚の紹介もあって、たまたま読んだデザイン本ではあるが、個人的には大変参考になり、特にパッケージデザイン初心者の方には必携の本と言っても過言ではない。
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