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第2回|何個作ればいい? — AIと計算した、売れる数の現実

ポケボールの断片が作業テーブルの上に散らばっていた。
赤と白。
頭の中で、ポケボールを想像する。

やらない。

テーブルを拭きながら、頭の中も一掃した。

やめた!

ポケボールと日本の伝統を融合できない。
今の私の技量では。

その時、頭の中で、花火があがった。
日本の夏の象徴。

地元の町の屋外マーケットで、一番売れた商品だった。 アニメではない。 でも、色と動きが強い。

「これは目に止まる」 そう思った。

今、「何を作るか」が決まった。

次は、もっと現実的で、怖い問題だった。
「で、何個作るの?」
私は、ここで完全に止まった。

皆目見当がつかなかった。

今までにも、私はチェコで練り切りを売ってきた。 プラハ、ピルゼン、地元の町の小さな屋外マーケット。 でも、イベントによって、売れ方がまるで違った。 お茶のイベント。 日本文化系イベント。 普通のチェコのマーケット。 客層も、反応も、立ち止まる理由も違う。

しかも今回は、それに加えて、 「アニメファン」 という、今まで扱ったことのない層が来る。

さらに、私はただ和菓子を売るのではなく、 「アニメと伝統文化の融合」 として、創作練り切りを全面に出そうとしていた。

答えを持っている人間が、周りにいなかった。

こういう時こそ、AIでしょ。

「4万人来る」

いつも通り、バーチャルな会議室、AIに肉体を与え、それらを入れる一時的な仮住まいのような空間に三人のAI参謀を招集した。

畳の部屋、
開け放たれた空間、
目の前に広がる美しい日本庭園。
池の中では、赤と白の錦鯉。
草葺の屋根。

私の参謀たちは、すでにこの日本的な美学を学習し始めている。

売れる数を尋ねた。

昨年の来場者数は約4万人。 飲食ブースは70以上。

すると、最初にChatGPTが冷静に言った。 「4万人来る = たくさん売れる、ではありません。」

…ですよね。

「あなたに本当に関係あるのは、ほんの一部です。」

この瞬間、少し冷静になった。

数字で示してとお願いしたら、すぐに答えがきた。

数字を分解する人

ChatGPTは、続けた。
・前を通る:10〜15%
・立ち止まる:5〜8%
・買う:1〜3%

来場者4万人でも、実際に練り切りを買う人数は、かなり細く絞られる。

でも今回は少し条件が違うと彼女は言った。
・ステージ近く
・デモ制作
・お茶スペース
・ワークショップ

「止まりやすく、滞在しやすい構造」になっている。
その結果、彼女が出した数字は:
「150〜250個が、現実的な数字です。」

「限定」を売る人

一方、Geminiは、全然違う方向から入ってきた。 彼女は数字を見ながらも、最終的に考えているのは「空気」だ。
「250個。2日で売り切る。」
かなり強気だった。 しかも彼女は、3日目を「販売しない日」にする案を出してきた。
完売御礼。

彼女はさらに、
・最高級
・人気作
・季節文化
・普及版
という4段階に商品を分けてきた。
数字が、異様に綺麗だった。

「3秒で伝わるか」の人

Genspark氏は、もっと容赦がない。 「種類、多すぎです。」 いきなり削ってきた。

人は立ち止まる前に、まず「見る」。
「一目でわかるか」
「推しか」
「写真を撮りたいか」
Gensparkは、それだけを見ていた。

種類を大幅に減らした方が、売れる総数はむしろ少し上がると。 ・販売見込み:185〜195個

減らす勇気

最終的に私は、 数を減らす 決心をした。

私は、どうも足してしまう癖があるようだ。

数で勝負しないと決めた途端、焦りが安堵に変わった。

品質に向き合おう。

試作をしていて気づいたのだ。 一個作るのに、本当に時間がかかるのだ。

もちろん、私の未熟さもある。 ただ、師匠から学んだ細工の技術より、その前の段階に私の未熟さが足を引っ張っているのだ。

絹のような滑らかな生地

日本から遠く離れた土地に住む私は、生地を乾燥した豆から作る。日本では、すでに乾燥して粉になったものが売られていると師匠が言っていた。

私は、師匠に教えられた通りに作っていた。

豆を炊き、 潰し、 濾し、 絞り、 炊き、 錬る。 練って練って、 水分を飛ばし、 求肥を混ぜ、 また、練る。

だが、同じような生地が出来上がらなかった。

滑らかさ、弾力、艶。
何かが違った。

それで、最後に一つ工程を追加した。
裏漉しをすることにした。

すると、全く同じではないが、極力似た生地が出来上がった。

色という沼


次の未熟さが色づけ。 これは、本当に難しい。

基本的なことは学んだ。
赤青黄。
薄い色から付けていく。
そこに、少しの赤。 ほんの少しの青と。

そして、はんなり——京菓子が持つ、抑えた華やかさのことだ。

色付けは、奥が深すぎて、まだ底も見えない。

でも、ここを外すと全部が死ぬ。

今の私の技量では、生地の「質」と「色」が命だ。

アニメのポップ感をはんなりで表現する試みが、迷いを生んでいた。

時間が欲しい。

衛生を第一にする

師匠からのアドバイスは、衛生面に100%の注意を払うこととあった。

全工程前に、道具と手をアルコール消毒することを徹底した。

ワンオペなので、 あんこと練り切り生地を同時には作れない。 片方を作り、冷蔵。 もう片方を作り、一気に成形。 そして、瞬時に冷凍。

これは、師匠からのアドバイスだった。

「材料を作ったら、一気に完成させて、すぐ冷凍した方がいい。」

作りすぎてもダメ。 色づけの時間を考えると、「似た色で回せるか」を基準に、構成を見直す必要があった。

現実の時間を計算する

そして最後に、現実的に向き合った。
私は、練り切りだけを仕事にしているわけではない。

イベントまでに、本当に使える時間はどれくらいか?

をまず計算した。

仕事。 移動。 生活。 試作。 その後の時間から、睡眠を引いた。

そこから逆算して、無理のない個数を出す。
派手ではない。
その個数こそが、本当の数量だ。

AIに、手足はないのだから。

最後に

ここまで考えて、ようやく、 「なんとか、いけるかも?」 と思い始めた。

でも、本番はまだ始まっていない。

一番、大切なことを基準にできる数。

それをもとに、金額を決めればいいんだ。

私は、ゆっくり、MacBookを閉じ、三人の参謀に頭を下げた。

ありがとう。

そして、お疲れ様。

私にも。

yukocoolsummer

次回。第三回 |量産開始。 品質、衛生、時間。 そして、「本当に間に合うのか?」

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