「私なんて」と思っていた私が、編集者100人フォローから商業出版を叶えるまで
本を出したら、人生が一気に動き出すと思っていた
2025年2月16日に初のKindleを出版。その2週間後の3月1日には、2冊目のKindleを出版した。
4月には、所属するオンラインスクールの、年に一度の祭典で「変化を起こした女性」として表彰された。オンラインを含めて約1600人の前でスピーチをしたあの熱狂は、今でも忘れられない。
しかし。
「これからどうしようかなぁ」
2025年5月。
私は、途方に暮れていた。
怒涛で、夢のようだった時間は終わりを告げた。
そして私は、すっかり目標を見失っていた。
3冊目のKindleのテーマは決まっている。監修をお願いした人への取材も終わっている。
あとは書くだけ。
なのに、書けない。
理由はわかっていた。
期限がないのだ。
1冊目と2冊目は、スクールの課題でもあったので「出版せねば」が強かった。特に1冊目は、脚本家の先生の先生から添削を受けられる期間が決まっていたので、死に物狂いで書いた。
けれど、3冊目以降は違う。
出版するも、しないのも、完全に私次第だった。
添削してくれる人もいない。締切もない。誰かに提出する約束もない。
すると、執筆はぴたりと止まった。
当時の私は、2歳の娘を自宅保育していた。
朝から晩まで、パワフルになった娘が怪我をしないように、かつ退屈しないように意識する生活。
ごはんを作って、児童館や公園で1日中遊んで、またご飯、お風呂、寝かしつけ。やっと一息ついたころには、書く意欲がなくなっていた。
書きたい。
でも、書けない。
理想と現実の距離が、日に日に遠くなっていった。
商業出版、してみたいなぁ
そんなとき、所属するコミュニティの尊敬する大先輩が、コミックエッセイを商業出版したことを耳にした。コンテストで受賞し、商業化したという。
Xのスペースで、その方がKindle出版とは違った苦労や喜びを話しているのを聞いた。
原稿を何度も直したこと。
編集者さんとのやりとり。
本屋さんに自分の本が並んでいるのを見たときの感動。
その話を聞きながら、ふっと思った。
「商業出版、してみたいなぁ」
もともと、自分の本を書いて出版することが夢だったわけではない。
ただ、修士論文を学術誌に載せることができず、自分の名前がどこにも残らなかったから、何か形に残したいなぁと思っていただけだ。
そして、その想いはKindle出版で、すでに叶った。
でも。
Kindle出版をしたからこそ、思ったことがある。
「もっと広い層に届けたい」
私の言葉を、私のことをまだ知らない人にも届けたい。
私と同じく悩んでいる人に、「こういう解決法もあるよ」と差し出したい。
そんな欲が、静かに芽を出していた。
編集者さんを100人フォローした理由
とはいえ、そんなに簡単に商業出版できるとは思っていなかった。
私は凡人だ。
noteにいる、才能あふれる書き手たちと競うのは難しいだろう。先輩のようにコンテストで受賞するには、何年かかるかわからない。
スカウトを待つ?
それこそ、何年かかるかわからない。声がかかるほど目立つ存在ではないことも、自分でよくわかっていた。
うーむ。
そんなとき、師匠から「目的逆算思考」の話を聞いた。曰く、目的を達成すればいいのだから、それに対する最短ルートを考えればいい。
私に当てはめれば、目的は「商業出版する」こと。
じゃあ、それを達成するためには?
「書籍の編集者さんと繋がればいいんじゃないか」
そう思い、とりあえずXで100人の書籍編集者さんをフォローした。
今思うと、ずいぶん短絡的だ。でも、1日の9割が育児で占められている私にとって、時間もお金もかからないこの方法は、簡単にできる一歩としてちょうどよかった。
娘の昼寝の時間にXをチェックする。
どこの出版社の、どういう編集者さんなのか。無名の私でも商業出版が叶うチャンスはないか。
あればラッキー。
そんな気持ちで見続けること、1ヶ月。
ついに、見つけた。
インプレスNextPublishing編集長の、岡本さん。
書店に並ばない「デジタルファースト型商業出版」の形をとっていることを発信していた。
📘KDP著者の方を探しております📘
— 岡本雄太郎|書き手の可能性をひらく編集者 (@oka_motti) June 19, 2025
KDPで本を出された著者の方で、
「もっと多くの人に届けたい」
「商業出版にも挑戦してみたい」
と思っている方、いらっしゃいますか?
私は書店には並ばない“デジタルファースト型の商業出版”という形で、KDP著者の次のステップをサポートしています。…
残念ながら、この投稿の企画には乗り遅れた。しかし、この人ならチャンスがあるかもしれない。そう思って、投稿を注視するようになった。
ついにきたチャンス
そして、7月。
岡本さんと直接お話できるチャンスを見つけた。
「専属編集者サービス」
書くことに自信がない私にとって、書いたものを見てもらえる状況はありがたかった。
商業出版が叶わなくても、Kindleの原稿を見てもらえれば質を担保して出版できるし。
ポストをみて、すぐ申し込んだ。
ドキドキしながら迎えた初回セッション。
もごもごと、私は言った。
「いつか商業出版をしたいです……」
すると岡本さんは、少しも大げさではない声で言った。
「この『コンプレックス革命』、よくできています。もう少し細かく描写ができるのであれば、商業出版できると思いますよ」
一瞬、時間が止まった。
コンプレックス革命は、1冊目の自著だ。初めてストーリーで書き、現役脚本家の先生からお墨付きをもらった、自信作。
その本が商業出版できる?
「書けます。すぐに企画書だします。やらせてください!」
気づいたら、そう口にしていた。
出版の企画書なんて、書いたことがない。でも、ネットで探すといろいろな型が見つかった。見よう見まねで、必要そうな項目を拾い、組み合わせて、どうにか形にした。
ドキドキしながら提出すると、岡本さんから返事がきた。
「これで情報は大丈夫です。じゃあ企画会議にかけますね」
企画書は、一発OKだった。
でも、まだ決まったわけではない。
企画会議を通らなければ、本にはならない。結果が出るまで、Slackの通知が気になってしょうがなかった。
娘と児童館で遊んでいるとき、スマホがピコンッと鳴った。
「企画通りました!」
思わず出そうになった悲鳴を、あわてて飲み込む。変な顔をしていたのだろう。娘が、不思議そうに私を見上げていた。
……やった。大きな夢だと思っていた商業出版への道が、開いた。
絶対、書き上げる。
2025年8月。
私の大きな挑戦が、幕を開けた。
書かなきゃ。でも、書けない。
年内に出版する。
そう決めて、走り出した。
『コンプレックス革命』は、約2万字。
今回の商業出版では、最低でも6万字が必要だった。
単純に考えて、3倍。
しかも、ただ同じ内容を引き伸ばすだけでは意味がない。商業出版として出すなら、新しい本として生まれ変わらせる必要があった。
そこで、私はこの本のゴールを変えた。
『コンプレックス革命』は、「比べることを強みに変える方法」を読者に伝えることがゴールだった。
でも、今回の本では、もっと深いところに潜りたいと思った。
テーマは「自己肯定感」。
「自己肯定感を高めよう!」
そんな言葉は、よく聞く。けれど、本当に高めないといけないのだろうか。低いままでは、だめなのだろうか。
そこを書きたいと思った。
さらに、主人公の設定も変えた。
事務職だった主人公を、看護師にした。
私の前職は看護師だ。仕事の慌ただしさや、看護師が抱える悩みがわかる。だからこそ、もっとリアルに書けると思った。
第二章、2万字まではいいペースだったと思う。
でも、そこから書けなかった。
理由は、2つある。
1つは、私が長文を書くことが初めてだったこと。2万字まではKindleで経験済みだ。しかし、それ以上は初めて。ただ字数が増えるだけでしょと思っていたが、そうではなかった。
ヒーローズジャーニーの型に合わせにくい。間延びする。
シーンとシーンが繋がらない。
頭のなかに鮮明に浮かぶ場面は書ける。けれど、それ以外の場面がどうしても書けない。
画面の前で、何度も頭を抱えた。
2つ目は秋の花粉症。重症化し、蓄膿症と後鼻漏を発症。寝ても覚めても、鼻水にうなされていた。
かつ、プライベートも、娘が翌年2月に幼稚園に入園することになり、あわただしくなっていた。
身体もしんどい。気持ちも落ち着かない。集中できない日が続いた。
「すみません。書けませんでした」
年内に出版できないと落ち込む私に、岡本さんは穏やかに言った。
「大丈夫です。僕は待ってますよ」
その言葉に甘え、年内出版は持ち越しになった。
でも、春までには。そう自分に言い聞かせて、また少しずつ書き始めた。
絶対にこの日に渡したい!
年が明けて2月。
私は焦っていた。
1月に、同じ専属編集者コミュニティのメンバーが2人も出版。
2月には娘が幼稚園に通い始め、ようやく書く時間ができた。
あとは、最終章と「はじめに」と「おわりに」を書けば、初稿を出せるところまできていた。
なのに。
まさかのコロナに罹患した。
夫が仕事を休んでくれて、私は1人、隔離部屋で4日間過ごした。その時間で書けるじゃん。最初は、そう思った。
でも、コロナは手強かった。集中できないどころか、考えがまったくまとまらない。あきらめてSNSを開くと、なぜか怪しげな陰謀論ばかり目に入る。「こんな危ない世の中で、娘を守れるのかな」
そんな思いがぐるぐるして、シクシク泣いた。しまいには、夫にスマホを取り上げられるほどだった。
そんなコロナ罹患から1週間。
岡本さんとの月1セッションの日。
「発売日どうします?」
いつも通りのトーンで話す岡本さん。
発売日……と考えて、思い至ったのは、キャリアオンラインスクールの年に一回の祭典の日。かつて、私が登壇したあの祭典だ。
その日には、スクールを運営している社長が来る。実は、書籍に登場するオンラインスクールは、このスクールがモデル。そして、私自身が体験したことをベースに物語を紡いだ。
だから。
「4月11日に、オンラインスクールの社長に献本したいです」
はっきりとした希望だった。
「わかりました。なら、4月10日を発売日にしましょう」
ゆうこさん、12日にイベントもやるしちょうどいいですね、と続ける岡本さん。
えっ……?4月10日ってことは初稿は、今週中か?
頭のなかで残りを考える。最終章は半分書いてあるから、「はじめに」と「終わりに」をいれて、だいたい2万字。
うん、いけ……る。いや、いかなきゃ。
「今週中に初稿だします。本文だけでもだします」
ぼんやりしていたゴールが、はっきりした瞬間だった。
夫に頼み込み、土日を執筆時間にあてた。
ホテルのデイユースに缶詰めになり、書き続けた。
机の上には、開きっぱなしのパソコン。
何度もお湯を継ぎ足して、すっかりうすくなった紅茶。
ストーリーの流れを確認するためのスケッチブック。
とにかく最後までこのストーリーを書ききる。
その一心だった。
そして、2月22日。
9万字の初稿を書き上げた。
だが、ここがゴールではない。岡本さんの編集が入り、本文を修正・加筆。度重なる校正チェック。
何度も読んでいる文章なのに、読むたびに修正点が見つかる。
一番頭を悩ませたのは、タイトルだった。
「革命」は入れたい。でも、なかなかしっくりこない。
そんなときにも頼りになるのが、岡本さんだった。何度もやり取りを重ねるなかで、ようやくピッタリのタイトルが決まった。
『ネガティブ革命 「私なんて」の呪縛から抜け出す魔法のトレーニング』
このタイトルを見たとき、「あぁ」と妙に腹落ちした。
そうだ。
これは、ネガティブな自分を無理やりポジティブに変える本じゃない。
人と比べて、落ちこんで「私なんて」と思っている人に、それこそが「才能」だと伝えたいと思って書いた本だ。
そして……4月7日。
本の予約が開始された。
【予約開始】
— 中井ゆうこ |「ママだから無理」をなくすコンプレックス革命家 (@Yukoshelikes12) April 7, 2026
本日より、インプレス NextPublishingさまより
初の商業出版本
『ネガティブ革命
私なんての呪縛から解き放つ魔法のトレーニング』
の予約がスタートしました。
前作『コンプレックス革命』を大幅にリメイクし、内容は10倍くらい濃くなっています。… pic.twitter.com/zRUG84RRgL
9万字が届いた日
出版は、いつも緊張する。
1冊目も2冊目も、出版前後は体調が悪くなったほどだ。ちなみに2冊目のときは、初めてカキにあたった。
でも、この日は娘の幼稚園の入園式だった。
義両親も来てくれて、朝からてんてこ舞い。
慣れない制服。
久しぶりに着るセレモニー服。
写真を撮ろうとする大人たちと、じっとしていられない娘。
体調が悪くなっている場合ではなかった。だから、逆によかったのかもしれない。
それでも、落ち着いたらやっぱり気になる。
予約してくれている人は、いるのだろうか。コンプレックス革命のリメイクなら内容同じでしょとか思われないかな。
不安と緊張でドキドキしながら、Xを開いた。
すると……
「おめでとう」
「予約したよ」
そんなリプが、いくつも届いていた。
翌日以降、Amazon Kindle最新リリースランキングでは4部門1位。楽天では、最高2位までランキングが上がった。
スマホの画面を見ながら、目頭が熱くなった。
4月10日には、ペーパーバック版、つまり紙の本が家に届いた。
箱を開けた瞬間、思わず息をのんだ。『コンプレックス革命』の4倍はありそうな厚み。手に取ると、ずしりと重い。
「これ、何冊も持っていけるだろうか……」
そんな現実的な心配が浮かぶほどだった。でも、その重さがうれしかった。あぁ、9万字って、こんな重さになるんだ。

そして、4月11日。年に一度の祭典、SHEアワードの日。
ついに、「オンラインスクールの社長に献本をしたい」が叶った。

実際にお渡ししたときは、緊張と、感極まったのとで、何を話したかほとんど覚えていない。
ただ、ひとつだけ覚えている。
「出版が間に合ってよかった」
心の底から、そう思った。
実は私には、出版をSHEアワードに間に合わせたい理由がもう1つあった。それは、「成長した姿で、アワード会場にいたかった」ということだ。
賞をいただいてから、ずっと思っていた。
「代表に選ばれたんだから、立ち止まってはだめ」
「前に進まなきゃ」
「成果を出さなきゃ」
そうやって、自分で自分の背中を押し続けてきた。
だからこそ、商業出版を成し遂げて会場に来られたことは、私にとって大きな意味がある。
去年の自分に、胸をはれる自分でいた。そのことが、誇らしかった。
アワードでは、たくさんの人に「出版おめでとう」と声をかけてもらった。なかには、試し読みを読んで、「私のことだと思って買いました」と言ってくださった方もいた。
あぁ、届いている。
そう思えた。心がずっとポカポカしていて、2時間があっという間に感じるほどだった。
私一人では、ここまでたどりつけなかった。
編集の岡本さんをはじめ、インプレスNextPublishingのみなさま。
すばらしい挿絵を描いてくださったたなもさん。かわいい特典を作ってくださったtomoさん。
みなさんのおかげで出版できた。
そして、これまで私の文章を読んでくださったみなさんにも、心から感謝している。
「がんばってね」と応援してくれた人。
「ここがよかったよ」と感想をくれた人。
「読んでみますね」と言ってくださった人。
その存在があったから、私は何度止まっても、また書こうと思えた。
『ネガティブ革命 「私なんて」の呪縛から抜け出す魔法のトレーニング』は、そんなたくさんの声に支えられて生まれた本です。
人と比べて落ちこんでしまう人。
「私なんて」と、自分を小さく見積もってしまう人。
自己肯定感を高めなきゃ、と焦るほど苦しくなってしまう人。
そんな方に、そっと届いたらうれしいです。
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