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インドで1年暮らした6歳息子。日本での一時帰国中に感じた成長が、喜ばしいけど寂しくもある話

"I don’t want anything."

おもちゃが大好きでお喋りな6歳の息子は、アンパンマンミュージアムのグッズショップで「何もいらない」と心を決めて言ってきた。

アンパンマンのグッズ、何もいらない?!いつもの調子とはちょっと違って、お兄ちゃんっぽい発言に地味に驚いた。そして少し寂しい(笑)。

今までの息子なら、「このおもちゃ、正直いらないかも」となんとなぁく思っても、単純に何かを買いたいという一心でおねだりしてきただろう。これには毎回対応するのが面倒だったという本音もあるが、おねだりしてこなくなると楽だけどなんか… ああ、息子の赤ちゃん/幼児さん時代は去ったのかなという喪失感が押し寄せて来たのだ。

それでも、この時息子が「何もいらない」と言ってきたのには感心もしている。「このアンパンマンのおもちゃ、本当に僕が欲しいものだっけ?」と、彼は自問自答して、「いらない」と素直に結論付けできたと思うからだ。

この思考の進歩が、喜ばしくも寂しくも感じた、最近の息子の成長である。

***

我が家は一年前からインドの首都、デリーに住んでいる。私と夫、息子、2歳の娘の4人家族だ。そして最近まで、早めの夏休みで日本に一時帰国していた。

あーー、日本は最高だ。まず、デリーに比べると空気が断然きれいである。歩道も車道もしっかり整備されていて、子連れでも余裕で外を歩き回れる。至るところに美味しいものがあるし(笑)、お腹を壊さないか心配せずに飲み食いできる。我が家は久しぶりの日本を満喫していた。

外で深呼吸ができる幸せ


インドに引越した当時、息子は5歳になったばかりだった。子育て方針として、日本にいた頃から我が家はテレビを置いてなかったが、それでも息子はアンパンマンのことは知っていた。グッズやおもちゃを見かけると絵柄が楽しいのもあって好きそうだった。

そして今年、息子は6歳の年長さんになって日本に一時帰国!私の実家である新潟に帰ったら、母はアンパンマンのアニメを録り溜めしてくれていた。ということで、せっかくだしテレビ解禁!子供達はアンパンマンに夢中になり、家では「アーンパーンチ!」が炸裂した。

子供達がアンパンマンにハマったのは予想外だったが私はなんだか嬉しかった。そもそも、何であっても子供の好きなものが増えるのは親として嬉しい。更に、アンパンマンは実家の母世代も知っているので皆で盛り上がれる。例えば子供達が「アーンパーンチ!」と大声でキメているのに、パンチではなくキックのポーズをしていた姿を見ては、私と母はクスクスと笑い合った。アンパンマンは、そんな暖かさを我が家の日常にプラスしてくれたのだ。

新潟での滞在後は、母も一緒に横浜に旅行しようと計画していた。横浜は私が中高の時に住んでいて母にとっても思い出深いし、小さい子連れでも観光しやすい。そして定番の子連れスポットとしてアンパンマンミュージアムがあることも知っていた。旅行中の予定はあまり立てていなかったが、子供達にアンパンマンブームが到来したのを見て、ミュージアムに行ってみることにした。

いざ、アンパンマンミュージアムへ!


ミュージアムでは、ジャムおじさんのパン工房や、ロープを使ったちょっとしたクライミングなど、赤ちゃんや幼児さんでも安全に楽しめるような工夫が施された遊び場を楽しんだ。

息子も遊んではいたが、赤ちゃん向けのものが多いと感じたのか、少しガッカリした表情も見せていた。例えばクライミングをとっても、レベル的には彼にとって楽勝で、チャレンジして思い切り楽しめる!という感覚ではない。ただ、夏季限定のお水遊びは物凄く楽しんでいて、他の小さい子たちよりもずぶ濡れになりながら、派手に遊んでいた。

そういえば息子が3歳の時、神戸のアンパンマンミュージアムに行ったことがある。その時、息子は全力で遊んでいた。でも今の息子にとっては、アンパンマンのアニメはまだ面白いかもしれないが、ミュージアムは少し赤ちゃん過ぎたかもなと、ハッとしたのだった。息子は、どんどんお兄ちゃんになっている。

でもなんだかんだ楽しんだし満足!ワクワクの余韻が残ったまま、帰る前にグッズショップに寄った。かわいいアンパンマンのおもちゃが並ぶ一角に来ると、「インドに持って帰れる小さいおもちゃだったら、一個ずつ買ってあげるよ」と母。 イエーーイ!と、子供達は大喜びでおもちゃを物色し始めた。

少しして息子は "I want this Anpanman train!"と、アンパンマンのキャラクターがたくさん描かれた電車のおもちゃが欲しいと言ってきた。

確かにスーツケースに入れて持って帰れそうな小さいものだ。良い記念にもなるし、欲しいなら買ってほしい。

でも私の心の本音が込み上げてきた。この子、本当にアンパンマンの電車が欲しいのか?

というのも、ついさっきまでミュージアムの遊び場が思いの外赤ちゃんっぽくて少し残念そうな表情もしていたのが私には印象的だったのだ。そしてこの電車のおもちゃも、6歳にはちょっとおこちゃまに感じる。電池で走る訳でも、音が鳴る訳でもないく、おててで動かして遊ぶタイプ。確かに息子は乗り物のおもちゃが大好きだが、そもそもキャラものよりもプラレールやトミカといった、リアル感があるものが好みでもある。

更にはインドのお友達の影響で、ここ最近は「真っ黄色のスポーツカー!」とか、キャラものであっても「スパイダーマンの腕時計!」とか、アンパンマンのコアなファン層(赤ちゃんから年中さん?)よりも、小学校低学年ぐらいの男の子達が好きそうな、"お兄さん"なカッコいいものを欲しがっていた

でも、彼の気持ちも想像できる。何故なら息子は、過酷な生活環境であるインドで1年間頑張ってきたのだ。念願の一時帰国をして、馴染みのあるアンパンマンを街中で見かけてアニメもひたすら見れば、改めてハマるのも理解できる。今はアンパンマンが好き。それで良いではないか。

それでも… 1年インドで過ごして帰ってきた息子は、当たり前だけど1年分、お兄さんになっている。今はアンパンマンが好きなのも分かるけど…。私のエゴ、考えの押し付けかもしれないが、「今、自分が本当に好きなもの・欲しいものは何か?」は、本人も少しずつ意識できることなのではと思った。あなたはお兄さんになってきてるし、無理に買わなくていいんだよ、と。

なので、否定的にならないように気をつけながら聞いてみた。

「アンパンマンの電車欲しいんだ、かわいいね〜!たださ、なーんでもおもちゃ買っていいよって言われたら、プラレールとかカッコいい車じゃなくて、このアンパンマンの電車を選ぶかな?⚪︎⚪︎くんが本当に欲しいものかな?」

息子はポカンとしつつも、言われたことを頭の中で理解しようとしている様子。その後私は娘に話しかけられてその場を離れたが、数分経つと息子がそっと寄ってきた。"I don’t want anything"(何もいらない)と、きっぱり言ってきたのだった。

「え、本当にいらないの?!」と、私は問いかけておきながら内心拍子抜けした。否定的過ぎたか?考え押し付けちゃった?(泣) ひえー罪悪感。やっぱり何も言わない方が良かったかな…。(そしてプラレールか車を買ってあげるかも的な言い方になってしまい、口が滑ったw)

ただ、これは都合の良い解釈かもしれないが、「代わりにプラレールを買えるかも」という打算が息子の頭にあったとしても、「確かにこのアンパンマンの電車いらないかも、僕」と素直に思ったんだとも感じている。きっと(笑)。

何故かと言うと、息子は手に取ったアンパンマンの電車を改めてじーっと見ながら、「本当に欲しいのか?(プラレールや車よりも?)」と、小さな頭の中で熱心に自問自答していそうだったからだ。

それは即ち、「自分が本当に欲しいものはコレではなく、アレだ」と言う自己理解や、一度立ち止まって自分で考えた上で適切に方向転換するといった能動性と柔軟性。こんな高度な思考ができるようになったという、成長だと思った。

それって結構凄い。息子が1-2歳の頃は、おもちゃをおねだりされて「本当に欲しいの?」という会話をしても「うん、欲しい」と頑なで、結局買ってもらえなくて泣く。そして私は彼の気を紛らわそうと、「ほら、公園すぐそこだよ!」とか「あれって山手線?!」と必死になる展開が多かったように思う。

6歳になった息子は、私の押し付けが若干ありながらも、「本当に欲しいの?」という問いかけに、それなりに向き合えていた…と思う。たぶん(笑)。

大人は、日々の生活が忙しくなってくると「自分が本当に好きなことは何か?何が欲しいのか?」を考えたり、感じる余裕が無くなることも多い気がする。私自身、子供中心の生活になってから、今の自分が好きな食べ物、服、音楽と分からないことが増えて、自分が誰なのかというアイデンティティーを失った感覚もあった。最近は少しずつ自分の「好き」を思い出し、「前はこれが好きだったけど今はこれかも」と再定義もしている。

だからこそ、子供のうちから自分が好きなこと、本当に欲しいものは何かを考えたり、心や体で感じてみる機会は多くあっても良いと思う。息子への問いかけ方が正しかったのかは良く分からない。けれども息子が息子らしく、ハッピーに居るためには、思い切って聞いてみて良かったかも…

ミュージアムで買ったパンを、
今すぐにでも開けたい息子の手

***

後日のとある夕方。一時帰国中に滞在していた民泊で、私は洗濯物を畳みながら、都営バスのおもちゃで遊ぶ息子を眺めていた。そして、ふと思った。あの時、彼は何故アンパンマンの電車を欲しくないと言ったのか?グッズショップにいた時の私は驚きと罪悪感で、冷静になって理由を聞けていなかったのだ。

思わず、"⚪︎⚪︎くん、can I ask you a question?"と声をかける。息子は"Yes?"と興味津々そうな大きなおめめで私を見ながら、カエルジャンプでピョンピョンと私の側に来てくれた。 「そういえば、なんでアンパンマンの電車を買うのやめたの?」とストレートに聞いてみたら、"Oh. It's too babyish for me" (あぁ。あれは僕には赤ちゃんっぽいから)と、息子はサッパリとした口調で即答した(笑)。

彼が本当にそう思ったのかは分からない。あくまでも6歳児が言うことだし、実際は「プラレールが欲しいから」が理由の9割かもしれない(笑)。

それでも「ママに言われたから」とかじゃなくて良かった…と私は少し安堵したのと同時に、息子がやはり少しずつお兄ちゃんになっているという実感の波がジワジワと来た。ちょっと前まで言葉が喋れない小さい赤ちゃんで、歩くのもヨチヨチ、鼻水もしょっちゅう垂れてくるような幼児さんだったのに。時が経つのは早い。喜ばしいし頼もしいが、より小さかった頃の息子はもう帰ってこないと思うと、少し寂しい。

ただ、最近の彼のお気に入りは、実家の母がグッズショップでしっかり買ってくれていたアンパンマンの靴下だ。しかも妹ちゃんとお揃いである。小さくて幅広な我が子たちの足を温かく包んでくれるアンパンマン。かわいい!

お兄ちゃんになったのか、まだまだちっちゃいのか。そんな揺れ動きも愛おしい、我が家の6歳の息子である。

アンパンマン、幸せをありがとう!


おわり


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。最近は文体をエッセイ風にして投稿しています。まだちょっと恥ずかしい(笑)。もし良ければ、フォローやスキしていただけたら嬉しいです。

Instagramも継続しています。主にストーリー更新です。良ければそちらもチェックしていただけたら喜びます。Thank you 🥹

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