ひとりぼっちのおばけの子
ある深い森の奥には、古びたお城がありました。
そのお城には、昔からひとりぼっちのおばけが住んでいました。
おばけの名前はミスト。
彼は透き通るような白い体をしていて、どこにいても気づかれないほど静かな存在でした。
おばけのミストは、寂しがり屋でした。お城に住む人々がいなくなって何百年も経ち、彼はいつもひとりきり。誰かとおしゃべりしたり、遊んだりすることができる日を心待ちにしていました。
しかし、村の人々はおばけを怖がり、森に近づこうとしませんでした。
ある夜、ミストは月明かりの中、お城の外を散歩していました。
すると、遠くから子どもの泣き声が聞こえてくるのです。
驚いたミストは、そっと声の方へ近づくと、森の入り口に小さな女の子がひとりで座り込んで泣いていました。
「どうしたの?」と、ミストは小さな声で問いかけました。
女の子は驚いて顔を上げましたが、ミストが見えないため、誰が話しかけているのかわかりません。
「私は道に迷っちゃって、家に帰りたいけど、どっちへ行けばいいかわからないの…」と、女の子は泣きながら言いました。
ミストは彼女を助けたいと思いましたが、自分がおばけだと知られたら怖がられてしまうかもしれません。それでも、勇気を出して女の子を助けることを決めました。
「安心して、僕が家まで案内してあげるよ」と、ミストは優しく言いました。
女の子は驚いた様子でしたが、不思議と声に安心を感じ「ありがとう」と小さくつぶやきました。
ミストはゆっくりと彼女の前を歩きながら、家までの道を案内しました。
女の子にはミストの姿は見えませんが、彼の優しい声がいつも側にあり、不安は消えていきました。
家の近くに着くと、女の子はお礼を言いました。
「本当にありがとう。あなたは誰なの?」と問いかけましたが、ミストは笑って言いました。
「僕はただの友だちだよ。おやすみなさい。」
そう言って、ミストは静かに森の中へ戻っていきました。
その後、女の子は村の人々に「見えない友だちに助けてもらった」と話しましたが、誰も信じてくれませんでした。
それでも女の子は「心優しい親切なおばけ」が自分を助けてくれたことを信じていました。
そして、ミストも心の中が温かい気持ちになりました。
もうひとりぼっちじゃないと感じたのです。
彼はこれからも誰かが困っているとき、そっと手を差し伸べることを決めました。姿は見えなくても、きっと誰かの心に届くと信じて。
