見出し画像

もったいない〜日本の暮らしの知恵

もったいないという言葉ほど、日本人らしい言葉はないのかもしれません。

子どもの頃から、何度この言葉を聞いてきたことでしょう。

ご飯を残すともったいない。
まだ使えるのにもったいない。
電気をつけっぱなしにしたらもったいない。

長い間、もったいないとは、モノを大切にすること、節約することだと思っていました。

けれど、この言葉には、もっと深い意味があるように思うのです。
もったいないは、相手に対しても使います。

「私にはもったいないお話です。」
「もったいないお言葉をありがとうございます。」

この時、もったいないは節約とは何の関係もありません。
相手や、その出来事の尊さに頭を垂れる気持ちが込められています。

そこには、自分を卑下する響きはありません。
むしろ、自分の前にあるものの価値を知っているからこそ出てくる言葉なのでしょう。

いつ頃からでしょうか。
謙遜することと、自分を低く見ることが、同じように受け取られるようになりました。

目上の方を敬うことは、自分を小さくすることではありません。
相手が積み重ねてこられた時間や経験に、敬意を払うことです。
その姿勢は、自分の価値を下げることとは違います。

ある時まで、もったいないという言葉を少し勘違いしていました。
買ったばかりの服は、すぐに着るのがもったいない。
新しい化粧品は、今使っているものがなくなるまで開けない。
いただきものは、特別な日まで取っておこう。

そうして大切にしまい込んだものが、何年も使われないまま、役目を終えてしまうことがありました。

それは、本当にもったいないのでしょうか。

モノは使われてこそ、その役目を果たします。
お気に入りの器は食卓に並んでこそ、美しさを発揮します。
洋服は袖を通してこそ喜び、道具は使われてこそ生きてきます。
しまい込まれたまま一生を終えることの方が、よほどもったいないのかもしれません。

考えてみれば、食べ物も同じです。
一粒のお米にも、太陽の光があり、雨があり、土があり、育てた人がいて、運んだ人がいて、炊いてくれた人がいます。

その命をいただいて、私たちは生きています。
だからいただきますと手を合わせ、ごちそうさまと感謝を伝えてきました。

そこには、おかげさまの心があります。
そして、もったいないという心があります。

モノも、人も、時間も、自分の命も。
この世にあるものは、すべて限りがあります。

だから粗末にしない。
だから十分に生かす。
だから役目を終えたら、感謝して送り出す。

昔の人が伝えたかったもったいないは、節約の合言葉ではなかったように思います。

この世にあるものには、それぞれ授かった役目がある。
その役目を尊び、生かし切ること。

そんな生き方を教えてくれる、日本人の暮らしの知恵だったのではないでしょうか。

いいなと思ったら応援しよう!