第六話 壊れゆく電子機器たち【note創作大賞2024】
昔から電子機器をよく壊していた。小さい頃はネジの回し方が分からなくて、ネジごとドライバーで破壊し、物理的にたまごっちを壊したが、なにもしていなくても電子機器が壊れることが多々あった。
それは例えば、職場のLED蛍光灯からジー、という謎の音が私の頭上にある蛍光灯だけ流れたり。私の部屋の電気がパキパキ、と他の部屋は一切鳴らないのに鳴っている。あ、ちょうど今鳴った。
音の原因はわからずで、両親に相談したが苦笑いをするだけだ。正直、部屋で寝るのが怖いので毎日身体が疲れることをして熟睡している。深夜まで起きていると、静かだからか音がよけいに響いて聞こえてくるので怖い。
天井から鳴る音は特に何かを主張するわけでもないが、気味が悪い。最近、コップに水を入れて置いたりしている。
ある時、コップに水を入れたまま寝たことがあった。その日は珍しく天井から音が鳴らなかった。幽霊も喉が渇くのだろうか?
次の日からコップに水を入れて机に置いている。たまに朝、寝ぼけて入れた水を飲み干してしまうのだが、何もないことを祈りたい。
話がそれてしまったのだが、電子機器の話に戻そう。
DVDレコーダーで心霊番組ばかり録画していれば、テレビの端から青い線が入るようになり、放置していればテレビ画面が緑色に表示されるようになった。画面に映る人が全員緑色で気味が悪かったのを覚えている。
数十年前に弟が産まれた時に買った犬のオモチャもそうだ。ぬいぐるみになっていて、お腹を押せばワンワンと鳴くタイプのオモチャなのだが、誰も触っていないのに突然クローゼットの奥底からワンワンと鳴き出した。
私があまりにも取り乱してしまったので、母が処分しに行った。どこに捨てたのかは知らないが。
そんなことを思い返しながらスマホに文字を打っている。ふとコーヒーが飲みたくなり、自分の部屋を出てキッチンに行った。
「最悪……」
そして、今ポットの沸騰カルキ抜きのランプとロック解除のランプが交互に光っている。
「お湯でてこないじゃん……」
ボタンを押してもチャイルドロックがかかっているのか、お湯は出てこない。
「おかあさーん、ポット壊れたー!」
リビングでテレビを見ている母に向かって叫んだ。
「お湯でも切れてるんでしょ。いっつもお湯使ってばっかで補充しないんだから……」
母は呆れたように返事をする。私はコンロに置いてあった使っていない鍋に水を入れた。汲んだ水をポットの中に補充する。それでもランプの点滅は止まらない。試しに電源を抜いたり、差し込んだりしたがランプの点滅は消えなかった。
「お母さん、ダメだ! ポットが壊れた!!」
「また? あんたはいっつも機械を壊すよね」
母がため息をつきながらキッチンに来てくれた。正直、昼間だけど怖い。頼むから壊すのだけはやめてくれ。物的証拠がないと買うのは私になる。少ない給料から天引きされるのは勘弁してくれ……。
母は私がやったようにポットの電源を抜いたり、差し込んだりするが変わらなかった。
「もう、寿命かしら……」
母は頬に手を当て、ため息をつく。
「私が壊したんじゃないからね。髪の毛切っただけでポット壊れるとか勘弁してよ……」
ちょうど、その日。私は腰まで伸ばしていた髪の毛を鎖骨辺りまで切った。帰宅してすぐコーヒーを飲みたくなって今にいたる。
「あれ……?」
念押しするように言えば、ポットの点滅が止まった。
「ロングの方が好みなんじゃない?」
母は茶化すように笑った。私の両親も霊感はなく、見えない。見えないからこそ、冗談めいたことを言う。
「勘弁してよ……」
ポットは正常に動き出し、お湯を沸かし始める。その間、暇なのでリビングでテレビを見ていれば父が帰ってきた。
「髪の毛切ったんか、老けたな」
「うっさい、誰が老けたじゃ」
父もロングが好みらしく、嫌みを言う。害のない男の霊は父同様に厄介な存在だ。きっと、デートの好みも合わないだろう。
