第七話 生き霊とばし【note創作大賞2024】
最近、生き霊を見た。最初は幽霊かと思ったのだが、幽霊には無くした身体を再生したい思いが強いらしく目だけで現れることはないという。
そう、最近見た幽霊は『目』だけだった。
また、夜中になるのだが寝苦しくて目が覚めた。何時かはわからない。時計は針を示すアナログ時計でスマホはベッドのどこかに寝転がっている。何時か確認しようと、手でスマホを探りつつ目を開けた。
ーーやばい、目があった。
暗闇に目だけが浮かんでいた。不思議と白目と黒目の判断がつく。ハッキリと形がわかった上で、ちゃんとピントがあっていた。私は視力が悪いはずなのに。
そして、男性だと思った。
もしかしたら害のない男の霊かなと思ってまた目を閉じて寝たが、先日ふと動画投稿サイトで生き霊を見る人を知った。その人が言うには、生き霊には身体がないという。身体の一部分だけでも傍に行きたいという欲望が生き霊となって姿を現すのだそうだ。
「じゃあ、あの目は誰だったんだろう」
私はもう一度あの夜に見た目を思い出す。なぜ、私はあの時男性と判断したのだろう。目だけで男性か女性かなんて区別はできない。生き霊はどこかであったことがある人。もしくは思われている存在。
別に芸能人でもないし、ただのOL。事務員だ。あの夜に見た目は、私の身近にいる誰かなのかもしれない。だけど、恨まれることをした男性に心当たりがなかった。
「ま、いっか」
あれ以来、男の目は見ることはなかったし思い返すのも心の衛生上よろしくない。あの日あったことを忘れて出勤した。
「おはようございます」
当たり前だが、通勤中に幽霊を見ることもなく出勤した。いつも通りに挨拶をし、席につく。
「おはよう」
目の前に座る上司と目があった。目があった瞬間、心臓の音が悪く跳ねる。見覚えのある目だった。
ーーあの夜に見た『目』だ。
間違いなく見覚えがあった。あの夜に現れたのは私の上司だった。私の上司は四十代の男性だ。だから、目を見て直感的に男性と思った。
「どうした?」
固まった私を見て心配しているのか、上司が声をかけてくる。
「あ、いえ……すみません。ぼーっとしてました」
私は笑って目を伏せた。人間は生き霊をとばしていると実感ができない。だから責めるのはお門違いだ。言ったところで、気味が悪いと言われるだけだし反応に困るだろう。
恨まれてるようなことは、してないはず。
