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第1話 私の家の話── 蔵の秘密とパパの本棚|選ばなかった私、なれなかったワタシ【第一部 私というサバイバル】

※このnote版では掲載基準に合わせた編集を行い、冒頭部分のみを掲載しています。完全版(全文)はpixivで公開しています。両版では一部表現が異なります。




私は本来、いなかったはずの人間だ。

私の実家には、漆喰造りの蔵があった。というか──今もある。
だから、蔵の中というのは、暗くて夏でも涼しく、怖くて──そして甘美な秘密の隠れ家だった。

例えばそれは、二階部分の奥に隠されていた──わけではないのだけれど、結果的にわかりにくい狭苦しいところに押し込められていた、いくつかのパパのスライド本棚があったからだ。

──マンガがある!

ぴょんと飛び跳ねた子供心は、次の瞬間、何か違うと思った。
そして、これはいけないことなんじゃないかと思った。

もちろんそこには、普通に手塚治虫や大友克洋、高橋由美子なんかも並んでいた。
でも、私が不思議に思ったのは、こういう本たちだった。叶精作、池上遼一、そして森山塔……。

その本たちは背表紙のフォントや色まで、何かが違っていた。
ギチギチに押し込められていたその一冊を、私はちょっと苦労して引き出した。
叶精作の『魔物語 愛しのベティ』だった。

──とんでもないものを見てしまった。

そう気づいた私はもちろん、目を離すことはできず、ページをめくる手も止められなかった。指先が、次第に震え始めた。
夏でも暗くて、ひんやりと涼しいはずの蔵の中なのに──私は、不思議な感じを拭えなかった。

魔法、暴力、そして──大人の気配。

これが私の、ヰタ・セクスアリスだったと気づくのは、もっと後になってからの話だ。
だってそのときは、お姉さんが裸になっちゃってる──くらいにしか、思っていなかったんだから。(つづく)



蔵で一晩過ごした夜たちのことを、私はよく覚えていない
そんなときは、大好きだったパパが助け出してくれた

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