『水曜どうでしょう』初海外ロケ「オーストラリア大陸横断3,700キロ」で生まれた“どうでしょうらしさ”|第18夜
前回は、『水曜どうでしょう』がなぜ30年経っても古びないのかについて考えました。
時代が変われば、テレビ番組の流行や演出は変わっていきます。でも『水曜どうでしょう』は、今見ても不思議と古く感じない。それは、この番組が旅の情報ではなく、旅をしている人を撮っていたからではないか、という話でした。
では、その「どうでしょうらしさ」は、いつ生まれたのでしょうか。面白いのは、最初から藤村Dや嬉野Dが「人を撮る番組を作ろう」と明確に決めていたわけではなかったということです。
その答えが見え始めた大きな旅が、番組初の海外ロケ「オーストラリア大陸横断3,700キロ」でした。

(デアゴスティーニ第3号の表紙より)
過去の解説で、このオーストラリア企画について藤村Dが当時を振り返っています。
今でこそ『水曜どうでしょう』といえば、低予算、少人数、出演者とスタッフの掛け合いから生まれる面白さというイメージがあります。でも、このオーストラリア企画は少し違いました。
当時の『水曜どうでしょう』は始まってまだ数か月。そんな中で挑んだ初めての海外ロケでした。
藤村Dは、制作費を前借りする形で予算を確保し、オーストラリアへ向かったと語っています。
普通に考えれば、海外ロケは大きな勝負です。せっかく予算をかけて海外まで行くなら、美しい景色、珍しい場所、日本では撮れない映像をたくさん撮る。そんな番組になるはずでした。
そして、当然たくさんの放送回数分の映像ができると考えていたと思います。
しかし実際に編集してみると、想定とは違う結果になります。2か月分になると思っていた内容が、完成してみると約1か月分しかなかった。
テレビ制作として考えれば、効率の良いロケではなかったのかもしれません。でも、ここが『水曜どうでしょう』という番組の面白いところです。
予定していた量の番組を作るという意味では、計算通りではなかったかもしれません。
しかし、その計算外の部分にこそ、後の『水曜どうでしょう』を決定づける発見がありました。
海外まで行ったのに、視聴者の記憶に残ったのは観光情報だけではありませんでした。
広大なオーストラリアの景色よりも、車内で交わされる何気ない会話。
有名な場所へ到着する瞬間よりも、そこへ向かう途中で起きる出来事。
この旅で見つけたものは、「どこへ行くか」ではなく「誰と行くか」という面白さだったのだと思います。

(引用元:DVD「オーストラリア大陸横断3,700キロ」)
象徴的なのが、成田空港での企画発表です。
大泉洋さんは、いつものように詳しい内容を知らされていません。そこで突然告げられた行き先が「オーストラリア」でした。
普通の海外番組なら、ここから主役になるのは目的地です。どんな場所へ行くのか、何を見るのか、どんな体験をするのか。その国の魅力を伝えることが中心になります。
でも『水曜どうでしょう』では違いました。
視聴者が最初に見てしまうのは、オーストラリアの情報ではなく、それを聞かされた大泉さんの反応でした。
突然知らされた時の驚き。疑い。納得できない表情。
そして、その様子を見て笑うミスターと藤村D。
このやり取りの中に、後の『水曜どうでしょう』につながる形が少しずつ見え始めていました。旅番組なのに、場所よりも人が気になる。ここが大きな違いでした。
そして、オーストラリアという場所は、その特徴をさらに強く引き出すことになります。
理由は単純です。とにかく広かったからです。
オーストラリア大陸横断3,700キロ。
日本では想像できない距離を、ひたすら車で走り続ける旅でした。
そして、オーストラリアという初めての海外ロケは、開始直後から予定通りには進みませんでした。
まず、レンタカーを借りるところから時間がかかる。時間潰しに入ろう施設は夕方からしか入れなかったり、別の場所も入場料が高いから入れなかったり。さらに訪れた動物園では、想像以上の広さに10分で見るのを諦め、引き返したりと。。
普通の海外ロケなら、これは困った状況です。限られた時間の中で、名所を巡り、絶景を撮影し、現地の魅力を伝えなければいけない。
予定していた場所に行けない。思ったような映像が撮れない。それは普通なら「失敗」になるはずでした。
でも、『水曜どうでしょう』では違いました。
予定通りに進まないこと自体が、だんだん面白くなっていきます。
本来なら編集で短く処理されるような出来事を、嬉野Dのカメラはそのまま残していました。
なぜなら、そこで起きていたのは観光地紹介ではなく、人間の反応だったからです。
予定外の出来事が起きた時、人はどう反応するのか。文句を言う。困る。笑う。でも結局、また前へ進む。
その姿こそが、『水曜どうでしょう』の面白さになっていきました。

結局、午後1時20分まで待たされることに
(引用元:DVD「オーストラリア大陸横断3,700キロ」)
オーストラリア大陸横断は、普通に考えれば不思議な海外ロケでした。
せっかく海外まで行ったのに、思ったほど観光できない。予定していた場所にも思うように行けない。
でも視聴者の記憶に残ったのは、行けなかった場所ではありませんでした。
「なぜ予定通りにいかないのか」
「この後どうなるのか」
そんな4人のやり取りでした。この旅で藤村Dたちが見つけたのは、綺麗に成功した旅の面白さではありません。
計画が崩れていく過程を楽しむ面白さ。
後に何度も繰り返される『水曜どうでしょう』らしさは、この初海外ロケの中ですでに生まれ始めていたのだと思います。
(※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)
次回(第19夜)は、「『水曜どうでしょう』なぜオーストラリアの大自然より振り回される4人が面白いのか」について考えていきます。
キャサリン渓谷、ハエの大群、偶然現れた竜巻。
オーストラリアの大自然を前にした4人の姿から、なぜ予定外の出来事ほど記憶に残るのかを考えていきます。
※この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」「👤フォロー」で応援いただけると励みになります。
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👉次の記事
※2026年6月17(水)投稿予定🖊️
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